バスティアン原作|ロスバイン最後の七日間⑥|歓喜に満ちた敗北——バスティアンが選んだもの【ネタバレ】

『バスティアン』ロスバイン編⑥ 歓喜に満ちた敗北、バスティアンの選択 バスティアン

🌹 ここまでの二人(漫画未読範囲の補足)

※漫画では描かれていない原作展開を含みます

  • バスティアンはオデットの裏切りを誤解したまま出征先から帰還
  • 復讐として彼女を支配し、何度かの逃亡と連れ戻しを繰り返す
  • 子どもでオデットを繋ぎ止めようとする
  • オデットは妊娠発覚後、絶望の末に中絶寸前まで追い詰められる
  • 義母テオドラの復讐に巻き込まれ、二人は子どもを失う
  • 心身ともに限界を迎えたオデットは周囲の手で保護される
  • バスティアンはそれに気づきながら、彼女を解放するため見逃した
  • そしてロスバインで再会しました

前回までのあらすじ

「施しはやめてください」——びしょ濡れのまま叫んだオデットは、気づいた時にはバスティアンにしがみついていた。

古い階段がきしむ音が、お互いの息を奪う音と入り乱れて混ざり合った。


テオドラ・クラウヴィッツの声

向き合って抱き合った二つの体がベッドの上に倒れ込むと、
空中に舞い上がった埃が午後の日差しの中に染み込んでいった。

「後悔することになるだろう」

オデットはかろうじて取り戻した理性の警告をはっきりと聞いた。
しかし、どうでもいいと思えた。

どうせ数多くの過ちと後悔で汚れた関係なのだから。
もう一つ過ちを増やしたところで、何も変わらないだろう。

オデットは、諦めが与えてくれた自由の中に両腕を伸ばす。
力いっぱいバスティアンを抱きしめ、口づけを交わした。

それは「あなたを傷つける」という通告だった。
そして「私を傷つけても構わない」という許可でもありました。

臨界点を超えた欲望が急激に高まっていく中、
陽の光に染まった傷だらけの体がオデットの上に乗りました。

戦場で刻まれた無数の傷を抱えていても、その体は相変わらず力強く、美しかった。

「ならば、あなたの目に映る私はどうなのだろうか?」(引用:原作181話)

オデットはふと、それが知りたくなった。
以前の獣のように体を重ねていた頃には、
思い起こさないように必死になっていた疑問だった。


バスティアンの耳元では、テオドラの声が蘇った。

「一匹の犬の温もり、愛する女、その女と築く家庭と子ども」(引用:原作181話)

切望していた。
だが永遠に失うことになったものを読み上げる声が、耳鳴りのように耳元をぐるぐると回った。

——もしかしたら、この世で自分を一番理解していた人間は、
まさにあの女だったのかもしれない

そんな考えがよぎった。
だからこそ、最も完璧に壊すことができたのだろう。

『でもバスティアン、お前は何を手に入れたの?』
(引用:原作181話 テオドラの手紙(原作164話)より)

じっと見つめるオデットの眼差しから、その残酷な質問を読み取った。
そして、答えを聞いた。

——『何もない』

最後の最後にたどり着いた果てで、見つけた答え。

「せめて最後くらいは立派な男でいたかった」

その望みさえも水の泡となった。
そうして残ったのは、こんなにも哀れになった俺と、
こんな俺のせいで哀れになる君だけだった。

私を見て

バスティアンは最後まで、眼差しだけは与えなかった。

目を逸らされるたびに、オデットの欲望はかえって熱を帯びていく。
それはまるで、腐った肉塊に成り下がったような自己嫌悪を抱かせた、あの屈辱と悲しみに満ちた数多の夜を思い出させるようだった。

気づけば、窓の外はすでに夕方へ傾いていた。
カーテンの隙間から差し込む金色の光が、乱れたベッドの上に落ちていました。

求め合うたびに、二人は愛し合うというより、
互いを壊すように激しくぶつかり合っていました。

——「……嫌です」

バスティアンの顔に口づけを落としていたオデットが、泣きそうな声でささやきました。
バスティアンは無意識に視線を落としました。

しっとりと濡れた青緑色の瞳と向き合った瞬間、
ようやく自分の過ちに気づきます。

——「そんなふうに目を逸らさないで」

オデットは首を横に振りました。

目を逸らそうとするバスティアンの頬を、両手で包み込み、
まっすぐに見つめた。

——「私を見て」

込み上げる涙を飲み込みながら、オデットは懇願しました。

バスティアンは、閉じていた目をゆっくりと開き、オデットを見つめた。
その眼差しには、軽蔑も憎悪もない。
憐れみや同情すら見つけられなかった。

ただ、夏の夕暮れのように静かで、どこまでも柔らかかった。

オデットはようやく気づいた。

自分がずっと求めていたのは、憐れみでも憎悪でもなかった。
かつて確かに存在した、あの優しい眼差しだったのだと。

憐れみと憎悪以前に存在した、あの感情の名前は何だったのだろうか?
(引用:原作181話)

視線の先で

「お願い、バスティアン、お願い……」

泣き声まじりの懇願が、ついにバスティアンを止めた。
まるで諦めることを知らない女を見つめながら、バスティアンは結局、諦めたように笑ってしまいます。

抵抗をやめた瞬間、オデットは逃がすまいとするように彼にしがみつきました。
叩くように肩へ触れながら、何度も彼を引き戻そうとします。

そして、ようやく二人は向き合いました。

「私を見て」

バスティアンは、もう目を逸らしませんでした。
薄れていく光の中で、二人はただ静かに見つめ合いました。

「どうすればいいんですか?」

耳まで赤く染めたオデットが、あまりにも不器用な問いを投げかけます。
しばらく彼女を見つめていたバスティアンは、思わず声を出して笑いました。

あまりにも切なく、あまりにも愛おしい。
この瞬間が、永遠に癒えない傷として残ることを分かっていた。

それでもバスティアンは、その痛みごと受け入れることを選んだ。

歓喜に満ちた敗北

毎朝目覚めるたびに、敗北する人生が続いたとしても構わなかった。

バスティアンは、この愛の勝利者になりたくなかった。

テオドラが知らなかった、
もしかしたら彼自身さえ知らなかった、最も真実の心だったから。

バスティアンはオデットに代わって動きながら、
甘美な官能を追い求めました。

優雅なダンスを踊るように揺れるオデットは、
危ういほど美しく、彼の理性を少しずつ奪っていく。

荒い呼吸が重なり合い、何度も互いを求め合ううちに、
オデットはついにバスティアンの上へ崩れ落ちます。

その愛らしい無防備さが、残っていた最後の自制心さえ消し去りました。

美しく歌う魔女から、
バスティアンは一瞬たりとも目を離しませんでした。

航路を失った難破船は、ついに座礁した。
バスティアンは魔女の海の深くへ沈むことを、自ら選びました。

それは、歓喜に満ちた敗北でした。


残された時間は、あと一日。
テオドラが呪った人生の中で、バスティアンはついに本心のまま敗北することを選びました。

📖 ロスバイン最後の七日間 続けて読む

← 前へ
祝福のように、あるいは呪いのように

→ 次へ
一夜限りの恋人——最後の晩餐


【免責事項】

※翻訳方針については当サイトの翻訳・引用ポリシーをご確認ください。
※本記事は作品のテーマを考察するものであり実在の行為を推奨・肯定する意図はありません。
※作品の引用・翻訳は著作権法の範囲内で行い、引用元を明記しています。
※本記事は作品内容の分析・評論を目的としたものであり、原作の翻訳全文を掲載するものではありません。