🌹 本記事は『バスティアン』原作106話をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分は原作の表現を引用しています。
バスティアンは、サンドリンを追い返した。
そして翌朝、皇帝から呼び出しがかかった。
取引成立の知らせだった。
拒絶
しがみつくように抱きついてきたサンドリンをバスティアンは突き放し、低くささやいた。
「品位を守ってください、ラヴィエール嬢」
再び近づいてくるサンドリンを押し返す手つきは、それほど荒々しくはなかったので、
よりいっそう冷酷に感じられた。
「僕が求めているのは、気品ある淑女の役目を果たしてくれる妻だ。
娼婦のように振る舞いたいのなら、別の相手を探したまえ」
サンドリンは呆れて声をあげて笑った。
「今さら気取らないでよ。一番下品に振る舞っているのはあなたじゃない!」
「だからこそ、上品な妻が必要だろう? 夫婦そろってそんな調子では困る」
サンドリンは、ラヴィエール家が与えた恩義と、自分の愛情を訴えた。
しかしバスティアンは、それを一蹴した。
「そんな感情ごっこをしたいのなら、別の再婚相手を探せと、はっきり言っておいたはずですが」
投げ捨てられたパジャマを拾い上げたバスティアンが、それを手渡した。
そのとき初めてサンドリンは、自分が何も身につけていない姿であることに気づいた。
「僕は一時間後に戻ってくる。
まさか、ここで再び君に会うようなことはないと信じている」
「どうして私にこんなことができるの!」
「どうか、名家の令嬢にふさわしい知性と品位を証明してください」
一方的な通告を残したバスティアンが、背を向けた。
力が抜けてよろめいたサンドリンは、崩れるようにその場にへたり込んだ。
バスティアン・クラウヴィッツの愛など、最初から期待していなかった。
だが少なくとも、自分は欲望の対象ではあると信じていた。
その最後の自信まで打ち砕かれた衝撃は、あまりにも大きかった。
それでも手放せない愛は、むしろ苛烈な刑罰に近かった。
バスティアンはついに振り返ることなく、寝室を後にした。
使用人たちの朝
「お二人の関係は、本当にただ事ではないようです」
使用人たちの休憩室に戻ってきたメイド長の顔色は、
目に見えて暗くなっていた。
「昨晩も別々の部屋でお休みになっていましたよ。朝食も別々でしたし」
「いくらそうはいっても、ご主人様がご帰国されてからもう一ヶ月近くになりますよ。
実に二年ぶりに再会した若い夫婦が、いまだにそんなによそよそしく過ごしているのはおかしいですよ」
呼び出しのベルが鳴った。女主人の寝室からだった。
「私が行ってきます!」
一人の若いメイドが勢いよく立ち上がった。
モリーだった。
共犯者
オデットは、透明な日差しが降り注ぐ窓辺に立っていた。
ベッドの上に置かれている青いドレスを点検したモリーは、
まず与えられた任務に取り掛かった。
コルセットを着させていた手をしばらく止め、モリーはそっと視線を上げ、オデットの顔色をうかがった。
青白く、美しい顔には、相変わらず何の感情も宿っていなかった。
「もしかして、ご主人様が奥様の裏切りを知ってしまったのではないかと心配で。
私を信じてみてください。奥様の味方になりますから」
モリーは、さらに親しげな態度で彼女を懐柔した。
これまでこの屋敷で働くことができたのは、ひとえにオデットのおかげだった。
モリーの正体を知った後も、オデットは何の措置も取らなかった。
それどころか、自分の世話をするメイドとしてそばに置いているのを見ると、将来を見据えた彼女なりの計算があったに違いなかった。
「実家にご助力を求めるのはいかがでしょうか?
もしかしたら、お互いが助け合える道があるかもしれません」
しっかりと結ばれたリボンを満足げに眺めている間に、オデットが振り返った。
非現実的に澄んで静かだった瞳が、微かに揺れていた。
モリーは歓迎の微笑みを浮かべた。
共犯者と向き合うように。
取引成立
「皇帝陛下から連絡があった。
クラウヴィッツ少佐を寄こすようにとね。
私邸で夕食を共にして話がしたいそうだ」
デメル提督の執務室で、バスティアンは堂々と命令を受けた。
取引成立。
皇帝が彼を求める理由はそれだけだった。
予想よりも早く連絡が来たところを見ると、
取引の成果はかなり満足のいくものだったようだ。
「おめでとう。もしかしたらもう一度特別昇進するかもしれないな」
バスティアンは落ち着いて耳を傾けながら、最善の戦略を考えた。
まずは離婚の意思を明らかにした後、交渉に臨むのが有利だろう。
破綻の責任はすべてあの女にあるようにすべきだ。
離婚理由は汚いほどいいだろうし、
皇帝の罪悪感が大きいほど、素晴らしい報酬が与えられることになるからだ。
制服の袖口をまくり上げて確認した腕時計は、ちょうど正午を指していた。
とても長い一日になりそうだった。
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