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🌹 本記事は『泣いてみろ、乞うてもいい』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
間違いなく、何かある
諦めるようにその事実を受け入れたマティアスの唇から、熱く乾いた笑いが漏れた。
焦らすようにじっと見下ろしていただけのレイラが、恐る恐る身を屈める。
密着する感触に漏れたため息が消えるか消えないかのうちに、愛らしい唇が彼の唇に触れた。
——嘴でこんこんとつつく彼の小さな鳥のように、レイラはせっせと口づけを続けていった。
その不器用な挑発を見つめる青い目が、ますます濃い光を帯びて沈む。熱い息を飲み込む間に、シーツを握りしめた手の甲の骨と血管の輪郭が、一層鮮明になった。
——間違いなく、何かある。
レイラが自分の服を脱がせ始めた瞬間、マティアスは確信した。
熱に浮かされたようでいて、時折、ふっと手が止まる瞬間があった。
その時レイラは、崖の前に立つ人のように途方に暮れた顔になった。
それでも必死に誘惑しようと努める姿が、生意気でありながら愛おしかった。
一晩で自分を愛するようになったはずのない女だった。
喜んでその錯覚に陥りたい気持ちとは裏腹に、マティアスの理性は明確にその事実を認識していた。
——恐らく、望む何かがあるのだろう。
この女が自分に身を許すのは、大抵そんな瞬間だけだったと、彼はよく知っていた。
しかし、構わなかった。
望むなら、与えてやればいい。それだけだ。
目的が何であれ、レイラはただ今のように、彼のそばにいれば良いことだった。
条件が何であれ、その代償としてこの女を手に入れられる限り、決して損にはなり得ない取引なのだから。
シャツを苦労して脱がせたレイラは、全身を赤く染めて荒い息を吐いた。
眼差しは毅然としているが、冷や汗でびっしょり濡れた手は、わなわなと震えていた。
皺になったシーツを放したマティアスは、端正に櫛でとかしつけた自分の髪をかき乱して掴んだ。
荒くなった息に混じって聞こえた低い悪態に、レイラの目が大きくなる。
到底この男が吐いた言葉だとは信じられない。
戸惑っているのに、公爵は何食わぬ顔で目を合わせてきた。
困惑したレイラは、とりあえず咎めるように彼の肩を掴んだ。
眉間に皺を寄せながらも、マティアスは特に抵抗しなかった。両腕を再びシーツへ下ろしたまま、処分を待つようにじっと見つめるだけだった。
それでも気が済まず、レイラは彼の手首を力一杯掴む。
ため息のようにフッと笑うだけで、今回も公爵は素直だった。
弄ばれているのは、結局
安堵を覚えたのも束の間。
レイラは突然、夢から覚めた人のように茫然となり、注意深く周りを見回した。
威圧的に大きく華やかな寝室。
美しい鳥籠の中でぐっすり眠るカナリア。
そして、自分の下に横たわっている男。
彼の手首を握る自分の手に目を落とした頃には、わずかな自信はきれいさっぱり消え去っていた。
ほんの一時的にこの関係の優位を占めたという錯覚が、あまりにも滑稽だった。
その気になれば、マティアスは片手だけでも彼女を制圧できただろう。
レイラが主導しているのではなく、ただこの男が見逃しているだけだった。
そう気づくと、忘れていた羞恥心が押し寄せてきた。
「続けましょう、女王陛下。」
首をかしげ、マティアスが微笑んだ。
一層魅惑的な笑みだった。
——何ということをしてしまったのだろうか。
不意に、自分がひどく惨めに思えて、レイラは呆然とした。
弄ばれているのは、結局自分の方だということも知らずに……。
赤くなった目元を見られたくなくて、慌てて目を伏せた。そうすると、この格好のまま彼の上にいる自分の姿が、さらに如実に伝わってきた。
