泣いてみろ、乞うてもいい|原作95話 光と影|夜が去っていく色」 あらすじ【ネタバレ】

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🌹 本記事は『泣いてみろ、乞うてもいい』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。

傷つくまで、傷つきたい

レイラは、ぶるぶる震える手でマティアスのコートとジャケットを脱がせた。

ネクタイを緩め、シャツのボタンを外し始める頃には、彼の息ももう平穏ではなかった。
熱い溜め息を吐き、マティアスはレイラを放るようにベッドへ横たえた。

のし掛かってくる体温と重みに、レイラは安堵した。

——今は、心の全てが傷つくまで傷つきたかった。

他のことなど何ひとつ考えられないように。
ただ痛みだけがあるように。

——だから、手加減なしに、痛く踏みにじればいい。
それだけの関係にふさわしく、どうか。

苦痛を渇望するように、レイラは公爵にすがりついた。
その髪を乱すように掴み、性急に唇を求めた。

——自分のものではないような声さえ、今はむしろ感謝の対象だった。

「あ……!」

いつしか一枚の布も残らぬまま、彼は配慮のかけらもなく重なってきた。
引いた腰が再び力任せに沈むたび、レイラはもがくように体をよじった。

「声を出して。」

マティアスは、口を覆うレイラの手を引き剥がし、シーツへ押しつけた。

追い立てられるまま揺さぶられているのに、
この忌々しい女の瞳は、相変わらず彼を睨みつけている。

「カイル、カイル」と、よくも喋っていた唇が、彼のせいですすり泣き、呻いている。

その事実は、それゆえなおさら痺れるような感覚を与えた。

——「好きよ。」

カイル・エトマンを守るための嘘に過ぎなくとも、
あの唇から漏れたその言葉は、狂おしいほど甘美だった。

怒りも幻滅も、深い混乱も、一瞬で消し飛んでしまった。
こうして侮辱されている瞬間にも、たった一言の余韻に囚われている自分が滑稽になるほど。

彼が身を屈め、唇を吸い上げると、レイラ自身が、震えながら彼を締めつけるのが伝わった。

ある瞬間から、レイラも小さく体を動かしていた。
自分が何をしているのかさえ分からぬまま、
固く目を閉じた無垢な顔が、彼をさらに荒々しくさせた。

「どうしてだ?あの子のことでも考えて、耐えてみようというのか?」

笑いを交えた皮肉に、長い睫毛が微かに震えた。

「目を開けろ、レイラ。」

力の限り深く進むと、レイラは小さな体をばたつかせてすすり泣いた。
重いまぶたの下から現れた緑の瞳は、相変わらず憎悪に満ちている。

目元を赤くし、息を切らす濡れた顔は、ひどく色っぽかった。
いくら憎まれても、結局は自分のものだ——その事実は、マティアスに慰めと自己嫌悪を同時に与えた。

少なくとも体を重ねる瞬間だけは、この女が完全に自分のものだと感じられた。
深く絡み合うほど、安堵が増していく。

「そうだ。そこまで言うのなら、お前の意思を尊重してやるべきだな。」

しきりに目を閉じ、両手で顔を覆うレイラを見て、マティアスは冷たく吐き捨てた。
その言葉の意味を、レイラは彼の行動で理解した。

一瞬で体勢を変えられ、背後から覆いかぶさるマティアスに、
レイラは先ほどより激しく揺さぶられた。

シーツをきつく握りしめる中、
狭い部屋には肌の触れ合う音とベッドのきしみ、二人の荒い息遣いが入り混じっていく。

「よかった。」

呻きながら、もがきながら、レイラは安堵した。

——少なくとも、あの耳鳴りはもう浮かんでこない。それでよかった。

