泣いてみろ、乞うてもいい|原作101話 僕たち、一緒に行こう|幽霊だと、信じたかった あらすじ【ネタバレ】

泣いてみろ、乞うてもいい|原作101話 私たち、一緒に発とう|幽霊だと、信じたかった 原作カテゴリ

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🌹 本記事は『泣いてみろ、乞うてもいい』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。

幽霊だと、信じたかった

枕に頭が触れればすぐ眠りに落ち、朝まで目覚めないビル・レマーが、深い夜明けにぱっと目を覚ましたのは、悪夢のせいだった。

——レイラを失う、思い返すこともできないほど恐ろしい夢。

「忌々しい。夢見がこんなにも悪いのはなぜなんだ。」

虚空に悪態をつき、ビルはベッドに跳ね起きた。
殺すかのように闇を睨みつける影は、濃かった。

再び横になっても、不吉な夢は頭を離れない。

レイラは公爵家の後援を受けて勉強することになるし、彼らは首都でも今まで通り幸せに暮らせるはずだった。

カイルとレイラが同じ大学に通うことには、多少の心配もあった。
それでも二人に未練があるならあるままに、縁が終わったのならそのままに、ビルは受け入れるつもりだった。

——もう、うまくいくことしか残っていない子なのだから。

冷たい水でも浴びて記憶を洗い流したい。

布団を蹴飛ばし、水道へ駆け出す勢いで立ち上がった彼を引き留めたのは、カーテンを閉めていない窓の向こうの姿だった。

白い服を着た、か細い女が、森の道の向こうから歩いてくる。

——悪夢を見たと思ったら、今度は幻覚まで見ているのか。

頭が本当にどうにかなってしまったのではという予感がした頃、ビルはその女を見分けた。

「レイラ……?」

疲れた様子でよろよろと、幽霊のように闇の中を歩いてくるのは、紛れもなくレイラだった。
ただひどく疲れていること。
そして、レイラが浮かべるはずのない、老婆のような表情をしていることだけが違った。

