🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・終章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
終章|風はかつて吹いていた場所へと帰っていく 01
戦場のカッセルから届いていた手紙を、一通ずつ開いていくイネス。
オリーブ色の海、
砂金の輝く浜、
子どもをさらう巨大な鳥——見せたい景色ばかりを書き連ねた手紙には、なぜか四、五通に一度、余計な一文が紛れ込んでいる。
ペンを取ったイネスは線を引き、黒く塗りつぶす。
君の瞳によく似た、オリーブ色の海
『イネス。今日も、心地よい風が吹く一日だ』
手紙は、そんな一文から始まっていた。
今ごろ君は、気だるそうな猫みたいに僕たちのベッドで目を覚ましている頃だろうか——。
カルステラを出港して十二日。もう会いたいと言うには厚かましいだろうか。
だって港を離れたあの瞬間から、ずっと会いたかったのだから。
早く帰りたいと口にするのも同じだ。
出港したその時から、君のもとへ帰りたいと思っていたのだから。
昨日、最初の本格的な海戦を無事に終えたこと。
負傷者はほとんど出ず、修理の必要な戦列艦が二、三隻あるくらいで、
戦果としては申し分ないことが綴られている。
——それから、君の男は傷ひとつなく元気だ。
艦隊はいま、パナベ海を航行していた。
カルステラの深い青とは違い、そこにはイネスの瞳によく似たオリーブ色の海が広がっている。
奇岩や白い砂浜が続き、正午には砂金がまばゆく輝く。
その景色を見たら、君はきっと舌を鳴らすだろう——。
そう思ったら、少し笑ってしまった。
旗艦には絵の上手い砲兵がいて、その景色を描かせてみたという。
それでもカッセルは、「やっぱり本物を君に見せたい」と書いていた。
今朝は、森の頂から流れ落ちる滝も見た。
二日前からは、怪物みたいに巨大な鳥がときどき頭上を飛んでいく。
小さな子どもや山羊までさらっていく鳥なのだという。
いつか君とここへ来ることがあれば、あの鳥に攫われないよう、しっかり抱きしめていないとな。
君が窮屈だと文句を言っても、一瞬たりとも離してやるつもりはない。
イネス。
君は本当に、小さくて愛おしいから——。
「死んでしまいたくなる」に、一本線を引く
「……そうなったら僕は、君が愛おしすぎて、いっそ死んでしまいたくなる——」
その一文を読んだイネスは、すっとペンを取り、「いっそ死んでしまいたくなる」という一節に一本線を引いた。
縁起でもない。
比喩にしたって、どうしていつもこんな言葉ばかり選ぶのだろう。
「君が美しすぎて死にそうだ」
「愛おしすぎて死んでしまいそうだ」
そんなふうに大げさなことばかり言っていた彼を思い返しても、
今のイネスには素直に笑えなかった。
しばらく迷った末、
今度は「忌々しいほど興奮する」という一文にも、そっと線を引く。
世間ではすでに、カッセルは戦死したことになっている。
しかも、その状況を利用したのはイネス自身だった。
もし自分がベルグラーノで命を落としていたなら、この「遺失物」は間違いなく誰かの手で開かれていただろう。
——十中八九、フアンとイサベラに。
息子を失い、嫁まで獄中で亡くしたと思いながら、
形見として大切に開いた手紙に、こんなことばかり書いてあったとしたら……。
流していた涙も、引っ込んでしまうに違いない。
ベルグラーノで死なずに済んで、本当に良かった。
黒く塗りつぶされた言葉たち
そう思うと、イネスは今度こそ容赦がなかった。
「際どい単語」の上を、塗りつぶすように何本も線で覆い隠していく。
たった半年前。
しかも、あの美しいイレ・タシャを眺める穏やかな朝。
愚かなエスカランテが、自分を思い浮かべただけで、下半身がそんなことになっていたのかと思うと、胸を締めつけていた愛しさも涙も、一瞬できれいに吹き飛んでしまった。
どういうわけか、この男の手紙には、四、五通に一度は必ず下ネタが紛れ込んでいる。
あれほど甘い言葉で人を夢中にさせておきながら、何の前触れもなく自分の下半身の話を書き始めるのだから。
家へ戦死通知など届きさえしなければ、きっと自分も、この馬鹿げた文面を笑って楽しんでいたかもしれない。
そう思いかけたが——ホセが戦死の知らせを届けに来たあの日、
息もできないほど泣き崩れていたイサベラの姿を思い出すと、胸が締めつけられた。
あの時、本当に死ななくてよかった。
今は、その安堵だけが静かに胸へ満ちていく。
イネスは残りの言葉も、容赦なく黒く塗りつぶした。
それでも、いつの間にかその表情は、再び愛おしさを滲ませていた。
好きでたまらないのは、一体どっちなのよ
遠征が終わったら、真っ先に君をここへ連れてきたい。
——手紙は続く。
その前に少し掃除は必要だけれど、帰りにはもう少し片づけておくつもりだ。
君の前をうろつくあの私掠船どもは、どれだけ目を凝らしても見つからないようにしておくと約束する。
そして必ず君をここへ連れてきて、
君が僕にだけ惜しみなく笑いかけてくれる毎日を、心ゆくまで味わいたい。
——僕の賢いイネス。
君はいつだって、僕なんかでは追いつけないほど深く豊かな心を持っている。
でも、ときどきその心が、このパナベの海のように澄みきって見える瞬間があるんだ。
君はいつも優しく、気高く、美しく、それでいて可愛らしく、獰猛ですらある完璧なペレスの女性だけれど……
ほんの少し機嫌がいい時は、本当に僕のことが好きでたまらないという顔で笑ってくれる。
まるで、世界をすべて手に入れたみたいな笑顔で。
(そんなに分かりやすかったの……?)
