バスティアン原作|遅すぎた告白——観覧車と、あなたのオデット【ネタバレ】

真実を知ったオデットからの手紙 バスティアン

ロスバインの分かれ道で、二人は「平穏」と「自由」という精一杯の嘘をついて別れました。
愛していると、どちらも言えなかった。

しかし、物語はまだ終わっていなかった。

真実の欠片

ロスバインの別れから数ヶ月後。
オデットは、ジェンダース伯爵から一つの秘密を明かされます。

バスティアンがロスバインを去る二日前、
街でのデートを終えて一人で自転車に乗って出かけたあの日——彼はジェンダース伯爵のもとを訪れていました。
そしてオデットが生きる道をすべて整えた上で、その功績をジェンダース伯爵に譲り、口止めをしていった。

——家、王冠、離婚。

一つひとつの真実が、ばらばらだったピースとして繋がっていった。

さらに——
バスティアンはおそらく、ロスバインで過ごしている間に戦争の知らせを受け取っていたのだろう。

夕食の約束を破ったあの日、一人で出かけたまさにその日に。

「君に会いたくて来た」

そう言った男が、突然態度を変えた。数日だけ我慢すれば、離婚すると言った。

一分一秒が惜しいかのように五日間を過ごし、去っていった。

死ぬ場所に立つことになるのを分かっていて、最後の思い出を作るために来たのだとしたら。

「……だったら、私はどうすればいいの」(引用:原作193話)

息が詰まって喘いでいたオデットは、席から立ち上がった。
窓の外に、金色に輝く巨大な輪が見えました。

ラッツ公園の観覧車が、オデットを見下ろしていた。

バスティアンが用意してくれたこのタウンハウスからは、いつでも観覧車が見えました。
これを、どうして今まで偶然だと思えたのか、自分自身が理解できなかった。

そのまま皇帝のもとへ駆けつけたオデットは、たった一つだけ問いました。

「あの人がつけてくれた王冠なのですか?」

じっとオデットを見つめた皇帝のため息が、すべての答えでした。
落ちた王冠が絨毯の上を転がりましたが、オデットは振り返らなかった。

バスティアンの血に染まった王冠など、もうどうでもよかった。

観覧車の下で

冷たい冬の夜の中を、オデットは観覧車の光に向かって歩きました。

戦争が勃発して閉鎖されていた遊園地は、一年の最後の日だけ特別に開園していた。
祭りの雰囲気を楽しむ行楽客たちの笑顔が、今が戦時中だということを忘れさせるほど明るかった。

その中をオデットは、幽霊のようにふらふらと歩いていきました。

愛だと知らずに愛し、愛されていた日々の記憶が、
ゆっくりと回転する金色の輪の上に、一つ、また一つと浮かび上がってきた。

バスティアンがすべてを捧げて残していった贈り物を、オデットは少しも喜べませんでした。
このような富と栄光を望んだのではない。
ただ、あの男を求めていた。

私に一番深い傷を負わせた人。だから一番憎んでいた人。
しかし、私に最も大きな愛をくれた人。
私にとって、最もかけがえのない大切な人。

——そして、この世で私が一番好きな人

観覧車の前にたどり着いたオデットは、ぽつんと立ち尽くしたまま、涙を流した。

「行かないで。会いたい。帰ってきて」

ロスバインで、分かれ道で、どうしても言えなかった言葉が、涙とともに流れ出た。

「……愛しています」

届く場所を失った言葉が、虚空へと散っていった。

「大好きです」

何度も繰り返した熱い告白とともに、一年の最後の夜が深まっていきました。

あなたのオデットより

その夜、オデットは手紙を書きました。

観覧車が見える窓の前で、ランプを灯して。

ロスバインで言えなかったすべてを、文字にして伝えよう。
あなたの嘘は発覚したこと。
犠牲と献身のすべてを知ったこと。
あなたの口を塞いだのは他ならぬ私自身だったこと。

