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🌹 本記事は『泣いてみろ、乞うてもいい』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
羽を切ったんだ
レイラとカナリアは、しばらく互いをじっと見つめ合った。
首を傾げるレイラを真似るように、鳥も頭を傾けて歌う。
機嫌が良いのか、その歌はいつもより遥かに澄んで美しかった。
「公爵様の、鳥ですか?」
見ても信じられず、レイラは呆然と尋ねた。
歌をやめたカナリアは、パタパタと羽ばたいてマティアスの肩に止まった。
「何てこと。」
レイラは今や、首まで横に振った。
カナリアがこれほど人に懐くことも、
その人が他ならぬヘルハルト公爵であることも、なかなか信じられなかった。
「あの話が、本当だったなんて。」
「あの話?」
「以前、エバースさんがそう言っていましたから。公爵様が小さくて可愛い鳥を飼っているって。本当だとは想像もできませんでした。」
——口が堅く忠実な従者が、そんな無駄話を漏らしたとは。
軽く眉を顰める間に、レイラが鳥へそっと手を差し伸べた。
見知らぬ手が嫌なのか、カナリアは寝室の向こうへ飛び去ってしまう。
「まさか、私のことを嫌っているのですか?公爵様は好きなのに?」
瑞々しい緑の目を見開き、いささか悔しがるような表情が、マティアスを笑わせた。
警戒心を解いたレイラは、カナリアを追って窓際へ近づいていく。
鳥はからかうつもりなのか、捕まえられそうで捕まえさせず、ちょろちょろと逃げるのを繰り返した。
マティアスは、気だるい微笑みの滲む眼差しで、ぴょんぴょんと遊ぶ彼の鳥たちを見つめた。
その可愛らしい鬼ごっこは、カナリアが鳥籠へ戻ることで幕を閉じた。
後ろ手を組んで籠の前をうろついていたレイラも、結局は諦めて退いた。
「人にあまり懐かない種類の鳥なのに。どうやって手なずけたんですか?」
真剣な好奇心を込めて尋ねる。
「羽を切ったんだ。」
平然とした答えに、レイラのまつげが小さく震えた。
唇をきつく結んで視線を伏せる間に、マティアスは精巧な鳥籠の戸に鍵をかけた。
切られた羽を整えていた鳥は、今や大人しく巣に戻り、身を丸めている。
そのカナリアを見下ろす公爵の眼差しは、恋人を見つめるように優しく甘かった。
——この眼差しを、よく知っている。
時々、公爵はそんな目でレイラを見つめることがあった。
その目と合うと、途方に暮れて混乱し、混乱が去った後には必ず深い傷が残った。
——羽を切って。閉じ込めて。手なずける。
それがまさに、この男が望むものを手に入れるやり方なのだ。
私にとっては、切実な人生だった
感情の滲んだ目を見られたくなくて、レイラは慌てて窓辺へ寄った。
そこに立つと、淡い緑に染まっていく広大な庭園が広がって見えた。
こんな場所で、世界全体を足元に置くように見下ろして暮らしていたら、あなたのような心を持つようになるのだろうか。
もう一歩、窓へ近づく。
ビルおじさんが丹精込めて手入れしてきたまさにその庭園が、全く別の場所のように、ひどく見知らぬものに思えた。
カイルとの結婚を台無しにした人が、公爵だというわけではない。
レイラはそれをよく知っていた。
最初からかけ違えたボタンのような縁談だった。
公爵が正しい選択をしていたとしても、変わらなかったかもしれない。
それでも、あるいはそれだからこそ、レイラは公爵を許すことができなかった。
どんな手段を使ってでも手に入れれば済む物品のように、自分を軽視したのだ。
手荒に踏みにじっても、人生を台無しにしても、何の呵責も感じる必要のない相手。
真心を伝えたり、心を通わせたりする努力さえ、必要ないと思っただろう。
——あなたの目に映った私は、あまりにも簡単でつまらないものだったに違いないから。
——けれど、私にとってはあまりにも切実で、大切な人生だった。
深く息を吸い、レイラは涙を堪えた。
貧乏な、天涯孤独の身。
