🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・第16-2章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない㉟
恐怖を知った皇帝は、息子を切り捨てる論理を組み上げていく。
決裂する皇帝とカイエターナ、真相を打ち明けるアリシア——
そして宮廷の狂気から遠く離れた場所で、イネスは静かに新聞を畳む。
後継者なら、また作ればいい
たとえ愛する息子であっても、オスカルは自分にとって恥辱であり、
偉大なるオルテガを背負う器ではなかった。
ならば——
まるで自らの腕や脚を切り落とすような思いで、公明正大なオルテガのために息子を見捨てたのだと。そう語ったところで、何が悪い?
ようやく手に入った「鎮圧の大義名分」など、もはや皇帝にはありがたくもなかった。
後継者なら、また作ればいい。
実際にはそれほどの自信もないくせに、皇帝はそう考えた。
今ここで誤れば、次に狙われるのは自分だ。
体面を保つための見せしめは必要だが、それ以上に民衆を刺激する気はない。
死んだ息子のために皇統そのものを危険へさらす価値など、もはやなかった。
——どうせ元凶であるヴァレスティナの女には、煙に燻された跡一つない。
あの魔女のような女に煽られた獣どもには、何を言ったところで通じない。
逆賊。獣。
もはや彼らは、無知ゆえに哀れむべき臣民などではなかった。
次はお前が引きずり出されて死ぬのよ
そのとき、カイエターナがまるで自分を殺さんばかりの勢いで掴みかかってきた。
皇帝は彼女を激しく突き飛ばした。
テーブルへ倒れ込み、頭を強く打ちつけても、カイエターナは顔を上げなかった。
倒れ込んだまま——ただ吊り上がった目だけで、皇帝を睨みつけていた。
「あなたがあの子をそこへ追い込んだのよ!
もう自分では何一つできない状態だと分かっていながら、あの死地へ送り出した!
正気を失っていたとしても、あの子はあなたの息子だったじゃない。どうしてあんな死に方をさせたの!」
皇帝は鼻で笑った。
だがカイエターナは、なおも責め続けた。
「踏みにじられて死んだだけなら、まだましだった」
まだ息子の本当の最期を知らないカイエターナを、皇帝は嘲るように口元を歪めた。
まるでオスカルを一人で産み育てたかのように、
自分には何の責任もないと言わんばかりに責め立てる妻。
込み上げる屈辱に、怒りへ震える手が高く振り上がる。
けれど——
「こんなものまで、エスカランテの血か……」
そう吐き捨てると、その手は力なく下ろされた。
カイエターナは嘲るように、テーブルの上のものを手当たり次第に投げつける。
文鎮が肩を直撃し、皇帝はその整った顔立ちには似つかわしくない悲鳴を上げた。
「”妻”の後を追って死ぬなどと言い出した、あの愚かな子が!
ようやく正気に戻ったと思ったら、逃げ出してしまったのよ……!」
皇帝と皇太子は同じ船に乗り込まないのが皇室の慣例。
二人のうち一人は必ず生き残らねばならぬ——そう弁明する皇帝へ、カイエターナは畳みかける。
カッセルの戦死を知った途端、
震え上がって「オスカルを今すぐ余から遠ざけろ」と喚き散らしたこと。
暴徒が宮廷へ押し寄せ、自分の身にまで危害が及ぶことを恐れたこと。
回復もしていない息子を屋敷の外へ送り出したこと。
これに、自分だけが助かりたかった以外の意味があったのかと。
そして彼女は一文字一文字に力を込め、呪いのように告げた。
「次はあなたよ」
「次はあなたが引きずり出されて死ぬのよ。わからない?」
皇帝は嘲笑を堪えきれなかった。
——だが、その策が実は息子オスカル自身の発案だったと知れば、この女はどうなるだろう。
お前が失ったと嘆いているその息子は、実はお前のことをひどく憎んでいたと知ったら。
「アリシアを捕まえて囁きかけたのは、結局あなたの仕業だったのね」
カイエターナは吐き捨てるように続けた。
自分を追いかけてくる野良犬どもへ、血のついた肉を遠くへ放り投げるように——あなたは自分の息子を、あそこへ投げ捨てただけじゃない、と。
