造船所を焼き払い、海賊の未来ごと潰した男が——今夜、ついに大領主と海へ落ちる。
旧時代の怪物と、新時代の怪物。
カルデロン・エスカランテの孫が、その名を継ぐ夜の話だ。
ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。
第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない」⑨|あらすじ
罠の中へ
ラス・サンディアゴ諸島の複雑な地形は、
外から見れば戦列艦が潜んでいるとは到底思えない迷宮だった。
砂州と大岩、一見して水深の浅いビレサ湾。
常識的に考えれば、いかなる指揮官がその谷間へ自艦隊を追い込むだろうか。
しかし密告者ハイメから海図を手に入れたカッセルは、
その迷宮の隅々まで知っていた。
島々の隙間に29隻の戦列艦を潜ませ、
霧と岩の陰に隠し、小さな諸島の後方まで護衛するように取り囲ませた。
そして囮として7隻のフリゲート艦を送り出し、
一斉射撃の後に切羽詰まった様子で逃走させた。
予想外の火力に虚を突かれながらも、海賊たちは追った。
迷宮の中へ。
殲滅
島々の狭い海路の出入り口に、
岩の背後に城壁のようにそびえ立つ旗艦が待ち構えていた。
無防備な船首を晒して進入してきた最初の一隻に、
数十の砲門が一斉に火を噴いた。
炎が上がり、悲鳴が谷間に響き渡った。
逃げようとした船が暗礁に激突し、海へ飛び込んだ海賊たちが容赦なく狙撃された。
難を逃れて別の航路を探した者たちも、
その先に待ち伏せていた戦列艦に沈められた。
罠は島全体に張り巡らされていた。
どこへ逃げても、次の関門が待っていた。
カッセルの目標は、
水平線に現れた24隻の灯火が、その地点で完全に水没することだった。
11発11殺
船上の銃撃戦が始まった。
海賊たちのラッパ銃は、
訓練も努力もなく人を殺せることへの高揚感で満ちた武器だった。
カッセルはその「努力しない殺人者」たちを、
心底嫌悪していた。
彼は二丁の拳銃で立て続けに11発を放ち、11人を射殺した。
一発につき、必ず一人。
弾薬を詰め込む時間すら贅沢だったためだ。
やがて空になった薬室に弾を込めようとして——面倒になったのか、拳銃を投げ捨てた。
しかし直後、無表情な顔に一瞬の当惑が浮かんだ。
それがイネスから贈られ、自分の名前まで刻んでもらった拳銃だったことを、
辛うじて思い出したためだった。
「……この、クソが……」
彼はまるで別人のように、
自分が投げ捨てた銃を再び大切そうに拾い上げた。
終わった王
敵船に乗り込んだカッセルは、
船底の奥でついにオルランドを見つけた。
白く染まった髪を長く結び、片眼鏡をかけた顔には長い傷痕。
そして右袖は腕のないまま虚しく結ばれていた。
隻腕の老海賊王。
大領主の旗を掲げることも、上甲板に立つこともできない姿で、
間もなく水没するであろう船の奥底に鎮座していた。
腕を失った瞬間、彼の終わりは決まっていた。
海賊社会では、弱った首領は終わりだ。
戦えない者は尊重されない。
ましてや大領主ともなれば、隙を見せた瞬間に領主たちがハイエナのように押し寄せる。
誰が腕を奪ったのか——カッセルには分からなかった。
しかし、大領主がこうして船底に潜んでいる理由は一つしかない。
自分の船員にも、領主たちにも、
その姿を見せられない何かが起きたのだ。
スパニラ家奪還を旗印に南下しながら、上甲板に立つことすらできない男。
信頼される大領主ではなく、隠れなければ生き延びられない男が、ここにいた。
それでも、カッセルが扉を叩いた時——オルランドは逃げなかった。
「お前の祖父を初めて見た時のことを思い出すな」
「衝撃的だった。初めて、自分が何者でもないかのように感じられるほどにな」
(引用:原作6巻)
血に染まった口で、笑いながら言った。
旧時代の怪物と新時代の怪物
二人の戦いが始まった。
オルランドは隻腕でありながら、
レイピアを恐ろしいほど自由自在に操った。
老いた体と死に際の凄まじい力で、カッセルを壁へと吹き飛ばし、
脇腹をかすめ、肩を狙い続けた。
失うものなど何も残っていない者の強さだった。
カッセルは歯を食いしばりながら、淡々と応えた。
「カルデロン・エスカランテが、自分の忌々しい血筋を再び海へと送り込んだと知るまでは、しばらくの間は楽しかった」(引用:原作6巻)
二人は笑い合いながら、互いに殺し合っていた。
名を残す者と、海を継ぐ者
カッセルの指揮棒がオルランドの胸を突き刺した。
しかしオルランドは倒れなかった。
血に染まった口を吐き出しながら、手首を貫通した刃ごと己の体重をカッセルに浴びせ、
最後の執念で肩を抉った。
そして笑った。
「お前がカルデロンの、あの立派な孫の野郎で良かったよ……。」
「お前の命をこのままへし折り、死ぬことになれば——この海で、大領主オルランドの名は死なずに済むだろう」(引用:原作6巻)
これが彼の最後の願いだった。
勝利ではなく、名を残すことだけを。
それは、祝福のようでもあり、呪いのようでもある言葉だった。
海へ
そのとき、狙撃手の銃弾がオルランドの頭を貫通した。
辛うじて維持されていた均衡が崩れ、二人は海へと叩き落とされた。
潮流に引きずり込まれながら深い水底へと沈んでいったカッセルは、
死体の腕を引き剥がし、肩を貫いていた剣を引き抜いた。
目を見開いたまま遠ざかっていくオルランドの死体。
その隙間から真っ赤な血が陽炎のように乱れて立ち上った。
自分の血だろうか。オルランドの血だろうか。
視界が暗くなっていった。
上へと這い上がるために動かしていた腕が、次第に鈍くなっていった。
最後に残る名前
—— イネス……
喉の奥の希薄な空気が、
彼女の名前に辛うじて乗せられた。
荒唐無稽にも、遥か遠くに人魚を見たような気がした。
カッセルは歯を食いしばったが、
やがて目を閉じた。
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(※原作では「第16章-2」に該当。本サイトでは連載の流れを優先し、第16章⑩として掲載していきます。)
📖 原作6巻を振り返る
▶ 原作6巻総括|神は救わない。それでも人は救われていく
📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド
※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
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