イネス・ヴァレスティナの回帰は救済ではない|ルカが示す「記憶という刑罰」【ネタバレ・人物考察】

この結婚はどうせうまくいかない

本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。


ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。

韓国ロマンス小説
「この結婚はどうせうまくいかない」

この物語は、いわゆる「回帰もの」です。
しかしイネス・ヴァレスティナの回帰は、多くの作品のような救済ではありません。
なぜなら彼女は、死んでから過去に戻るのではないからです。

彼女の体感では、昨日、自分の子どもを失い、その直後に自らも死を選ぶ。

そして今日、6歳の少女として目を覚ます。

時間は十年以上巻き戻っています。
しかし彼女の記憶の中では、それは昨日の出来事です。
このとき、世界から消えた存在があります。

それが 「ルカ」です。

オスカルとの地獄のような人生を終えたあと、自らの選択でエミリアーノを巻き込み、真実の愛の中で授かったかけがえのない子どもです。

回帰は本当に救済なのか

一般的な回帰作品は次のような時間軸をたどります。

死亡
↓
数年前に戻る
↓
人生をやり直す

しかしイネスの場合は違います。

死亡 → 即回帰

体感時間が全く存在しない。
つまり、記憶が断絶していないのです。

これは何を意味するのか。

「昨日、子どもを失った母」

イネスは、自分の手で我が子を殺め、その直後に自らも命を絶ちます。
その罪を抱えたまま、6歳の体に戻ります。

ここに、この作品の残酷な構造があります。
多くの回帰物語では、

罪
↓
過去へ戻る
↓
やり直す

という構造になっています。
しかしイネスの回帰は違います。

回帰によって消えてしまった「償う対象」

ルカは、もうこの世界に存在しません。
どこにもいない。
つまり、イネスは

・謝ることもできない
・守ることもできない
・償うこともできない

回帰は罪のやり直しではありません。
それは罪の永久保存なのです。

母親だけが覚えている子ども

世界の誰も、イネスの回帰を知りません。
ルカは存在しない。
しかし、イネスだけが知っている。

これは母親にとって最も残酷な状況です。

子どもを失うことよりも残酷なのは、その子どもが存在した証拠すらこの世界に残っていないこと、だからです。

6歳の精神で背負うには重すぎる記憶

今、イネスは6歳です。

・子どもを失った母
・自ら死を選んだ人間

この二つを抱えながら、彼女は、昨日から今日へ、
6歳の体に回帰したのです。

だからイネスは、
・冷静で
・冷酷で
・計算的

に見える。

しかしそれは、精神が壊れないための防御でした。
そうでなければ、彼女はおそらく呼吸することすらできなかったでしょう。

ルカの意味

ルカは物語の登場人物ではありません。
イネスの回想でしか登場しない。

しかし、物語の中心です。

なぜなら、イネスの今回の人生のすべての選択が、
この子どもの記憶から生まれているからです。

「ルカ」という存在は、
罪、愛、記憶、回帰
このすべてを象徴しています。

そして、この記憶は、物語後半の展開にも深く関わっていきます。

▶あわせてお読みください。
→原作5巻総括

考察まとめ

「この結婚はどうせうまくいかない」の回帰は救済ではありません。
それは「記憶」という刑罰です。

世界はすべてを巻き戻す。
しかし、記憶だけは消えない。

その記憶を持っているのは彼女一人だけです。
そしてその刑罰を受けているのは、イネス・ヴァレスティナという一人の女性です。

かつて皇太子妃だった女性。
母になれなかった女性。

そして、一度だけ、真実の愛の中で母になった女性。

その子どもはもうこの世界のどこにも存在しません。
それでも彼女だけは、その子どもを覚えているのです。

📖この考察を読み終えた方へ

イネスの回帰について、
一連のエピソードは、第2章に集約されています。

▶ 第2章|イネス・ヴァレスティナの視点

この関係をカッセル側から見ると、また違った構造が見えてきます。
▶ カッセル・エスカランテ人物考察①
→ カッセルという人物の構造を整理した記事

また、この関係性をエミリアーノの行動から捉えると、また違う構造が浮かび上がります。
▶ 第12章|エミリアーノ編|考察シリーズ
▶ エミリアーノ人物考察

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