「アリシア!」
カイエターナが、扉の外へ向かって怒鳴った。
彼を救うことができるのは、ただ私だけだと
やがて姿を現した皇太子妃アリシアを見て、皇帝は目を細めた。
確かに引き離しておいたはずなのに、どうやって忍び込んだのか。
アリシアは正気を失っていたオスカルへ薬を飲ませ、使用人へ変装させ、
自らも使用人に扮して宮廷を抜け出した。
その代償は、見るも無惨なものだった。
衣服は引き裂かれ、身体は群衆に殴られた跡だらけ。
けれど、それ以上に痛ましいのは、魂がすっかり抜け落ちたような、その瞳だった。
——自分の命よりも大切だと言っていたくせに。
夫が殺されていく最中に、よくも自分だけ生き残ったものだ。
皇帝が苦々しく見つめると、アリシアの目から涙がこぼれた。
だが、カイエターナと目が合った途端、
泣くことさえ許されないとでもいうように、その顔が恐怖に強張る。
「アリシア。皇帝がお前に、最初になんと仰ったと言ったかしら?」
「……彼の母后さえも……もう彼を守ってはくださらないだろうと……」
アリシアは震える声で答えた。
皇太子を、今や母后様まで見捨てようとなさっているのだと。
彼を救うことができるのは、ただ私だけなのだと。
皇帝が目の前にいるというのに、アリシアはまるでこの場で最も恐ろしい相手がカイエターナであるかのように、彼女だけを見つめながら真相を打ち明けていく。
宮廷を出て、バルカに身を隠しながら時を待てばいい。きっとその時が来ると。
もう一度、オスカル様の子を授かるために——。
かつては、ここまで愚かな娘ではなかったはずだった。
だが皇帝は、カイエターナがまだ彼女を生かしていることのほうに驚いたくらいで、
深く気に留めることもしなかった。
カイエターナの手から助け出してやるには、アリシアはあまりにも罪を重ねすぎている。
それに、カイエターナにも怒りをぶつける相手が必要だ。
彼に残された「最後のエスカランテ」は、もうこの女しかいないのだから。
すべての元凶はエスカランテなのだ。
ならば、その憎しみの矛先まで失わせる必要はない。
「くだらん話だ。このような無意味なことを蒸し返している暇があるなら、お前の息子の遺体をどう収めるかでも考えろ、カイエターナ」
「路上で踏み殺された——そう表現するだけでも、実際にはずいぶん穏やかな言い方だがな」
カイエターナは、何も答えなかった。
ポケットのない経帷子
『天国へ向かう路銀を握る手も、金貨をくわえる口もない、哀れなヴァレンザの使者』
新聞には、そんな皮肉な一文が躍っていた。
『皇太子をあの日討ったのは、デレオンの農民ではない。エスカランテ大佐の比類なき名声と、その正義である。』
『戦死したカッセル・エスカランテ、彼が残したその名だけで、皇室を裏切った兄弟は裁かれた。』
『皇太子の国葬は行われず。皇帝の意向により、追悼も記念事業も見送り。』
『犯人捜査は難航。「自分が殺した」と名乗り出る者が後を絶たず、証言の信憑性は失われている。』
『ドロレス嬢、ミサの最中に倒れる——宙に浮いたままの縁談の行方は。
イネスは新聞を眺めながら、小さく舌を鳴らした。
「死んでまだ間もないのに、もう妹の縁談に話題を奪われるのね」
そう呟くと、それ以上興味を示すこともなく、新聞を丁寧に畳む。
視線だけが、一面へ戻った。
『人は誰しも、いつかはポケットのない経帷子をまとう——我らが皇太子殿下もまた、その例外ではなかった』
朝日を眺めるように、その一文へ一瞬だけ目を留めた。
それだけだった。
やがて彼女は、オスカルという存在を完全に意識の外へ追いやると——寝室へ入ってきたイサベラへ、穏やかな微笑みを向けた。
7巻第16章(16-2章)-了-
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この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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