——あの子が、一体なぜ。

飛び出したい衝動を懸命に抑え、うろうろした後、ビルはベッドに身を投げた。
間もなくドアが開き、用心深く床板を踏む足音が聞こえてきた。

確認するのが怖くて、ビルは体を起こせなかった。

幽霊だと、信じたかった。

深い夜をさまよう幽霊を、見たのだと。

千年でも、万年でも

その切実な願いが間違っていなかったのか、日が昇った朝、食卓で向かい合ったレイラは、ビルの知るあのレイラに戻っていた。

出勤の支度を終え、せっせと台所を行き来して食卓を整え、微笑みを湛えて向かいに座る。

早春の朝よりもさらに澄み、輝くばかりの、生気を含んだ姿だった。

「何か、お話しがありますか、おじさん?」

「ん?あ、いや、何でもない。話すことなんて何もない。そんなものはない。」

彼らしくなく言葉に詰まり、手までひらひらと振る。

首をかしげ、レイラは彼の皿にパンと卵を取り分けた。

「絶対、話すことがあるという表情ですよ?もしかして、何かあったのではないでしょうか?」

心配の詰まった眼差しに、ビルは真顔で首を振った。

「くだらないことを言うな!何もない。」

「どこか具合がお悪いとか……。」

「俺をもう老人扱いするのは困るね。石でも噛み砕けるくらい元気だ。どこかで一度、見せてやろうか?」

冗談を言い出すと、レイラはようやく安心した表情を見せた。

「よかったです。」

——笑うこの子の顔は、見ているのが惜しいほど愛らしかった。

こんな時、ビルの無関心な胸の片隅も、じーんと痛むのだった。

深く愛する心にはいくらかの悲しみが宿っていると、この小さな子を引き取り、育てて初めて知った。

「お前こそ、このままではあの鉄の串のようなガキに戻ってしまうぞ。」

ツンと痛む鼻筋を手の甲で乱暴にこすり、バターをたっぷり塗ったパンを差し出す。
穏やかに微笑んだ子は、それをもぐもぐとおいしそうに食べてくれた。

それがどうしたわけか、またもや目頭が熱くなった。

——このビル・レマーも、年を取るものだ。

子どもが成長した分だけ老いた自分を思うと、気が滅入る。
しかし彼は、自分の分を残さず平らげることで、弱気を振り払った。

レイラのことを思えば、千年でも万年でも頑丈に耐え抜かなければならなかった。

あの子が翼を得て高く飛び立つのも見なければならないし、万が一悪い奴に連れて行かれないかと、両目を見開いて監視もしなければならない。

いつか、あの子にそっくりな孫が生まれるのなら、その子はまたどれほど可愛いだろうか。

限りなく感傷的になっていく自分が気に入らず、ビルは再び断固と首を振った。
昨夜の不吉な夢とその延長のような幻影まで、消してくれるようにと願いながら。

食事を終えたビルは、出勤するレイラを見送った。

わずかそれだけのことなのに、何がそんなに嬉しいのか、レイラは何度も振り返って大きく手を振る。

「行ってきます!」

力強い挨拶が、草の匂いのする清々しい風に乗ってきた。自転車を漕いで遠ざかる後ろ姿を、ビルはしばらく見守った。

——ラッツへ行ったら、新しい自転車を一台、買ってやらなければ。

固く決意すると、またもや胸の片隅がチクチクと痛みだした。
荒々しく顔をこすり、道具を荷車に積みながら、ビルは呟いた。

「これはもう、もう少し年を取れば泣き虫になってしまうな。」

あの子の手が触れたものは

「わざわざ捨てることはないんじゃないか?大事にしていたものだろう?」

終始沈黙して見守っていたリエットが、口を開いた。

ちらりと視線を上げたクロディーヌは、心を変える気はないというように、未練なくブレスレットを暖炉の炎へ投げ入れた。

破り捨てた手紙も、すぐその後に続く。

「あの子の手が触れたものは、汚くて不潔だわ。」

——口調があまりに平静で、リエットは一瞬、自分の耳を疑った。

「今日は本当にいい天気ですね」というような無意味な社交辞令を交わすように、自分の婚約者の愛人について話す令嬢とは。

額を押さえていたリエットは、体を起こして暖炉の前へ寄った。

クロディーヌは微動だにせず、レイラ・ルウェリンの痕跡を飲み込んだ炎を見下ろしている。

侍女が小包を持ってきた時でさえ、リエットは大したことではないと思っていた。
クロディーヌは社交界で最も羨望を集める淑女であり、贈り物や手紙は絶えなかったのだから。

——それなのに、レイラ・ルウェリンだなんて。

クロディーヌがあの日レイラの前に投げ捨ててきた壊れたブレスレットは、綺麗に修理された姿で戻ってきた。

謝罪と約束の言葉が込められた手紙も、一通添えられていた。

マティアスとレイラの関係は、クロディーヌの推測通りだった。
予想していたことなので、その事実自体は驚くに値しない。

万事に無関心なリエットを凍りつかせたのは、他でもない、彼の愛する従妹、クロディーヌだった。

——他人事のように、無関心に、レイラに言ったことを話して聞かせた。

カイル・エトマンを利用し、その方法が思わしくないと見るや、自ら出て行ってあの子を踏みにじるまでしたとは。

リエットの知る、あの高潔でプライドの高いクロディーヌ・フォン・ブラントとは、到底結びつかない姿だった。

いっそ、死んでしまえばいいのに

「これはむしろ、マティアスと話をつけるべきことじゃないのか?」

「ヘルハルト公は知りません。これからも永遠に、知るべきではないことでしょう。」

クロディーヌはゆっくりと元の席へ戻った。

「私を、卑怯だとお思いですか?」

見上げる口元に、微笑みが浮かぶ。

「勝ち目のない相手である婚約者の代わりに、手頃な婚約者の愛人に手を出すのは、ええ、正当な行為ではありませんね。でも、だから何だというのでしょう?汚い相手に卑怯なやり方で対抗するだけのことですから、大して不公平なことではないと思います。」

「何だって?」

「レイラさえいなくなれば、すべてが元通りになるでしょう。ヘルハルト公まで巻き込んで、騒ぎを大きくする必要はありません。」

「レイラが去れば、まさかその偉大な公爵閣下が、永遠にあの子を見つけ出せないとでも思っているのか?」

リエットは呆れてため息をついた。

——クロディーヌに届いた手紙には、切実な願いが込められていた。

結婚式の前には何があってもマティアスから去るつもりだから、それまでどうか秘密にしてほしいと。償うことのできない罪を犯して申し訳ないと。
二人の人生から永遠に姿を消すことで、贖罪したいと。

