第15章「人間と獣の時間」15章-⑨|あらすじ
戦場へ向かうカッセルは、白い海軍礼装を纏いホールを後にする。
イネスはその制服に合わせたかのような白いサテンドレスを着用し、建物の玄関まで夫に同行した。
重さのあるドレスは移動に労力を要し、カッセルは階が変わるたびにイネスへ引き返すよう促すが、彼女は応じずに歩みを進めた。
イネスのドレスは、古典的なレースや野の花の刺繍、
夫から贈られたエメラルドのブローチ、
そして海軍の標語が刻まれたサッシュで構成されていた。
その姿は、会場にいた皇族や貴族、若い男たちの視線を釘付けにし、感嘆の声と追従者を生んだ。
馬車に乗る際、カッセルはイネスを抱え上げ、体の負担を案じて言葉をかけ続ける。
やがてカッセルが乗る馬の前まできたところで、二人は周囲の視線を憚らずに接吻を交わし、カッセルは行列を率いて出発した。
夫の姿が見えなくなると、イネスは即座に無表情に戻り、随行員のラウルに指示を出す。
自身が泣き崩れたという虚偽の記事を新聞社に書かせること、
そして、同行させていた画工に先ほどの接吻の場面を特定の構図で描くように命じた。
「疲れたわ。少し泣いてから行かなくては」(引用:原作6巻15章)
涙の一滴すらこぼれる気配のない乾いた顔のまま、
イネスは慣れた足取りでどこかの部屋へと入っていった。
「少し泣いていく」という言葉が水で顔を濡らすことを意味すると、
実際にその光景を目にするまで想像もしていなかったラウルは、門扉のところで額を押さえた。
鏡で水気を含んだ目元を確認したイネスは、
カッセルの軍歴や勲章のリストを繰り返し記事に盛り込むようラウルに命じる。
そして部屋を後にする際、こう告げた。
「私的な断片というものは、色々な意味で良い餌食になるものよ」(引用:原作6巻15章)
📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド
※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
📕 第15章まとめはこちら
→ 出征前夜までの全展開を整理(ネタバレ)