🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・第16-2章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
ヒメナ・バレラの声明は、
火種ではなく——導火線だった。
メンドーサでは、
イネス・エスカランテの裁判そのものに反対する運動が激しさを増していく。
第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない㉔
燃え広がる炎
貴族の女性たちがヒメナに続いて反対声明を発表し、
それはやがて官庁を標的としたデモへと発展していった。
皇立裁判所ではテロ事件が相次ぎ、警視庁の混乱はそれ以上に深刻だった。
カッセル・エスカランテの絶大な人気は、
そのまま皇室への反感へと姿を変え、メンドーサ全土を覆っていた。
オルテガ人にとってデモや暴動は珍しいものではない。
しかし、平民にとって皇室とは永遠に揺るがぬ存在であり、
反抗の対象ではなかった。
少なくとも、この事件が起こるまでは。
臣民を恐れる皇帝
皇帝は長い治世の中で、一度としてこのような大規模な民衆暴動に直面したことがなかった。
——皇帝が、自らの臣民を恐れるなど。
彼は日ごとに宮廷の警備を強化し、疑心暗鬼を抱きながら、
厄介な皇太子をどうすれば世間の目から隠せるのかばかりを考え続けていた。
皇帝自身も理解していた。
この騒動は、単にカッセルの人気によるものではない。
その対極にいるオスカルの醜悪さが、あまりにも鮮明に世間へ露わになってしまった結果なのだと。
「もしオルテガ皇位継承者に必要な資質が、怠け者が地獄へ落ちる条件と同じであるならば、皇帝陛下に二十人の息子がおられたとしても、皇太子殿下以上の適任者はいなかっただろう」(原文引用)
皇帝は新聞を最後まで読むことなく、乱暴に握り潰して放り投げた。
——私生児を、一人でもまともに生かしておけばよかった。
その後悔だけが、日に日に胸を締めつけた。
だが、後悔というものは、すべてを失ってからしか訪れなかった。
イネスの新たな声明
声明から四日。
皇立裁判所で流血を伴う武力鎮圧が起き、
街全体へ火が放たれかけた——が、辛うじて封じ込められた。
皇帝は胸をなで下ろした。
しかし、本当に異常だったのは、人々があまりにも容易く口を閉ざしたことだった。
「あの忌々しい女が……!」
机の上の新聞には、
イネス・エスカランテの新たな声明が掲載されていた。
夫・カッセル・エスカランテ大佐が出征する前に、
すでに彼の子どもを身ごもっていたことを公表。
拉致。強姦の脅迫。暴行。ベルグラーノへの投獄。
皇太子から受けたあらゆる苦難の最中、自分はカッセルの子を宿した妊婦だったのだと。
ただ一つの旗
家族を何より重んじるオルテガでは、
命を宿した女性は特別な存在として深く尊ばれる。
だからこそ、それまで決して越えなかった一線を民衆が踏み越え、
ついに宮廷の目前まで押し寄せたことは、もはや不思議なことではなかった。
半月にわたり続いてきた運動は、
もはやイネスの救出や皇太子への怒りだけを目的とするものではなくなっていた。
人々が掲げる旗は、ただ一つ。
——オスカル・ヴァレンザ皇太子の廃位。
その怒りは、もはや一人の女性を救うためではない。
帝国そのものを変えようとする民衆の意思へと変わっていた。
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▶ 原作6巻総括|神は救わない。それでも人は救われていく
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※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。