第15章「人間と獣の時間」15章-④|あらすじ
邸宅に戻ると、カッセルが使用人たちと共に出迎えていた。
イサベラが「ほらね」と笑う間もなく、イネスは先に動いていた。
カッセルが母親を支えて離れていく。
イネスは、それを静かに見送った。
息子を戦場へ送り出す母親が、残り少ない時間をイネスに譲ってきたことを、彼女は知っていた。だから今日は、イサベラの番だった。
一人になったイネスの思考が、再び動き出した。
アナスタシオ——彼女が断片的に知るその人物は、ある時は異教徒として、ある時は旧教の司祭として、ある時は新教の牧師として現れてきた。
姿を変えながら、時代を渡る者。
一体なぜ……
書斎の机の上の聖書を見つめながら、イネスの頭に、あの記憶が戻ってきた。
過去の記憶の中で、眠っていた彼女の腕にすがり、酒に酔ったオスカルが告白していた言葉。
「だから、私がおじを殺したわけではないと言ってくれ。」(引用:原文6巻15章)
かつてイネスは、エスカランテ公爵の死を「定められた運命」だと考えていた。
医師たちが調べても毒の痕跡はなく、持病が心臓を蝕んでいたのだと。誰も介入できない、巨大な流れの一部なのだと。
しかし今、あの記憶の中でオスカルが口にした言葉は、別のことを示していた。
本来は、もっと長かったかもしれない人生。
神の意志ではなく——誰かの手によって「早められた」死。
それが単なる狂った人間の歪んだ意思だったなら——カッセルの父親を救わない理由はない。
イネスは、エスカランテ公爵の専属侍従であるアルフォンソを書斎に呼んだ。
アルフォンソの表情に、答えはすでに出ていた。
イネスは、アルフォンソに対して公爵の健康状態を医師に伝えるよう促す。
それは、忠誠心を損なわせない形での、彼女らしい静かな説得だった。
沈黙の末に、アルフォンソは頷いた。
その直後、扉がノックされた。
カッセルだった。
どうしてそんなところに立っているのかという問いかけには答えず、遠くに立ったまま、彼女を慎重に観察している。
もどかしくなったイネスが、机から立ち上がって彼の方へ歩いていった。
エミリアーノのネックレスを渡したあの日から、カッセルはずっと慎重だった。
まるで壊れ物を扱うように。
イネスはそれに対して、無理に取り繕うつもりはないと示す。
彼の軽い笑い声が、胸に痛かった。
イネスは彼を、完全に抱きしめた。
「私はもう、あなたと会わないことで、残り少ない時間を無駄にはしないわ。絶対に。」(引用:原作6巻第15章)
この瞬間、彼女はカッセルとの未来を守り抜くための選択をした。
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※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
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→ 出征前夜までの全展開を整理(ネタバレ)