この結婚はどうせうまくいかない 原作7巻第16章-㉘あらすじ|名前だけ空欄のまま【ネタバレ】

この結婚はどうせうまくいかない 7巻16章㉘ イネスとミゲル 名前だけ空欄のまま この結婚はどうせうまくいかない

🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・第16-2章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。

第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない㉘

エスカランテ邸の穏やかな午後だった。

イネスは刺繍をしていた。

私、もう上手でしょう?

イネスは刺繍を陽の光へかざし、満足そうに微笑んだ。

「私、もう上手でしょう?」

「言うまでもございません。お見事です」

ラウルはちらりと視線を向けただけで、忠実な従者らしく即座に褒めた。

どう考えても、見るより先に口が動いているようだったが、
イネスは素直に受け取り、刺繍をもう一度陽の光へかざした。

布にはイサベラが下絵として描いてくれたエスカランテ家の紋章。
その下には、イネスが丁寧に書き写した四人の名前。

実のところ、彼女の刺繍はまだ「カッセル・エ……」と縫った程度に過ぎなかった。

それでも、前回とは比べものにならないほど上達していた。

あの時は、まるで捕まれば死ぬとでもいうような焦りの中で、
ただ針を進めることだけに必死だった。

一針一針、時間を惜しまず刺していく今こそが、本当の実力なのかもしれない。

刺繍で名前を縫うことには、その人の武運を祈る意味がある。

名前だけ空欄のまま

名前の欄だけが空白のまま、
“―― エスカランテ・デ・エスポーサ”という姓だけが、双子二人分並んでいる。

「男の子かしら。それとも女の子かしら」

「それは神のみぞ知ることでございます」

「早く知りたいわ。ちょっとだけ取り出して確認して、また戻すことはできないかしら?」

ラウルは一瞬、
今どんな話を聞いたのか理解できない、という顔で主人を見つめた。

「結局は生まれてくるのですから。時間の問題ですよ」

生まれてみるまで、この刺繍は完成しない。
武運を祈るための名前だけが、まだそこにはなかった。

カッセルの話ばかり

「まだカルステラからは何の知らせもないの? 今回は少し便りが遅い気がするのだけれど」

「『深い水は音を立てない』と申しますでしょう」

「あはは。つまり、大勝ちしているから静かだってこと?」

イネスは明るく笑った。

「本当に頭がいいのよ、カッセルは。その賢さを私の前でも発揮してくれたら、もっともっと愛して、甘やかして、溺愛してあげるのに」

―― 幸せで骨抜きにして、もう二度と戦場へ行こうなんて思わなくなるくらいにね。

新聞には、エル・レデキヤ海軍士官学校への志願者が過去最多を記録したという記事が載っていた。

「大佐殿がおられますからね。憧れる者が増えるのも当然でございましょう」

しかし、だからといって、志願者がいくら増えたところで、ご主人様の代わりになる方などいるでしょうか、と。

「そこが問題なのよ。あれほど替えの利かない人だからこそ……」

ミゲルの告げる言葉

イネスは、不意に言葉を止めた。
閉ざされていた扉が、ノックもなく勢いよく開いたからだ。

「……イネス」

「ミゲル?」

ミゲルらしくなかった。
ただ立ち尽くしたまま、イネスを見つめていた。

カッセルによく似た青い瞳が、みるみる赤く染まっていく。

その瞬間、まるで一本の木から次の木へ火が燃え移るように、
不吉な予感が一気にイネスの胸へ広がった。

「……ミゲル?」

海軍の慣例

「イネス。ラス・サンディアゴから、ホセ・アルメナーラ中尉が来ている」

「アルメナーラ中尉が、どうして今、メンドーサへ……」

「オルテガ海軍が、ビレサ湾の戦いで大勝した」

「それは……良かったわ。でも、どうして彼が……」

ミゲルは息を詰まらせるように、静かに告げた。

「その戦いで――兄さんが死んだ」

「…………」

「上官の戦死を遺族へ知らせる軍の慣例に従って……彼が、君を待っている。」

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▶ 原作6巻総括|神は救わない。それでも人は救われていく


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※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。

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