ただこれだけの関係なのだと、全身が記憶してくれることだけを願った。

その間に、急激に荒くなっていた息と動きが、止まった。
ぐったりしたレイラの背へ、マティアスも汗に濡れた体をかがめる。

カイル・エトマンへ走り寄っていたレイラが、思い出された。

彼のために全身で自分を遮り、死ぬほど嫌な嘘を平然とつき、無遠慮に自分を侮辱していた、レイラ・ルウェリンが。

この愛らしくも憎らしい女の中で、欲望が再び膨れ上がった。
マティアスは、ためらいなく、幻滅と入り混じった快感を追い始めた。

「死ぬほど憎んでみろ、レイラ。」

髪を掴み、レイラの顔を自分の方へ向ける。
まだ怒りを手放していない瞳が、今は哀れにさえ見えた。

「それでもお前は、俺のものだから。」

歪んだ微笑みの唇を下ろし、彼は熱い息を切らすレイラの唇を飲み込んだ。

彼の美しい愛人は、息遣いまでもが甘美だった。

——レイラ……
忌々しい、私のレイラ。

光の届かない場所で

クロディーヌは、長い間小屋の前庭をうろついていた。

後をつけた時から予想はしていた。
それでも、自分の目で確かめてしまうと、堪え難いほど滑稽で、虚脱した。

ヘルハルト公爵は違うと思っていたのに。
これではあまりにありふれた、つまらないとさえ思える安っぽい不倫ではないか。

それなのに、自分はなぜこんな汚らしい場所をうろついているのか。
それでも確かめずにはいられない、自傷に近い衝動の理由も、自分では分からなかった。

痛いほど握りしめていた拳を開き、クロディーヌは物音を立てずに玄関へ向かった。

いっそ鍵がかかっていてほしい。

そう願ったドアは抵抗なく開き、かえってクロディーヌを虚しくさせた。

ランプ一つだけが灯る家の中は薄暗い。
微かな明かりを頼りに見回していた視線が、台所の裏手にある部屋のドアで止まった。

一歩ずつ近づくほど、その向こうから聞こえる音が鮮明になっていく。

子猫の鳴くような女の声と、低く荒々しい男の声だった。

それでも、泣くな

体が冷め、心臓が本来の鼓動を取り戻すほどの時間が流れた後も、
並んで横たわる二人は沈黙に包まれていた。

マティアスは天井を見つめ、レイラは壁を向いて小さく体を丸めていた。

気が狂ったとしか言いようのない時間を思い返すマティアスの唇に、虚脱した笑みが浮かぶ。
何ひとつ理解できないのに、それが嫌ではなかった。

自分の人生に存在するとは思いもよらなかった感情だった。

これほど甘美な混乱をもたらしたレイラは、
背を向けたまま、硬い殻のような沈黙に包まれている。

髪を掴んで揺さぶりたい衝動に手を伸ばしたが、
レイラに触れる手つきは、ランプの仄かな明かりのように優しかった。

仰向けに寝かせて抱きしめると、
死んだようにじっとしていたレイラが、きらりと目を開けた。

濡れた目元を拭う手は、冷たく柔らかい。

押し退けようとしたレイラは、間もなく体をぐったりと力を抜いた。
もはや気力は残っていなかった。
まぶたを持ち上げることさえ重い疲労が、全身を締めつけていた。

レイラが静まると、マティアスも一段とくつろいだ。
胸に引き寄せて抱いたその目元へ、彼は口づけた。

額と頬、そっと開いた唇にも。
汗に濡れた髪と背筋を撫でる手つきも、その口づけのように優しかった。

少なくとも、再び体を重ねることはないだろう——レイラはひとまず安心した。

ぼんやりとした顔に、マティアスは数え切れないほど口づけた。
鼻筋をそっと擦り、真っ赤になった頬を、戯れるように噛んでみたりもした。
目を閉じたり首を振ったりして微弱に抵抗しても、マティアスは止めない。

