🌹 本記事は『バスティアン』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
父の世界を砕き、壊れた子供に別れを告げた。
そしてバスティアンが最初に向かった先は——トリエ伯爵夫人のタウンハウスだった。
四日間の静かな包囲戦と、誰も予想しなかった結末を描く。
招かれざる客
「クラウヴィッツ少佐がお見えになりました」
メイドの報告に、トリエ伯爵夫人は深いため息をついた。
読書用テーブルの祈祷書は、最初のページを開いたまま進んでいない。
バスティアンの訪問は、これで四日連続だった。
留守だという嘘で線を引いても、彼は諦めなかった。
それならば帰宅を待つと、きっかり二時間、タウンハウスの前に立ち続けた。
通行人の視線など意に介さず——まるで門前払いされた事実を世間に知らしめるかのように。
厄介な噂を懸念した伯爵夫人は、二日目からは応接室に通させたが、バスティアンはそこで無意味な待機を続けた。
待ち時間が決して二時間を超えない理由が分かったのは、三日目だった。
「夕食はどうぞごゆっくり、という挨拶を残して帰られました」
——嘘だと知っていながら、ゆっくり食事ができるよう席を外してやる、か。
断られている身でありながら親切を装う、傲慢極まりない態度。
呆れて失笑した伯爵夫人は、ついに命じた。
「お茶を準備しなさい。二杯持って来るように」
三ヶ月近く黙っていた男が、今になって何を企んでいるのか。
確かめる必要がありそうだった。
外出中のはずの伯爵夫人が階段を降りてくると、バスティアンは平然と微笑んで迎えた。
予想より早い屈服だった。
伯爵夫人の短気な性格が、大いに役立ったようだった。
「うまくいきませんでした」
「一体この老いぼれに何の用件があって、少佐の貴重な時間を無駄にしているのでしょうか?」
「伯爵夫人がご推測されている、まさにその用件でございます」
「離婚状でも持ってきたようね」
「妻に会いたいのです、伯爵夫人」
青い目が、井戸のように深く静かになった。
——もうすべて終わったことで、あなたも受け入れたはず。
きっぱり首を振る伯爵夫人に、
バスティアンは司祭の前で懺悔するように、謙虚に本心を打ち明けた。
「そうしようと思いました」
「しかし?」
「うまくいきませんでした」
夕日が白い制服を赤く染める。
オデットはもう安定を取り戻した、気持ちを整理するのが二人を救う道だと諭す伯爵夫人に、
彼は静かに続けた。
「私の過ちが大きかったという事実も否定しません。ですが、伯爵夫人、どんな理由で結婚したにせよ、どんな辛いことがあったにせよ、オデットと私は三年を夫婦として生きてきました。
このような終わり方が最善であるはずがないと私は思います」
一騒動する心の準備をしていた伯爵夫人にとって、まったく予想外の展開だった。
丁寧な脅迫
「もしオデットには、もう他に良い人がいたらどうするつもりですか?」
挑発的な質問への返答は、単調なほど落ち着いていた。
「ジェンダース卿のことでしょうか?」
オデットの行方を探る中で、バスティアンはマクシミリアン・フォン・ジェンダースが、この春から娘とともに別の地域へ移っていることを知っていた。
オデットに損失を覚悟して手を差し伸べる者は少ない。
その一人が、彼女の失踪と同じ時期に動いている。
偶然とは思えなかった。
「もう手を打っているくせに、一体なぜ私を訪ねてきたんだ?」
「その前に伯爵夫人を説得するのが妥当な手順だと考えました」
再び探偵を雇うのが一番簡単なことは分かっている。
だが、そうしたくなかった。
これまで一度も、オデットに対して正しい手順を踏み、
敬意をもって向き合うことができなかった。
だから今度は、オデットが選んだ保護者の許可を得て、正当な形で彼女に会いたかった。
「今週末までは、伯爵夫人に優先順位を置くつもりです」
「その次は?」
「ジェンダース卿を追跡しようと思います。そして、ロスバイン中を隅々まで探し回ってでも、妻を見つけ出します」
「なんてこと、クラウヴィッツ少佐!」
「オデットにも避けられない傷を負わせてしまうような災難が起こらないことを願う気持ちで、伯爵夫人にお願いしているのです」
懐柔というより、脅迫に近かった。
こんな瞬間でさえ丁寧で優雅な態度が、侮蔑感を倍加させる。
どうしてこんな男に心を許してしまったのか。
隠しきれなかった心
ロスバインで会ったオデットを思い出すと、伯爵夫人の悲嘆は深まった。
オデットは決して夫の名前を口にしなかった。
彼の話には単語だけで答え、夫婦間のことは最後まで一言も語ろうとしなかった。
もうすべて終わったことだと貝のように口を閉ざした。
だが、隠しきれない心が現れる瞬間があった。
夫の名前を聞いた時の曖昧な微笑み。
普段らしくない振る舞い。
時々、途方に暮れていた眼差し——世の中をすべて生きてきた老女のようだった彼女が、そんな時だけは実年齢に見えた。
それでも、オデットは実の母ヘレネよりはるかに賢く、冷静な理性を持っている。
自分の人生を尊く思っている子なのだから、傷を克服して生きていけるだろう。
切り離した過去の影を、再び落とすのは愚かなことだ。
「私はもう、少佐と話すことはありません。もうお帰りください」
冷淡に対話の終わりを告げながら、伯爵夫人は算段していた。
隠れ家を移さなければ。
調査には数日かかるはずだから、早めにジェンダース伯爵に連絡を——
ひざまずいた軍神
バスティアンが席を立った。
安堵の息をつく伯爵夫人の前で、
しかし彼はテーブルをゆっくり回り、ソファの横で立ち止まった。
沈黙の中、見つめ合う二人。
本能的な恐怖に、伯爵夫人は生唾を飲み込んだ。
バスティアンが、ゆっくりと身をかがめた。
彼の膝がカーペットに触れて初めて、その行動の意味を理解した。
傲慢な軍神のようだった男が、ひざまずいたのだ。
衝撃が、悲鳴のような嘆息となって漏れた。
「オデットに危害が及ぶことは、決してありません」
呆然とする伯爵夫人にまっすぐ向き合い、バスティアンは口を開いた。
「最善の結末は、オデットと私が直接決められるようにしてください。お願いです、伯爵夫人」
初夏の休暇届
「君が自ら進んで休暇を取るのを見られるとはな。長生きするもんだ」
デメル提督は豪快に笑いながら休暇届にサインした。
バスティアン・クラウヴィッツが休養のために休暇を取る——その噂はたちまち海軍省中に広まり、頭がおかしくなったのではと真剣に心配する将校まで現れた。
「少佐が一人いないくらいで、ベルクの海軍が崩壊するとでも?
こちらの心配はそれくらいにして、さあ行くがいい」
「ありがとうございます。いつもお世話になります」
「それなら、酒を一本買って来い。ロスバイン産のウイスキーは、風味が格別だからな」
敬礼して執務室を出るバスティアンの手には、トランクがあった。
ここから直行するつもりのようだった。
デメル提督は窓辺で葉巻を吸いながら部下の後ろ姿を見守った。
街路樹の緑が茂る海軍省の車道に、初夏の陽射しが眩しく降り注いでいた。
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