そして——

「愛する私のバスティアン、
あまりに遅い告白をすることになった私を許してください。
私はあなたを愛しています。この世の中で誰よりも愛しています」
(引用:原作194話)

新しく始めましょう。
何の打算も目的もなく、お互いへの愛だけで、最初から。
恋人として、友人として、家族として。

そしてオデットは、ロスバインで交わした「自由」という言葉を、まったく違う意味で返しました。

「私は、あなたが私の空になってくれることを願っています。
私は、あなたが私の海になってくれることを願っています。」

(引用:原作194話)

自由とは、一人で飛ぶことではなかった。
愛する人がいる世界で、生きていくことだった。

そして最後に、オデットはずっと言えなかった小さな願いまで打ち明けます。

「観覧車に本当に乗ってみたかったんです。綿菓子も食べてみたかった。
でも、あなたと一緒でなければ嫌でした。」 
(引用:原作194話)

——だから帰ってきてください。

几帳面な筆跡で綴られた手紙の最後には、ぽたぽたと落ちた涙の染みが残っていた。

——「あなたのオデット」

出征の朝が明けた

作戦開始を控えた軍営は、重い静寂に包まれていた。

危険な戦闘に臨む前夜、兵士たちには便箋と封筒が支給された。
事実上の遺書だった。

子供のようにむせび泣く兵士が続出しても、誰も叱責しなかった。

手紙の作成が終わると、皆が髪の毛や爪を切り始めた。
戦艦が沈没すれば遺体すら収容できない海軍では、遺書に体の一部を同封する慣習がありました。

バスティアンは、支給された箱を机の端に放り投げました。

遺書を書いたことは一度もなかった。
今夜も同じだと思っていた。

「もう、すべて成し遂げた」

過ぎ去った人生に何の未練もなかった。
ただ一つだけ心残りがあるとすれば、自分の場所を取り戻したオデットの姿を見られなかったことくらいか。

「オデットを想う夜を過ごすのも悪くない」


夜の海と向かい合いながらタバコを咥えたバスティアンのもとへ、
真夜中近くに補給兵が訪ねてきました。

砲弾輸送船から届いた、皇帝の特命による郵便物だった。
封筒を手に取ったバスティアンは、思わず息をとめた。

夢を見ているのだと思った。
しかし何度見直しても、変わることはなかった。

——『あなたのオデット』

その夢のような名前を、ひたすら見つめて、また見つめて。

ランプをつけて手紙を読み進めたバスティアンは、
最後の言葉に辿り着いた時、かろうじて保ってきた心が崩れ落ちました。

「……君を、どうすればいい」

封筒の中から滑り落ちた小さな紙片を拾い上げた瞬間、バスティアンは息を止めました。

王冠を被るオデット

母・ヘレネ皇女の王冠を被ったオデットが、カメラを見つめ、泣くように笑っていた。

涙を流した後に撮った写真だということが感じられた。
ただ彼のためだけに特別に用意した贈り物だということも。

あれほど遠く険しい道を回り、ようやく心が通じ合ったというのに、
俺は死地へと続く一本道の上に立っている。

夜明けが近づく頃、バスティアンは席を立った。

オデットの手紙と写真を封筒にしまい、顔を洗い、身なりを整えた。
そして、放置しておいた支給品の箱を、静かに開けた。


紙の上を動いていたペン先が止まると同時に、鋭いサイレンの音が鳴り響き始めました。

バスティアンは、美しい夢を心に抱いたまま立ち上がり、
帽子をかぶり、コートを着た。


オデットの元へ帰る道はただ一つ

—— 勝利のみだった。

🌹ロスバインから続けて読む方へ
📖 ロスバイン最後の七日間⑩|分かれ道

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バスティアン結末

🌹 なぜ二人はここまで傷つけ合い、それでも終わらなかったのか
なぜ“泥の中の愛”は美しく見えるのか


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