世間の目にはただそう映るだけだとしても、レイラは自分の人生を愛した。
ちゃんと生き抜きたかった。
一生懸命に。恥ずかしくないように。
自分の力で自分の人生を支えられる大人になりたかった。
そしていつかは愛する人に出会い、堅実な生活のある家庭を築きたかった。
流れる季節に従ってカーテンを替え、心を込めた料理で食卓を囲み、似た顔の子どもたちの背を測ったドア枠の斜線が増えていくような人生。
その夢を追って懸命に走ってきた過去の自分の姿が、夜の庭園の上にぼんやりと揺らめいているかのようだった。
息が切れても止まらなかった。
時には転んで傷ついても笑った。
——いつかは……。
その漠然とした希望を、胸の奥深く大切に抱きしめて。
結局、一人の男の欲望がそのすべてを踏みにじることになるとは、夢にも思わずに。
「レイラ。」
いつの間にか背後に近づいた公爵が、名を囁いた。
レイラは反射的に微笑みを湛え、ガラス窓に映る彼を凝視する。
マティアスもまた、ガラスを通してレイラを見つめた。
——美しい夢を見ていた少女が消えた場所に残ったのは、公爵の愛人。
憎む男のために微笑む、恥ずかしい女だけだ。
遠く、とても遠くへ
——クロディーヌが正しかった。
何をそんなにもがき苦しみ、取るに足らない自尊心を守ろうと必死に生きてきたのだろう。
結局、他人の男を奪ってしまう、ただこんな女にしかなれないというのに。
微かに震える唇の間から、苦笑いが漏れた。
その瞬間、頭を下げた公爵の唇が首筋に触れた。
本能的な恐れにびくりと震えると、彼は両腕でしっかりと腰を抱きしめる。
当然の成り行きにすぎないのに、なぜ今さら悲しくなるのだろうか。
拒否してはいけない男の胸の中で、レイラは目を固く閉じた。
復讐など、一体何の意味があるというのだろう。
ただ、今夜だけでも遠く、とても遠くへ逃げ去ってしまいたかった。
あなたのような人を、永遠に見ずに済むように。
「レイラ」
どれほどの時間が経っただろうか。
破裂しそうな頭の中へ、再び彼の呼ぶ名が流れ込んできた。
甘く、魅惑的な声だった。
——弱気になるな。
心を決めたレイラは、勇気を出して目を開けた。
微かに微笑む公爵の顔が見える。
いつの間にかベッドに寝かされていたと悟り、頬はあっという間に赤く染まった。
「どうして、笑うのですか?」
問いに、マティアスは行動で答えた。
桃の色に染まった頬をそっと噛むと、レイラが「あ」と短い悲鳴を上げる。
気にせず、彼は反対の頬を、可愛らしい小鼻を、小さくふっくらとした唇を噛んだ。
嫌がってもがくレイラが、彼をさらに意地悪にさせる。
——壊してでも手に入れたい女。しかし、大切に守りたい女でもある。
レイラを前にすると、いつもその相反する二つの渇望が、同時に熱烈になった。
「や、やめて!痛い!」
脈打つ首筋を噛み切るように噛みつくと、レイラが鋭く叫んだ。
肩を掴む手も、なかなか断固としている。
微弱な力にすぎなかったが、マティアスは素直に止まってやった。
それが不思議なようで、レイラは驚いた表情をする。
少し開いた唇が、風に揺れる薔薇の花びらのように震えた。
好きなようにしてみろ
深く考え込んでいたレイラが、力を込めて彼の肩を押した。
マティアスは、喜んでその手に押されてやることにした。
「何をしているんですか?」
公爵は彼女を抱いたまま、どさっとベッドに背をつけて横たわる。
呆気に取られ、その上に乗る格好になったレイラは、理解できないという顔で彼を見下ろした。
「押しのけたお前が言うことではないだろう?」
「私に押しのけられて倒れたのですか?公爵様が?」
とぼけたように笑うその濃い青い目は、以前ほど恐ろしくはなかった。
「急に、弱々しくなったようですね。」
肩をぐっと押しながら、レイラは眉を顰めた。
「これでは身動きもできないでしょう?」
「多分ね。」
「それなら、もう笑っていてはいけないですよね。」
腰を抱く腕を引き剥がし、シーツの上へ押しつける。
