🌹 原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第3巻9章を高解像度あらすじ形式で構成しています。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点による考察を含みます。
本文中の会話・台詞は、原作の表現を適宜引用しています。
あれほど待ち焦がれた瞬間なのに……
女と話すカッセルが、ようやく視界に入った。
あまり、嬉しくなかった。
あらすじ|火種はどこにでもある⑨
ベルビク中尉との歓談が口火となり、イネスの周りに若い将校たちが殺到し始めた。
数十回のキスを受けた手袋、覚えきれない名前の波。
疲れたイネスは、唯一名前を覚えたイグレシアス少尉にテラスへのエスコートを頼む。
夫を熱烈に尊敬する彼から、カッセルの軍での立場を聞き出すうち、イネスはふと奇妙な質問を口にした。
「少尉、もしかして私の夫を好いているのですか?」
——答えたのは、イグレシアスではなかった。
私は嫉妬深いわけじゃない
官邸で顔見知りになった女たちと適当に挨拶を交わしながら、イネスはカッセルを監視するのに都合のいい場所を探した。
先ほどまで猟犬のように探し回っていたくせに、居場所が分かってしまうと、今度はそちらへ目を向けようとしない。
(当然だわ。私は嫉妬深いわけじゃないんだから。)
イネスはわざとらしくそう自分に言い聞かせた。
奇妙な宗教の教祖
真っ先に紹介されたのは、士官学校を卒業したばかりのホセ・イグレシアス少尉だった。
浅黒い肌に鋭い目つき。
屈強な同期たちの中でも目立つ青年なのに、イネスを前にすると耳まで真っ赤だった。
「ご夫君をいつも……尊敬……しており……」
(またホセなの——。)
夫を尊敬していると言いながら、その妻を見て耳を赤らめている。
イネスには、どういう了見なのかさっぱり分からない。
「陽の光の中でミサベールを被って祈っておられるお姿が、あまりにも美しく神々しかったので」
目も合わせられないくせに、恥ずかしげもなくこんなことを言う。
イネスは、女の手の甲に丁寧なキスなど一度もしたことがないかのように、震える手で自分の手を聖杯のように受け取る青年をじっと見つめた。
(こんなにも純粋な童貞のくせに、人妻との不倫を夢見ているとでもいうのか——。)
そして、イグレシアスだけではなかった。
純粋な将校たちが、競走馬のように次々と押し寄せてきた。
美しいという称賛は、結婚式の日より多く聞いた。
しかし、崇高だとか神聖だとかいう言葉は初めてだった。
瞬く間に数十回のキスを受けた手袋が、どうにも気持ち悪い。
奇妙な宗教の教祖になった気分だった。
ホセは四人、フアンは三人、フェルナンドは二人。
最初のホセ・イグレシアス以外、一つも頭に残らなかった。
メンドーサは狂人だらけだが、こんなにも純粋な狂人はいなかった。
(見当もつかないカルステラ——。)
そこで、ベルビク中尉の言葉が頭をよぎった。
「軍人たちは普通、自分の地位と立場を忘れません」
——つまり、今まではそうだったのだ。
イネスを取り巻くヴァレスティナとエスカランテの名声。
そして、彫刻のように完璧な夫。
それらが、男たちに軽々しく近づくことを許さなかった。
けれど一人が「近づいてもいい」と示した途端、
その向こうには順番を待つようにこちらを窺う男たちまでいる。
あのベルビクのぼろ雑巾が、「機会」の口火を切ったのだ。
女とカッセル
将校の群れから何度か抜け出そうとして失敗したイネスは、しばらく見向きもしなかったカッセルを、また探し始めた。
ノリエガ大佐とその孫娘、マリア・ノリエガと楽しそうに話している様子が目に入った。
——女とカッセル。
あれほど待ち焦がれた瞬間なのに、あまり嬉しくなかった。
「今更そんなことをするくらいなら、もっと早くから女たちを侍らせて、自分を幸せにしてくれていればよかったのに」
カッセルではなく、マリア・ノリエガの目だけをむっと睨みつけたイネスは、イグレシアス少尉を呼んだ。
理由は一つ——唯一、名前を正確に覚えているからだった。
テラスにて
「皆様の熱烈な歓迎には感謝しますが、少し疲れました」
「セニョーラ、やはり同期たちが失礼を……。
馬車でお送りしましょうか?それともご夫君を代わりに探して……」
「夫には用事があって……。
テラスに行って、しばらく風に当たれば少しはましになるでしょう」
イネスはテラスまでのエスコートを頼んだだけだった。
ところがホセ・イグレシアスは当然のようにそのままついてきて、軍服の上着まで脱いだ。
そんな薄いドレスで夜風に当たれば具合が悪くなると、あれこれ世話を焼く。
最初はエミリアーノを思い出させた。
けれど、目が合うと今度はカッセルそっくりだった。
(顔つきはどちらにも似ていないのに——。)
犬のように見つめる目が、いつかのカッセルみたいで気の毒にさえなって、イネスは差し出されたコートを肩にかけたままにした。
すると満足そうな顔をする。そんなところまでカッセルに似ていた。
カッセルみたいに、面倒なのに追い払うこともできず……。
(……なぜしきりにカッセルを)
神の息子の子
「夫を尊敬しているとおっしゃいましたね?」
聞き出してみれば、尊敬は本物だった。
三年でのエル・レデキヤ卒業は、本来二年で十分だと皆が言っていた。
海戦での功績、六つの武功勲章、救われた同僚たち——輝く瞳には誇りさえ宿っていた。
「つまり、私の夫は神の息子の子というわけね」
「そう言っても過言ではありません」
しかし、イグレシアスの言葉は思わぬ方向に深くなった。
有能な人々には、往々にしてがっかりするほど無能な息子がいる。
がっかりするような人間を期待していた者たちにとって、今のエスカランテ大尉は「期待外れ」なのだ、と。
ここは能力がそのまま見える場所で、身分ではない限界——本人の力量という限界に苦しむ者たちにとって、カッセルは最も大きな敵なのだ、と。
「それこそ、味方を背にしても常に背後を警戒しなければならない理由でしょう」
奇妙に、意味深な言葉だった。
気分が悪くて、不吉で……。
二番目の声
イネスは、じっくりその言葉を噛み締めてから、ふと浮かんだ質問を何気なく口にした。
「少尉、もしかして私の夫を好いているのですか?」
「はい?」
「別にどういう意図で聞いているわけでもないから、誤解しないでちょうだい。
私の夫は男たちの目にも完璧で、人がそんなにも完璧だと、自分でも知らなかった同性愛的な傾向が、ある程度は……」
「……なんだと?」
二番目の声は、イグレシアスのものではなかった。
カーテンを開けてテラスに入ってきたカッセルの、険悪な顔があった。
これは非常に奇妙な状況だった。
▶ 次の話(続き)【第9章|火種はどこにでもある】
→第9章⑩|マリカ・イグレシアス(※更新予定)に奇妙な状況だった
📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画・COMICO | 第46話相当 |
| めちゃコミ | 第47話相当(推定) |
📖 作品情報・配信プラットフォーム
この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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