——マティアスへの未練など、微塵も感じられない手紙だった。

むしろ、何とかして彼から逃れたいという切実な思いだけが見てとれた。

——マティアスの欲望と執着で始まった関係なら、ただレイラが去るだけで終わるはずがなかった。

「結婚式を無事に済ませて、後継者さえ産んでしまえば、それ以上はあえて関わりたくありません。」

「公爵夫人となり、次の代のヘルハルト公爵を産むことが、君の人生のすべてなのか?その大仕事さえ成し遂げれば、君の人生が終わりになるとでも言うのか!」

「すべてではありませんが、半分くらいにはなるのではないでしょうか?もちろん、ヘルハルト公があの卑しい子に夢中になっている姿を二度と見なくて済むのなら、最善ですけどね。」

クロディーヌの眼差しが、徐々に細められた。

「いっそ、死んでしまえばいいのに。あの子がこの世から永遠に消えてしまいさえすれば、私の婚約者は二度と、そんなに下品でつまらない男に成り下がることはないでしょう。一生、完璧なヘルハルト公爵でいてくれるはず。私が望む、まさにその男の姿に。」

「クロディーヌ!」

「本心よ、お兄様。毎日毎日、心の中であの子を殺しているわ。過ちを犯した人はマティアス・フォン・ヘルハルトだと分かっているけれど、仕方ないでしょう?あの男は必ず私の夫にならなければならないのだから。死なれては困るわ。」

歪んだ唇の端に、自嘲的な微笑みが浮かぶ。

そんな彼女を見るリエットの眼差しは、冷ややかに沈んだ。

クロディーヌを最もクロディーヌらしく生きさせられる人が、まさにヘルハルト公爵であった。
だから彼らの間を遮ることができなかった。

——しかし、果たして今のクロディーヌは、クロディーヌらしいのだろうか。

リエットは、否と断言できた。

すると、憤りに近い疑問が突然湧き上がった。

——君を君らしくないものにし、君を愛してすらいないあいつに、なぜ私は君を奪われなければならないんだ?

私たち、一緒に発とう

「公爵夫人の地位がいくら大きくても、君自身を駄目にするほどの価値はないよ、クロディーヌ。」

リエットは、ゆっくりと彼女の前へ近寄った。

「マティアスと婚約を破棄しろ。」

「……お兄様?」

「あの程度の名誉と体裁が、君の心を蝕むままにさせてはならない。」

呆然とするクロディーヌの前で、リエットは片膝をついた。

——微塵の冗談も見つけられないその姿が、クロディーヌの言葉を詰まらせた。

リエットは時折こうした言葉を投げてきたが、いつもはとぼけた冗談を装っていた。
だからこそ、笑いに流すことができた。

——それは彼らが安全線を守ってきた、一種の不文律だった。

そして今、彼はその線を崩そうとしている。

「婚約を破棄したら、私たちが結婚できるとでも言うのですか?」

悪意を装って嘲笑うクロディーヌの前でも、リエットは揺るがない。

「できないこともない。」

「正気に戻ってください、リンドマン侯爵。噂がどのように広まるとお考えですか?二人の従兄弟を両手に持って秤にかけたブラント令嬢。親友であった従兄弟を裏切り、彼の婚約者を奪ったリンドマン侯爵。汚名を着せられるのは、私たちになるわ。汚いのは、あの男とレイラなのに!」

「僕は構わない。」

深いため息をつき、リエットはクロディーヌの手を握った。

「私たちの家では絶対に受け入れられないことですよ。リンドマン家も同じだと、よく知っているでしょう。」

「知っている。」

「お互いを選び合った瞬間に、私たちはこの世界から追放されるでしょう。そのすべてを覚悟できるほどに、私を愛していてくれますか?」

充血した目から、大粒の涙が流れ落ちた。

リエットは、微かな微笑みを浮かべて頷いた。

「ああ。」

力を込めて手を握る、馬鹿な男の手は、とても大きくて温かかった。

「愛している、クロディーヌ。だから僕と結婚してくれ。僕たち、一緒に行こう。」

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