「怖くないですか、公爵閣下?」
抵抗なく応じてくれるので、レイラはもう少し勇気を出して、彼の鋭い顎を撫でた。
「私が、あなたに何をするか。」
自分を踏みにじった彼がそうしたように、そっと包んだ顎を持ち上げてみたりもした。
気だるげに開いた青い目は、相変わらず笑みを失っていない。
「好きなようにしてみろ。」
沈んだ声で、彼はゆっくりと答えた。
レイラの下に横たわり、掌の中に顔を委ねていても、マティアスは依然として余裕のある支配者のように見えた。
レイラを見る視線からは、少しも隠す気のない露骨な情熱が滲み出ていた。
「望むままに。」
斜めに傾いた赤い唇の端に、ほのかな灯が宿る。
レイラは、まだ払いのけていない躊躇も、胸の奥から湧く冷たい怒りも忘れて、静かにその美しい顔を見つめた。
顎を放した手は、自分でも気づかぬうちに、公爵の顔をなぞるように撫でていた。
「気に入ったか?」
「ええ。」
レイラも、彼のように平然と振る舞うことにした。
予想外だったのか、公爵の眉間が少し狭まる。
「お人柄より、ずっと。」
その嘘は、それほど難しくはなかった。いくらかは、真実に近かったから。
しばらく黙って見ていたマティアスが、声を出して大きく笑い始めた。
その響きが、上に乗るレイラにまで伝わってくる。
「大丈夫か、レイラ?」
彼の手が、頬を覆うレイラの手の甲に触れた。鮮明な熱さが感じられる。
「俺が本当に狂ってしまったら、どうするつもりだ?」
「違いますよね。」
胸に湧いた幻滅を押しやり、レイラは無邪気に笑って首を振った。
高い天井と華やかな壁、古風な家具と芸術品をかすめた視線が、再びマティアスの顔で止まる。
——このすべての主人として高貴に生きてきた男が、彼女の下に、自分を委ねたまま横たわっていた。
その事実に安堵したのか、レイラはもう彼を恐れていなかった。
恐怖が消えてみれば、公爵もまるで普通の男のように思えた。
「今日、公爵様は身動きできない人ですから、心配しなければならないのも、あなたではないでしょうか?」
「心配までしなければならないほど、すごいものを与える自信はあるのか?」
「多分。」
レイラの顔には今、心からの明るい微笑みが浮かんでいた。
女王のように
その瞬間も、両目はひたすらマティアスを見つめていた。
一瞬も逃したくなかった。
長く長く、記憶しなければならないから。
——『大きな傷と苦痛を、与えます。』
その約束を伝えるように、レイラは両腕で彼の首筋を抱きしめ、舌を絡ませた。
少しずつ大胆になるにつれ、マティアスの息が乱れていくのが感じられる。
それが嬉しくて、レイラは一層熱のこもった口づけを続けた。
——いつからか、こうだったように思う。
彼が恐ろしいと同時に、最も高貴で優雅な男が、自分のせいで野蛮な欲望にのみ囚われた存在へ転落する瞬間を見るのが、好きだった。
「待つんだ。」
シーツを握りちぎるように掴んでいた手が腰へ伸びると、レイラは子どもを叱るように優しく囁いた。
「約束したでしょう。私の好きにさせてくれるって。」
その腕を引き剥がしてベッドへ押しつけ、レイラは自分の手でブラウスのボタンを外し始めた。
手慣れた妖婦のように振る舞っているが、顔中が、いや、全身が真っ赤だった。
それでもレイラは、真面目な態度で一つずつ、服を脱ぎ続けた。
露わになった白い肌のあちこちに、彼が残した痕跡が濃く残っていた。
マティアスは、甘い敗北感に浸ったままレイラを見つめる。
半分狂って飛びかからないためには、限界を超える忍耐力を動員しなければならなかった。
なぜこの忌々しい行為に同調してやっているのか理解できなかったが、拒否する術もまた、なかった。
やがてレイラは、悲壮な覚悟を決めるように息を整え、再び彼の上へ座った。
マティアスを見下ろしながら、レイラはゆっくりと微笑む。
目が眩むほど美しく。
——彼の人生を占領した、女王のように。
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