夜明けから続いたイザベラとの密談を終え、イネスは遅めの朝食の誘いを断って寝室へと戻った。
化粧台の前に座り、髪を解き下ろす。
扉をくぐる直前まで鋭かった瞳が、静かに翳った。
ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。
第15章「人間と獣の時間」15章-⑲|あらすじ
かつての”あの”人生の断片
目を閉じると、断片が浮かび上がる。
カルステラの海、黒い修道服の袖、アロンドラの涙。
あの部屋と、あの時間。
かつてのあの人生で、三、四ヶ月前の日付の手紙を受け取り続けた。
届く便りが教えるのは、彼がその日付の時点で生きていたという事実だけだった。
枕を片付けては、戻した。
花瓶を空にしては、元に戻した。
そうして毎朝、呆然と目覚めた。
結局、あの人生では、カッセルの生死を知らないまま死んだということだ。
「俺は、君が生き続けると信じているから出陣するんだ、イネス。君が生きる地を守らなければならないから」 (引用:原作6巻)
その声が脳に届いた瞬間、イネスは目を見開いた。
深呼吸を繰り返しても、塊のような息が漏れ出した。
ーーこれは、あの時じゃない。
イネスは別の断片を引き出そうとする。
皇太子妃だった時代——かつてのその人生では、カッセルは、ラス・サンティアゴ征伐から無事に帰還した。
パレンシア海戦で肩を負傷したが、生還した。
腕も、最終的には回復した。
(何も起きなかった。特に、ラス・サンティアゴでは)
イネスは繰り返し確認してから、体を起こした。
彼には啓示がある。
確かな啓示がある。
私たちには使徒がいらっしゃる……。(引用:原作6巻)
だから、すべてが違うはずだ……。
謀略の現状
一方、ルシアーノの部下を通じてアリシアに流している薬。
ヴィルゴよりも新しい薬。
それらすべてが、アリシアの手を経由する形で進んでいる。
イネスはその流れを、最も有効な瞬間に逆用できるタイミングを推し量っていた。
使徒の言葉を思い起こす。
「すでに過ぎ去ってしまった人生の未来を、恐れないでください」 (引用:原作6巻)
歩んできた過去は、すでに異なっている。
すべてを変えてみせる。
海からの手紙
布団の上に、茶色の封筒が置かれていた。
『Ines, mi vida.』(イネス、私の命)
カッセルからの、最初の手紙だった。
🌹 5巻で二人は、銃と「最初の人生」の記憶を通してようやく本音を共有しました。
あの「共鳴」の直後に届いたのが、この手紙です。
直前まで冷ややかだった顔に、嘘のような微笑みが浮かんだ。

……本当に、自分一人だけ恥ずかしいことも知らずに……」
イネスは封筒を手に取り、その場に座り込む。
微かに震える指先が、封筒の角をかろうじてかすめるように撫でた。
海軍の紋章の封印をしばらくなぞってから、裏返す。
手紙には、戦場の近況が綴られていた。
天気は晴れ、風は順調。
バイマ産の高価なシガーは残り七本になった——ネズミに盗まれたとあるが、冗談のようなやり取りだった。
残りは皇帝の印章のある金庫へ移した。
毎晩イネスへ宛てて書いた手紙が指の幅ほどに積み上がっているが、エルバ少佐に止められ、今回は一通だけ送ることにしたという。
手紙には、開戦前の閲兵式でイネスが涙ながらに見送った場面を載せた新聞が船に届いたこと。
その新聞を、船室に掛かっていた勅書と入れ替えて額装したこと。
船員たちが前で立ち止まるたびに、追い出していることなどが綴られていた。
イネスはエルバ少佐を猛烈に非難し、手紙をもう一枚めくった。
幸せそうな笑い声を上げながら、ベッドにどさりと横たわった。
手紙を持ったまま、紙面を指でなぞる。
揺れる船上でわずかに乱れた文字。
重い文鎮で強く押された跡。
不意に、長くなってしまった文字数。
『ミ・ビダ——つまり俺の命は、いつだってメンドーサにいる君の手の中にある。
イネス、どうか健やかに。 ラ・マンチャ海上にて。
カッセル・エスカランテ・デ・イネス』 (引用:原作6巻)
カルステラで渡したハンカチと、同じ文字が刻まれていた。
手紙の最後まで読み終えても、イネスは紙面から目を離さなかった。
笑って目元が細まれば、今にもこぼれ落ちてしまいそうなほど、
視界に水分をたっぷりと含んだまま。
📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド
※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
📕 第15章まとめはこちら
→ 出征前夜までの全展開を整理(ネタバレ)
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
・ピッコマ(最新話先行配信)
・めちゃコミック
・LINEマンガ
・comico
📖 原作小説・漫画(韓国語版)について
管理人ロゼは、完結までの物語を見届けた後も、以下の公式配信サイトで大切に作品を追い続けています。
- 原作小説:韓国公式サイト(RIDI)にて配信中
- 原作漫画:kakaopage
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