少しだけ自尊心を傷つけられたような気分になり、
イネスは二度と笑うものかと言わんばかりに、両頬をぎゅっと押さえた。
けれど、カッセルの端正な筆跡に目を落とした瞬間、
思わず力の抜けた笑みがこぼれる。
彼は幸せな気持ちで書いている箇所になると、決まって筆圧が強くなる。
まるで、一文字一文字へ想いを押し込むように。
まるで「君も僕のことが好きだろう? ん?」と、
得意げに問いかける彼の声が聞こえてくるようだった。
(好きでたまらないのは、一体どっちなのよ……。)
心の中でそう言い返しながらも、口元には笑みがこぼれてしまう。
——『愛おしくて死にそうだ』
口癖のように言っていたカッセルの気持ちが、今なら少し分かる気がする。
もちろん、自分ならそんな理由で死んだりはしないけれど。
毎日、僕が君の世界でありますように
そんなふうに、世界をすべて手に入れたみたいな顔で、僕を見て笑う君が好きなんだ、イネス。
僕がどれほどその笑顔を愛しているのか伝えようと思ったら、
この世にある美しい言葉を全部集めても足りないだろう。
それでもきっと足りなくて、
結局は君を呆れさせてしまうんだろうけど。
ときどき君が僕へ笑いかけてくれる、その一瞬。
まるで百年も待ち続けていたものを、ようやく手に入れたみたいに嬉しいんだ。
そんなふうに、
世界をすべて手に入れたみたいな顔で僕を見て笑う君が好きなんだ、イネス。
その笑顔をどれほど愛しているのか、
この世にある美しい言葉を全部集めても、きっと伝えきれない。
僕はいつだって君のものなのに、そのことを君が喜んでくれるのが嬉しい。
まるで百年も待ち続けたものを、ようやく手に入れたような顔で笑ってくれるから。
「毎日、僕が君の世界でありますように」
「僕にとって、君が世界そのものと変わらないように」
(もう結婚もして、子どもまで授かっているのに……これ以上いったい、何を口説こうというのよ。)
もう僕には、君以外に美しいものがこの世界にあるのかどうかも分からない。
たとえイレ・タシャがどれほど美しかったとしても、
君がその景色に見惚れている間、僕はきっと君の横顔ばかり眺めているんだろう。
景色が移り変わったことは、君の表情が変わることで知るんだ。
そして今、君の瞳に映っているものがどれほど美しいのかも、
その瞳の輝きで知ることになるんだろう。
(だから、これ以上いったい何を得ようとして、そんなことまで言うの。)
でも、不幸なことに、君は自分がどれほど美しいかを見ることができない。
だから僕が君を見つめている間くらいは、君にも他に眺めるものがあったほうがいい。
——本当に、この人は。
彼の綺麗な顔だけ見ていれば、それで十分だというのに。
たとえカッセルが世界のどこへ自分を連れて行ったとしても。
目の前にどれほどの絶景が広がっていようとも。
きっと二人とも互いの顔ばかり見ているに違いない。
——傍から見たら相当馬鹿な夫婦よね。
だから君には、この世界にある美しいものを全部見せてあげたい。
君が幸せそうに旅をする姿を眺めながら一生を終えられたら、
それだけで十分だ。
手紙は、そう結ばれていた。
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この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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