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🌹 本記事は『泣いてみろ、乞うてもいい』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
何も起こらなかった朝
目の前のマティアスに、初めてその瞳を見た日の記憶が重なる。
視線を避けても、彼は手放してくれなかった。
大きな両手が顔を包み、怯えたレイラの目が小刻みに震える。
だが、昨夜と同じことは起こらなかった。
マティアスはただ、向かい合って横たわるレイラを見つめるだけだった。
頬に触れる手は柔らかく、力がない。
何かを探すように、深く、深く。
か細い息遣いだけが響く静寂の中で、二人の視線は絡み合った。
そうして見つめ合ううちに、いつの間にか冬の朝が明けていた。
日差しの当たるレイラの顔を撫でながら、マティアスは虚しい気分でため息をつく。
彼を映す大きな瞳は、漠然とした恐れと純粋な好奇心が共存する、生まれたばかりの幼い獣のように澄んでいた。
「お腹が空きました!」
肩に触れた手に、レイラは慌てて叫んだ。
「お腹がとても空きました」
嘘ではなく、本当に空腹だった。
こんな格好でこんな言葉を口にするのは滑稽だが、あの行為を繰り返すよりずっとましに思えた。
真っ赤な顔で、しかしこの上なく真剣に、切実に。
不用意に刺激しただろうか——沈黙が恐ろしくなった頃、聞こえてきたのは、まるで彼のものではないような愉快な笑い声だった。
首を反らし、声を出して笑い続けるマティアス。
「あの男が、こんな風に笑う人でもあったんだ」
その気づきが、レイラをさらに奇妙な気分にさせた。
世界を足元に置いた高貴な貴族ではなく、ただその年代の青年に見えたのだ。
あまりにもおかしなことだった。
カフェの二階、最も適切な場所
その頃カルスバールの豪華なカフェで、カイルはクロディーヌと向き合っていた。
人目につく場所こそ最適だと彼女は言う。
将来の公爵夫人と主治医がお茶を飲むのは変わったことではないが、
密会なら醜聞の種になるから、と。
その大胆不敵さに、カイルは乾いた失笑を漏らした。
——「レイラ・ルウェリンが変わった理由が気になりませんか?」
謎めいた手紙に応じる理由などなかった。
それなのにここにいる自分が情けなくて、カイルは自嘲する。
「私の提案を無視するには、未来のエトマン先生はあの子を愛しすぎているから……残念ながらね」
クロディーヌの読みは正確だった。
レイラを取り戻すために帰郷し、拒まれたこと。
——そしてその理由。
「レイラは今、他の男の女だという意味です。
その男こそ、この私の婚約者、ヘルハルト公爵です」
凍りつくカイルを直視しながら、彼女ははっきりと言った。
マティアスとレイラのことを誰にも口外せず、それでいて確実にレイラの心を打ち砕ける人物。
カイル・エトマンは、その条件に完璧に合致していた。
もちろん、最も確実なのはあの庭師だろう。
しかしそれは、あまりにも残酷なことだから。
「私たちはこの件に関して話すべきことがたくさんある人々のようだと思いませんか?」
「レイラらしい」と思ってしまった
ホテルでの一日は、平穏に過ぎていった。
朝食の席で、なかなか顔を上げないレイラ。
もぐもぐと食事をする唇。
小さな口で少しずつかじり、しっかり噛む様子が、いかにもレイラらしいと思った。
――レイラらしい、だと?
情けない考えに失笑したが、気分は悪くなかった。
口元のパンくずを指差して赤面させ、慎重に卵の殻をコンコンと叩く姿にまた笑う。
この男は今日、よく笑った。
窓枠に座って新聞を読みふけるレイラを見つけたときも、そうだった。
覗き込めば、意外にも連載中の推理小説。
気の抜けたような顔で流血の犯罪小説を熱心に読む趣味か、とまた笑う。
狂った人を見るようなレイラの視線に、マティアスは内心で認めた。
——自分は狂ったのだな。
それもまた、そう悪い気はしなかった。
洋服店のチャイム
正午近く、二人はホテルを出た。
レイラは気が進まない様子だったが、マティアスは決定を覆さなかった。
付き人が持ってきたコートは戻し、自分のコートでレイラをしっかりと包む。
レイラには大きすぎて、ほとんど床を引きずりそうなほどだった。そ
れさえも、マティアスはひどく気に入った。
行き先は、洋服店だった。
「必要ありません」
首を横に振るレイラを、マティアスは強引に店内へと導く。
チャイムの音とともに、すべての客と店員の視線が、二人に集中した。
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※本記事は作品内容の分析・評論を目的としたものであり、原作の翻訳全文を掲載するものではありません。