慌てて顔を上げると、マティアスの顔が見えた。
もうその視線を受け止める自信がなくなり、急いで体を捻ったが、腰を掴んで引き寄せる動作の方が少し速かった。
バランスを崩したレイラは、彼の肩に手を置いてかろうじて体を支えた。
「もう、やめます。」
それは、レイラの切実な本心だった。このすべてが突然、恐ろしいものになった。
計画通りに進んでいると信じていたが、実は今のように、公爵の掌で遊ばれているだけだったのかもしれない。
今すぐにでもやめて、一日も早くこの男のそばから逃げ出すことだけが、唯一の道なのかもしれない。
そうだ。いっそ、そのように——。
「あ!」
何かに追われるように切迫していた思念は、結末を迎えることなく散り散りになった。
その場に残ったのは、鮮明な感覚だけ。
身をよじって逃れようと努めても、マティアスはもうこれ以上の寛容を施す気はないようだった。
自分のものだと信じたくない嬌声と、胸を吸われる湿った音が、
なすすべもなくレイラの意識をかき乱した。
その間に、マティアスの手が緩くまとめた髪のリボンを手荒に解く。流れ落ちた髪が肌をくすぐる感触に、彼の息もまた荒々しくなっていった。
胸いっぱいに赤い痕跡を濃く刻み込んだ後、ようやく彼はレイラを放した。
体重をかろうじて支えていた両腕の力が抜け、レイラはそのままふっと彼の上に倒れ込んだ。
「今さら、やめるだと。そうはいかない。」
小さく喘ぐレイラを胸に抱いたまま、マティアスは体を返した。
一瞬で彼の下に閉じ込められたレイラの上に、濃い影が差し込む。
「約束なさったのですから、守っていただかなければ。そうではありませんか?」
耳元で囁くけだるい声に、レイラは辛うじて目を開けた。
「私の、女王様。」
視線を合わせた彼が、微笑んで囁く。
その甘美な嘲笑に、レイラの目元はさらに赤く火照った。
しかし、ついに反論はできなかった。
ぐっとレイラを満たした彼が、激しくぶつかり始めた。
最後のワルツ
ラッツの春を開くパーティーは、夜が深まるほど賑わいを増していた。
ダンスも音楽も歓談にも飽きたクロディーヌは、休憩室へ抜け出す。
開け放った窓から、花の香りを含んだ春の夜風が吹き込んできた。
——もうすぐ夏が来る。
そう思うと、安堵と幻滅が同時に押し寄せた。
「このパーティーの女王が、もう退場してしまったら困る。」
聞き慣れた声に振り向くと、リエットがいた。
今さらよそよそしくするのも滑稽だった。
未来のヘルハルト公爵夫人をからかうリエットに、クロディーヌも辛辣な言葉を返す。
軽口を交わしながらも、リエットは自分が傷ついていたことに気づいた。
——心から接すれば、もしかしたら答えが変わるかもしれない。
そんな愚かな期待を、どこかで抱いていたのだ。
——それで、君が憎いのか。
できることなら、憎みたかった。
それでも結局、この高慢で哀れなお嬢様を憎むことはできなかった。
やがてリエットは何食わぬ顔で手を差し伸べた。
「私はただ、ダンスを一曲お願いしたいだけですよ、令嬢。」
早い春の夜風のように、その微笑みは優しかった。
呆れて鼻で笑いながらも、クロディーヌは、その手から目を逸らすことができなかった。
社交界にデビューした夜、最初のダンスの相手は、当然マティアスだった。
誰もがそうあるべきだと信じていたし、クロディーヌもそうだった。
しかし、デビュタントの夜を思い出すとき、最も記憶に残るのは、リエットと踊った最後のワルツだった。
リエットのダンスはマティアスのように完璧ではなかったが、
ひどく緊張した少女への配慮が感じられた。
優雅で丁重な態度ではなくても、いたずらっ子のようなその笑みには、心からの祝福が込められていた。
誰もが羨む最高の花婿候補、ヘルハルト公爵に姫のように扱われても、冷めていた心を慰めてくれたのは、リエットが分け与えてくれた、その温もりだった。
