🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・第16-2章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
メンドーサの新聞に、また新しい燃料が投下された。
ベルグラーノ行政官・セラーノ子爵の供述書が「流出」したのだ。
第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない㉕
セラーノ子爵の供述
供述書は、あの夜のイネスの姿を克明に語っていた。
治療の適期を逃し、傷口が化膿していたにもかかわらず、鎮痛剤を最後まで拒んだこと。
胎児に害が及ぶかもしれない以上、どんな薬も使うわけにはいかないと。
医師は流産の危険まで伝えた。
しかしイネスは頑として受け入れなかった。
「肉を切り裂かれた時でさえ意識を失わなかったのです。
それなのに、縫い合わせる時にだって耐えられないはずがありません」
そして、麻酔もなしに傷を縫い合わせる間、
屈強な兵士でさえ悲鳴を上げて気を失うほどの処置の間、
イネスは小さなうめき声一つ漏らさなかった。
「母性愛とは、なんと偉大なものなのでしょう」
供述書はそう締めくくられていた。
母性愛、だなんて
アリシアはうつむいたまま唇を歪め、新聞をぐしゃぐしゃに掻きむしった。
母性愛。
母性愛、だなんて。
――滑稽だった。
子どもがいようといまいと、
あれはただ、毒に侵されたイネス・エスカランテという女の異常な執念にすぎない。
それを「偉大な母性愛」などと。
「そんなはずがないわ。そんなこと、あるはずがない」
カイエターナの訪問
「……もう、何もかも手遅れだ。そうではないかえ?」
カイエターナが『メンドーサ週報』をアリシアの前に投げ捨てるように置いた。
「世間がお前をどう罵ろうと、お前が地下牢へ放り込まれず、こうして置かれているのは、いまだ目を覚まさない皇太子の体面を守るためだ。それだけのことだ」
アリシアが顔を上げた。
その瞳には、別人のような無垢で純朴な光が宿っていた。
「私は、本当に何も存じません。カイエターナ様」
カイエターナは鳥肌が立つほどの嫌悪を覚えた。
愛という元凶
「その口で、未だに『愛』などと口にする姿まで見せられなければならないとは……!」
愛。愛。
いつだって、あの忌々しい「愛」というものがすべての元凶だった。
一方、病床のオスカルが熱に浮かされながら口にする言葉は、
ただ一つだった。
「イネスが……イネスが、本当に死んだのか?」
誰が何と答えても耳に入らない。
ただその言葉だけを繰り返し、泣き叫び、気を失う。
イネスを支えていた愛。
オスカルとアリシアを狂わせた愛。
同じ言葉でありながら、
その意味は、あまりにも違っていた。
カイエターナはアリシアを見下ろし、静かに告げた。
「交渉というものは、自分の持っている札に価値があるうちにするものなのだよ」
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▶ 原作6巻総括|神は救わない。それでも人は救われていく
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※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。