原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第3巻第8章⑰をネタバレ考察します。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。
カッセルが知っているのは、
妻がある夜、息ができなくなって倒れたということだけだった。
それだけのことで、彼は泣いた。
📖この記事の位置づけ
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あらすじ|人魚と兵士 ⑰
あの夜の経緯をカッセルに話したラウルを、イネスが問い詰める。
しかし、ラウルは譲らない。
ご夫君は知るべきだと。
二人は噛み合わないまま言葉を重ねる。
話の中でイネスは自分の過去——自傷、精神病と呼ばれた四年間、公爵が使った金——を欠陥の目録として並べてみせる。
ラウルが顔を歪める間も、イネスの声は変わらない。
そして最後に告げる。
カッセルが逃げることを恐れているのではなく、
同情したまま身動きが取れなくなることを恐れているのだと。
ラウルが話したのはごく一部だった
ラウルがカッセルに伝えたのは、
過呼吸の発作と、深刻な不眠があった時期があったということだけだ。
自傷のこと、精神病と呼ばれた四年間については何も話していない。
それなのに、
——『君が死ぬかと思ったんだぞ、イネス』
イネスはその言葉を、頭の中に抱えていた。
ラウルに向かって怒りながら、あの夜のカッセルの顔が頭から消えない。
彼は何も知らないのに、既にあんなにも心を砕いていた。
「なぜカッセルまで」
イネスの声色が変わった。
「カッセルはあの四年間とは少しも関係のない人間なのよ」(引用:原作3巻)
ラウルへの怒りは、秘密を話されたことへの怒りではなかった。
なぜそんなことをしたのか。
なぜ、また私のためを思ったのか。
なぜ、あのこととは何の関係もないカッセル・エスカランテまで、
勝手に私の手の内に入れてしまったのか。
イネスの中で、カッセルだけは違った。
あの四年間——刃物と、息のできない夜、精神病という言葉——
ラウルもフアナも、あの地獄を知っている。
けれどカッセルだけは、
あの四年とは何の関係もない場所にいなければならなかった。
それが、もはやそうではなくなり始めている。
一瞬、怒りが頭を食い破りそうになる。
喉が締め付けられた。
それでも奥歯を噛み締めて、息を飲み込む——この状態をラウルは「あの時」の前兆だと思うかもしれない。
その疑念が彼女を引き戻した。
欠陥を並べる声に感情はなかった
四年間、自分の体に刃物を突き立てた。
その傷跡をきれいに消し去るために父が使ったお金。
精神病と呼ばれた記録。
イネスはそれを淡々と並べる。
ラウルが顔をぐしゃぐしゃにする。
イネスのこの冷静さがどこから来るのかを、ラウルは知っていた。
だから余計に耐えられない。
カッセルはまだ何も知らない。
それでも彼は泣いていた。
もし全部知ってしまったら——イネスはそこから先を考えたくはなかった。
なぜそんな目で私を見るの
「カッセルがめちゃくちゃな私に同情したまま、身動きが取れなくなってしまうのではないかと恐れているのよ。貴方みたいに……」(引用:原作3巻)
ラウルはずっとそうだった。
イネスが恐れているのは、捨てられることではない。
同情によって縛られた人間が、もう一人増えることだ。
そしてその相手が、カッセル・エスカランテであることだ。
カッセルはまだ何も知らない。
それなのに。
——『君が死ぬかと思ったんだぞ、イネス』
そう言ってひどく泣いていた。
だからイネスには分からなかった。
なぜそんな表情で。
なぜそんな目で。
自分を見つめさせるようなことになってしまったのか。
▶ 次の話(続き)
→第8章⑱|一週間、ずっとそのことだけを考えていた
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8章「人魚と兵士」は、カンラン石のメダルによって封じられていた記憶が動き出し、
イネスとカッセルの過去が少しずつ姿を現し始める章でした。
2巻全体を通して見ると、ここで描かれていたのは恋愛の進展ではなく、
「白黒だった人生に色が戻り始めること」だったのかもしれません。
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📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画・COMICO | 第38話相当 |
| めちゃコミ | 第39話相当(推定) |