🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・終章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
※地名・人名について:本作には現時点で原作小説の公式日本語翻訳版がないため、地名・人名などの固有名詞は原文をもとに当サイトで日本語表記しています。今後、公式日本語版で異なる表記が採用される可能性があります。
終章|風はかつて吹いていた場所へと帰っていく 12
カッセルがバルカを追い詰める布石を打つ。
左腕を固定具で吊ったまま船の下層へ降りた彼を待っていたのは、
手のひらを返して沸き立つ海賊たちだった。
自分たちこそカッセルを救った功労者だと色めき立つ彼らへ、
カッセルは「腕一本分の価値」を認める。
ただし、その対価を受け取るには条件があった。
歩き回る姿でも見せておいてこそ
「オルテガの最も貴重な兵器を蘇らせたのですから、それなりの報償は必要でしょうね。海軍に服役した全期間をひっくるめても指折りの惨憺たる有様ですが、まあ、これほど凄惨な負傷の中では、それでも良い経過ではないでしょうか?」
マーソ大尉の言葉に、カッセルは短く応じた。
「報償、か」
それならば、下へ降りて報償額の交渉を、と言いかけた相手を遮る。
「私が行こう。歩き回る姿でも見せておいてこそ、貴様らも報われるというものだろう」
やがて治療が終わり、左腕は固定具で吊られた。腕の動きが肩の傷に響かないようにするためだった。
首に紐を回して固定具をしっかり留められると、カッセルは一瞬、この上なく苛立たしげで苦しそうな表情を浮かべた。
しかし、マウリシオがその肩に軍服の上着をかけてやると、何事もなかったかのように船室を出た。
再び、騒々しい歓声が彼を迎えた。
甲板を下り、さらに船の下層へと降りていっても同じだった。
牢に入れられていた者たちも、何やら騒がしい気配が近づいてくるのを察したのか、鉄格子のそばから一人、また一人とそっと遠ざかっていった。
おそらく扉が開いたとき、真っ先に引きずり出されないための彼らなりの知恵なのだろう。
誰も彼もが鉄格子とは反対側を、まるで必死に瞑想でもするかのように見つめている。
その様はいかにも奴ららしかった。
盾型にエスカランテの紋章を刻んだ指輪が、鉄格子をチャリンと澄んだ音で叩いた。
誰もが気まずそうに膝を擦ったり、びくりと肩を震わせたりしながらも、揃って決して振り向こうとはしない。
「バスケス」
「……大佐様?」
カッセルに殴り倒され、全身のあざどころか細かな骨折まで負っていたバスケスは、鉄格子の向こうで目が合うやいなや、「うっ」と奇妙な声を漏らし、尻をすりながら後ずさった。
(この犬畜生が、人の顔を正面から見て『うっ』だと)
俺たちのおかげで片腕を失わずに済んだ
「たかが一、二時間だったとはいえ、とにかく苦労をかけたな」
カッセルは眉間に険しく皺を寄せながらも、まともな言葉をかけて労った。
鉄格子に背を向けて壁に張り付いていた海賊たちが、一人、また一人と顔を向ける。
「軍医が言うには、貴様らのおかげで無事に回復できたとのことだ」
「やっぱり!」
「そうだと思ったぜ!」
「バスケス!」
リーダー格のバスケスを陰で罵っていた者が一人や二人ではなかったことを、カッセルも知っている。それだけに、今さら手のひらを返したように沸き立つ光景は、滑稽きわまりなかった。
「大オルテガの、大エスカランテ大佐様におかれましては、俺たちのおかげで片腕を失わずに済んだということでございましょう!」
牢へ押し込む際に自分たちを散々痛めつけた水兵どもへ聞かせつけるかのように、額の割れた奴が凛々しい大声で叫ぶ。
しかし、すかさずバスケスが怒鳴りつけた。
片腕を失うだの縁起でもないことを言いやがって、
両腕へし折ってやろうか、胴体だけになりたいのか——そのまま頭を叩き飛ばす大騒ぎとなり、彼らの功績を訴える声はすっかり掻き消された。
「うるさい。鼓膜に響く」
「響くとおっしゃっているだろうが!」