「やめてください。」

顔をしかめ、レイラは小さく囁いた。
再び込み上げた涙にきらめく瞳が、彼を映す。

「だったら言ってみろ。好きだと。」

そう言えば望み通りにしてやると、マティアスはまたレイラの涙に口づけた。

涙を舐める音が、低い笑い声と入り混じった。
レイラは途方に暮れて公爵を見つめた。

閉じた目を開けるたび流れる涙は、彼の唇と舌先に染み込み、跡形もなく消えた。
体に触れる手つきも、もうレイラを傷つけない。

——これほど親密で優しい瞬間を否定するように、レイラは目を閉じ、唇を噛みしめた。

どうかこのまま去ってほしいと願ったが、マティアスは口づけを続けた。
脈打つ首筋に、震える肩に、そして握りしめた髪に。

「泣くな。」

再び目元に触れた唇が囁いた。
信じられない言葉に、レイラは思わず目を開けた。

「……変です。こんなのは……すごく変よ。」
「こんなの、とは?」
「私が泣くと、あなたは楽しいんでしょう。」

力を込めて見開いた目からも、涙は絶え間なく流れ落ちた。

「ああ。」

マティアスは、その涙もゆっくりと拭ってやった。

「それでも、泣くな。」

——レイラの涙は相変わらず甘美だったが、彼はもう、それ以上のものを求めていた。

「笑え、レイラ。」

「今度は私が笑わなきゃ、あなたは楽しくないんですか?」

「おそらくな。」

「だったら私は、絶対に笑いません。」

こらえきれなくなった嗚咽を漏らし、レイラは首を振った。
静かに見ていたマティアスは、短く笑いを漏らす。

その気品ある美しい顔のどこにも、傷ついた様子など見当たらない。

レイラは、逃れられない男の腕の中で、子どものように泣いた。
どんなにもがいても押し退けられない彼は、まるで硬い鉄格子のようだった。

心底うんざりしたが、居心地がよかった。

生まれて初めて感じたこのような安らぎを与えた人が、他でもないこの男だという事実が嫌な分だけ、レイラの泣き声はさらに悲しくなっていった。

カイルを傷つけて、ビルおじさんの家で、クロディーヌの夫になる男に抱かれて。

——汚い

今この瞬間、レイラを苦しめているのは、他でもない自分自身だった。

「あなたが何だというの、私をこんな風に……いつかは私も、あなたを泣かせるつもりです。」

いっぱいに溜まった涙で、レイラは澄んだ瞳に彼を映した。

「胸を引き裂かれるように泣かせるつもりよ。」

誓うように力を込めて吐き出したその言葉が、マティアスを笑わせた。

「ああ。」

涙で濡れてきらきら光る頬に、マティアスは短く口づけた。

「楽しみにしているよ。」

耳元に囁く声は、この上なく優しかった。

刃物を握ったと思っていたのに、
深く切りつけられたのは、今回もレイラだった。

夜が去っていく色

しばらくすすり泣いた後、レイラはいつしか意識を失った。
再び目を覚ましたのは、薄明るい夜明けが訪れる頃だった。

驚いたことに、公爵はまだそばにいた。
ベッドの傍らに座り、静かにレイラを見下ろしている。

「行ってください。」

低く沈んだ声で、レイラは囁いた。

「もう、行かないと……。」

それでも返事をしない彼に、
焦ってもう一度告げると、マティアスはようやく頷いて立ち上がった。

すでに身支度は整えていた。

——どうして、私のそばに留まっていたのですか。

口に出せない問いを胸の内で繰り返していると、
ジャケットとコートを羽織ったマティアスが振り返った。

もう一度ベッドの端に腰掛け、布団を引き上げてレイラの肩まで包んでやる。

レイラは息を殺して彼を見つめた。
マティアスもまた、黙ってレイラを見つめていた。

その間にも、夜明けは青く澄んだ光に染まっていく。

もう本当に、行かなければならない時間だった。

身をかがめてレイラの頬に口づけると、マティアスは立ち上がった。
訪ねてきた時と同じように、立ち去る時も急ぐことはなかった。

規則的な足音が少しずつ遠ざかり、やがて聞こえなくなる。
レイラは深まった静寂の中に、一人残された。

「あの男の目は、まるで今のこの青い光のようだわ。」

枕カバーを握りしめ、虚空を見つめながら、ぼんやりと考えた。

——夜が訪れる色。そして、夜が去っていく色。
——闇の中でしか一緒にいられない、自分の悲しみの色に似た人。

止まりそうにない思考を断ち切るように、レイラは枕に顔を埋めた。
浅い眠りと目覚めを繰り返すうちに日が昇り、いつの間にか明るい朝が訪れていた。

いつもより遅く起き出したレイラは、真っ先に湯を浴びた。
けれど、体に残ったマティアスの痕跡は、消そうとするほど鮮明に感じられた。

諦めたレイラは、抱えた両膝の間に顔を埋める。
立ち昇る白い湯気が、小さくうずくまる体を包んでいた。

丁寧ながら、やや性急なノックが響いたのは、
湯が冷め、レイラを隠していた湯気も晴れた頃だった。

「ルウェリンさん!」

レイラが凍りついている間にも、甲高い声が響く。

——クロディーヌの侍女、マリーだった。

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