あの日のように、結局クロディーヌはその手を取った。
ダンスを一曲踊ったからといって、一線を越える関係になるわけではないのだから。
それを証明するように、誰も二人を変な目で見たりはしなかった。
平凡なパーティーの夜だった。
ダンスを踊るリエットは、彼らしくなく丁重だった。パーティーで出会った淑女と儀礼的なワルツを踊る紳士のように。
つまり——親愛なる、他者のように。
「ご一緒できて光栄でした、ブラント令嬢。」
ダンスが終わると、彼は丁重な礼を尽くして挨拶を述べた。
「いや、ヘルハルト公爵夫人。」
力を込めて見開いたクロディーヌの両目を見つめて微笑み、リエットはその挨拶を最後に背を向けた。
品位ある線を守りながら。クロディーヌの望み通りに。
だから、あなたもまた
だから、これで良かったのだと、クロディーヌは安堵した。
パーティーの間も、屋敷へ戻る間も、休むことなく考え続けた。
本当にそうであるかのように、信じられる気もした。
華やかな見せかけを脱ぎ、寝室に一人残される瞬間が来るまでは。
寝返りを打っていたクロディーヌは、結局眠れずに身を起こした。
ランプを灯しても、その暖かい光の中で、顔色は青白いままだった。
もしかしたらそれは、長きにわたる片想いに終止符を打つ、別れの挨拶のようなものだったのだろうか。
リエットの最後の微笑みが、頭を離れなかった。
未だ婚約すらしていない彼を、侯爵家はもう放っておかないだろう。今年中に彼もまた、務めを果たす結婚をすることになる。
だから、ここで別れを告げる方が、お互いのためになるだろう。
クロディーヌは納得した。少なくとも、頭ではそうだったようだ。
きつく閉じた目を開け、ベッドを降りて大股でドアの前へ近づいた。
しかし、結局そのドアを開けることはできなかった。
永遠にリエットを失ってしまったのかもしれないという考えがよぎると、胸の奥深くにとぐろを巻いた冷たい怒りと軽蔑は、さらに深まった。
クロディーヌは必ず公爵夫人になるつもりだった。
しかし、だからといって、損をする結婚を甘受する気は微塵もなかった。
この結婚が一つの商売であるなら、お互いに公平でなければならないからだ。
感情を鎮めたクロディーヌは、便箋と羽ペンを探してテーブルの前に座った。
息を吸って吐くのを繰り返す間に、その眼差しはさらに冷徹になっていく。
マティアス・フォン・ヘルハルトとの完璧な結婚のために、クロディーヌ・フォン・ブラントは愛を失った。
——だとしたら、あなたもまた、そうでなければならない。
公爵閣下だけがこの結婚も愛もすべてを手に入れては、あまりにも不公平な取引ではないか。
——『公爵夫人の地位がいくら素晴らしくても、
君自身を駄目にするほどの価値はないよ、クロディーヌ。』
リエットの声が、耳元で聞こえてくるようだった。
だから少しの間ためらったが、クロディーヌは結局、インクをつけた羽ペンを便箋の上へ持っていった。
すでに彼女の心は、名誉と体面に蝕まれて久しかった。
マティアスから離れるというレイラの約束を、疑っているわけではない。
あんな屈辱を受け、すべてを知ってもなお、あの男のそばをうろつくような子ではない。
いっそ、そんな女だったなら、クロディーヌはこれほどレイラ・ルウェリンを嫌いにはならなかっただろう。
ただ、レイラが自ら去るその時を、クロディーヌは待ってやるつもりはなかった。
一体なぜ、そうしなければならないというのか。
あの子を殺すことはできない。けれど、死ぬほど苦しませ、一日も早く消え去るよう仕向ける方法なら、分かっている。
その愚かな庭師に送る手紙を、
クロディーヌはぐっと力を込めて書き始めた。
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