🌹 本記事は『バスティアン』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
一年の最後の日。
オデットの誕生日に、送り主のない贈り物が届いた。
24本の青いアヤメと、金貨の形のチョコレート。
贈り主が誰なのか、聞くまでもなかった。
送り主のない贈り物
入浴を終えて戻ると、ベッドは新品のように整えられ、
絶対安静のはずの患者の姿はなかった。
代わりに目に入ったのは、テーブルの上の青いアヤメの花束。
大きなベルベットの箱も一緒だった。
オデットは一目であの花だと分かった。
「奥様への誕生日プレゼントでございます」
メイド長の言葉を聞いて、オデットはようやく山のように積まれた他のプレゼントの箱を見つけた。
ほとんどがバスティアンの人脈からのものだった。
評判が地に落ちたと思っていたのに、この熱意。
これほどの贈り物が届くとは思っていなかった。
彼が健在である証のようで、オデットはひとまず安堵した。
すでに互いを十分に傷つけ、壊した。
オデットはこれ以上借りを作りたくなかった。
カードを整理し、彼が確認できる名簿を残しておく。
おそらく最後になるであろう、妻としての仕事だった。
唯一、送り主の名のない贈り物だけが残った。
花瓶に水を汲みながら、何気なく数えた花は24本。
オデットの年齢と同じだった。
ベルベットの箱には、色とりどりのチョコレート。
そっと取り出した金貨の形のそれは——仕事を見つけた記念に買い、バスティアンから逃げる途中で落として壊れた、あの日のチョコレートと同じものだった。
混乱と戸惑いの中、マルグレーテが吠えた。
バルコニーで、バスティアンが海を見つめていた。
開いたままのドア
指に挟まれたタバコに眉をひそめ、オデットはバルコニーの前まで行った。
——だが、
なかなかドアを開けることができなかった。
ためらううちに彼はタバコを消し、彼女は結局引き返した。
その背中に、澄んだ冷たい風が吹いた。
——バスティアンが、ドアを開けたのだ。
喜んだマルグレーテが先に雪のバルコニーへ飛び出す。
彼は何も言わず手すりへ戻り、ドアは開け放たれたままだった。
勇気を出して、オデットは敷居を越えた。
一晩の雪に覆われた世界は、純白に輝いていた。
「もう、そろそろベッドに戻ったほうがいいわ。風が冷たいわ。あなたは患者でしょう」
「一体、誰が誰を心配しているんだ」
呆れながらも、同情される気分は悪くなかった。
バスティアンはコートを脱ぎ、痩せた肩を包んだ。
首を振るオデットに構わず、ボタンを留め、襟を立てて首筋まで包んでやる。
宙を舞う雪の結晶が、向き合う二人の間を通り過ぎていった。
ここまでです
「あのスキャンダルと事故をうまく解決してくれてありがとう」
一晩悩んで用意した挨拶を、オデットは淡々と口にした。
迷惑をかけて、ごめんなさい。
健康も回復したから、連休が終わったら発ちます——。
「ここまでです」
偽りのない気持ちで向き合って、ようやくわかった。
もうこの男への憎しみや恨みさえ、効力を失ったのだと。
ならば、立ち去りたかった。
逃げるのではなく、連絡を取り合える関係を残して。
子どもの父としての権利を望むならその意思も尊重するからと。
「……ただ、養育は私に任せてほしいのです。もちろん、ラヴィエール嬢の同意が必要になるでしょうが……」
「いや。サンドリン・ド・ラヴィエールは、もう僕の子供のこととは無関係だ」
穏やかなため息が、彼女の言葉を遮った。
「ラヴィエールとの婚約は解消した。
その子を育てたいのなら、僕の妻として生きてくれ、オデット」
よりましな悪
「いいえ、バスティアン。やめてください」
罪悪感からこんなことをする必要はない。
望むのは自由と安らぎだけだった。
同情や責任は要らない。
握り合った両手が震えていた。
罪悪感。同情。責任。
泥沼の中でも崇高な価値を求めるオデットに、
初めて出会った日の記憶が重なり、バスティアンの虚しさは深まった。
「レディ・オデットの目には、僕がそんな理由で犠牲や献身をするような人格者に見えますか?」
皇帝は離婚を命じ、トリエ伯爵夫人が後見人になる。
離婚すればオデットは庇護を受け、切に夢見た新しい人生を始められるだろう。
もう、一人取り残された孤島ではない。
勅書と向き合った瞬間、彼は悟った。
オデットの救済者という絶対的な地位を、剥奪されたのだと。
——僕が望んでいる、オデット。
美しかった。
この女の人生を台無しにする足枷となってでも、掴み取りたかった。
バスティアンは、その歪んだ欲望から、もう逃げないことにした。
僕のものだ。
誰も奪えない。
たとえ皇帝であろうと。
最善の相手になれなくても構わない。
欺き、束縛してでも手に入れる。
彼はオデットを、オデットは子どもを——それぞれが渇望するものを得るのだから、
少なくとも「よりましな悪」にはなれるはずだ。
今年最後の太陽
ノックとともに、ドーラの声が沈黙を破った。
お二人で過ごされる初めてのお誕生日を、このままやり過ごすのは残念ではないか。
簡素にでも、お祝いされては——メイド長は、これまでにない頑なさを見せた。
戸惑って首を振るオデットの傍らで、
バスティアンは沈黙のまま、暖炉の前の椅子に腰を下ろした。
それが返事だった。
窓の向こうの海は、沈みゆく今年最後の太陽の光で、赤く染まり始めていた。
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