「貴様、黙れという意味だったんだ。そのくらいにしておけ」
「かしこまりました」
バスケスの瞳が、希望に満ちてキラキラと輝いた。
——ムリーリョがすべての功績を独り占めするだと?最初からあり得ない話だった。
世の中に、そんな不公平な話があってたまるものか。
腕一本分の価値くらいは
「対価は簡単に計算しよう」
対価。
対価だと。 カッセル・エスカランテの身代金だと。
彼らは今にも心臓が飛び出しそうなほど高鳴る胸を、手で必死に押さえながらカッセルを注視した。
「まず、命の対価まで認めるのは難しい。お前たちが介入した時期が、あまりにも遅かったからな
「……」
「ただ、この肩はお前たちのおかげで助かったとのことだから、腕一本分の価値くらいは算定してやろうと思う」
「……腕一本分の価値、ですか?」
誰かが呆然と聞き返した。
するとバスケスが息を潜めたまま、目にも留まらぬ勢いで囁きまくる。
(高い……。高いぞ。あの方の腕一本の値段は、お前らや俺みたいな奴を千人集めたって足りないくらい高いんだ、早く喜べ、感謝しろ、ひれ伏せ——。)
うるさいお喋り鳥のようなバスケスの演説をじっと眺め、カッセルはやがて言葉を続けた。
「だが、ただで与えるわけにはいかない」
「……」
「お前たちは紛れもない犯罪者だ。そうだろう?」
「……はい? 左様でございますが……」
「証人になってもらわねばならない」
証人が証人だけに、しばらく引っ立てられて殴られることもあるだろうが——そう続けながら、カッセルはまるで話の通じる相手を前にしているかのように淀みなく言葉を継いだ。
「だが、私に殴られたことに比べれば痒い程度だろう。そう緊張するな。
私はお前たちが死んでも構わないと思って殴り飛ばしたが、奴らは証人に死なれては困る。適当に加減するだろう」
「は?」
一人、また一人と、代わる代わる呆然とした声を漏らす。
「お前たちはしばらくの間、金に目が眩んだ上の者の指示であんな真似をした。だがその一方で、私を哀れに思い、生かしてくれた恩人でもあるわけだ」
「『あんな真似』とおっしゃいますと……」
「だから、その功績を加味すれば罪は帳消しになり、
それどころか報償まで与えるべきではないか——そういうところまで持っていくのは容易いだろう。
私の命には、それくらいの値打ちはあるからな」
「さっきは、腕一本分の値段とおっしゃって……」
「巨額の身代金を手にするまでには、楽しい旅路が待っているということだ。そうだろう?」
「……」
「その手間の分を差し引いた。お前たちの価値を、ずいぶん手厚く見積もってな」
そして——バルカという名前だ
バルカ中佐のしたことは、オルテガの軍法上、その場で処分されてもおかしくないほどの罪だった。
だが、証拠もないままカッセルが手を下せば、話は別だ。
——本当に正当な処分だったのか。
——濡れ衣ではなかったのか。
そんな疑念を残すことになる。
しかもバルカは、名目上は大貴族の一員だった。
確かな証拠を探しているうちに時間を失い、
カルステラまで連れ帰って軍事裁判にかければ、今度は複雑な縁故が絡んでくる。
裁判を引き延ばされた末、逃げおおせられる可能性さえあった。
どちらにしても、時間がかかる。
そして今のカッセルに、これ以上無駄にできる時間などなかった。
だからこそ——ここにいる海賊たちだった。
金で雇われ、自分を攫った犯罪者。同時に、自分を生かした者たち。
そして何より、誰の指示で動いたのかを語ることのできる証人たち。
カッセルが冷淡に笑った。
「お前たちが覚えておくべきことは二つだけだ」
何を聞かれても、無条件に「そうだ」と答えること。
「そして——バルカという名前だ」
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この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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