何がバスティアンを追い詰めたのか⑭|84話 絶望的な希望 ─ 鍵と、雨降る夜

何がバスティアンを追い詰めたのか⑭|84話 絶望的な希望 ─ 鍵と、雨降る夜 原作本編

🌹 本記事は『バスティアン』原作84話をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分は原作の表現を引用しています。

鍵は右のポケットにある。

理性が消される前に、最後にできた思考だった。
オデットはその鍵を手に入れなければならなかった。

どんな手を使っても。

鍵を取るために

乱れたバスティアンの息遣いが、急速に高まっていった。

まるで土砂降りの雨のように押し寄せる感覚が、理性を侵食した。
バスティアンは最後の自制心さえも手放し、欲望を追った。

意識が遠のく瞬間にも、オデットは目的を忘れまいと必死になった。

かろうじて右ポケットに触れた、その瞬間だった。

バスティアンはジャケットを脱ぎ捨てた。
苛立ちながら緩めたネクタイも、その後に続いた。

もう少しで落としそうになった鍵を固く握りしめ、オデットはバスティアンを押し返した。

「やめて。バスティアン、嫌です!」

しかしバスティアンは気にする様子もなく、
かろうじて身に着けていたものを剥ぎ取った。

「お願いです。どうか……」

さらに切実になった嘆願が、まだ終わらないうちに、
最後のひとつ残っていた下着までもが脱がされた。

かろうじて体をよじって逃げ出したが、
まだソファの上から抜け出す前に捕らえられ、元の場所へ投げ戻されてしまった。

鍵!

オデットは、
いつの間にか拳の間からこぼれ落ちていた金色の鍵を、慌てて隠した。

絶望的な希望

しだいに緩んでいく手のひらに力を込めたオデットは、
まず鍵を安全に隠せる場所を探すため、顔を向けた。

背もたれとクッションの隙間を見つけたその瞬間、下腹部をかすめる息遣いを感じた。

オデットは、恐怖に近い疑問を込めた眼差しで、当惑する光景を見守った。
バスティアンが、大きく開いた彼女の両足の間に顔を伏せていた。

途方もない羞恥心が息の根を締めつけ始めたその瞬間、
バスティアンが目的を表した。

飛び上がるほど驚いたオデットは、鍵を守るという一念さえも手放して身もだえをした。
しかしバスティアンは、さほど大きな力を込めることなく、必死の抵抗を制圧した。

どうしても逃げ道がないことを痛感したオデットは、
いっそ自分の目を覆ってしまった。

枕元に落とした鍵を思い出したのは、荒い息遣いに湿っぽい嬌声が混ざり始めた頃だった。
かろうじて目を開けたオデットは、震えながら手を伸ばし、
握りしめていた鍵を、見つめておいた隙間の間に押し込んだ。

バスティアンは、その作業を終えるまで顔を上げなかった。

—— よかった。

小さく安堵するオデットの唇から、嗚咽のようなうめき声が漏れ出た。

—— これでよかったのか?

自分が何をしているのかという自己嫌悪が、心を砕き始めたその瞬間、
バスティアンが顔を上げた。

最後の懇願

「バスティアン」

オデットは最後の希望を込めて彼を呼んだ。
震える手で顔を覆うと、バスティアンの眼差しが細くなった。

声を上げて泣くことさえできないオデットにできることは、
ただひたすらバスティアンを見つめることだけだった。

怖く、罪深く、惨めな気持ちを込めて。
懇願するように。

読み取りにくい表情をしていたバスティアンは、
乱暴な手つきでオデットの髪を掴んだ。

一度も見たことのない、冷たく乱暴な眼差しがオデットを圧倒した。

—— しかし

息さえまともにできずに震えているオデットをじっと見つめていたバスティアンは、
抑えつけたため息をつき、額を合わせてきた。

痛いほど激しく髪をかき混ぜていた手は、
いつの間にかオデットの頬を優しく包み込んでいた。

「大丈夫です。じっとしていてください」

濡れた目元を拭ってくれたバスティアンが、低くかすれた声で囁いた。

オデットが両立しがたい二つの言葉の意味を理解しようと努めている間に、
バックルを外した彼がズボンの腰を下げた。

オデットがその行動の意味を理解したのは、
彼が明確な目的を追って動き始めてからだった。

オデットの上に乗ったバスティアンが自慰を始めた。
荒くなった息を喘ぐ瞬間も、二つの目は相変わらずオデットを捉えていた。

獲物を貪るかのような執拗な眼差しが、
オデットの羞恥心をさらに深くした。

もうこれ以上耐えられなくなったオデットは慌てて顔を背けた。

しかしバスティアンは素直に引き下がらない。
顎を掴んだ大きな手が、オデットの視線を元の場所に戻した。

目が合うと、バスティアンは笑った。
その図々しい君臨者の顔には、一片の羞恥心も宿っていなかった。

廊下のタバコ

バスティアンは洗面台で手を洗い、乱れた髪型と服装を整えた。

完璧に身ぎれいになった姿でソファへ向かうと、
オデットは力なく横たわったまま、か細い息をしていた。

バスティアンは手に持った濡れタオルで、女の体に残った自分の痕跡を拭いてやった。
驚いたオデットの拒否は黙殺された。

その手つきには、もはや情欲の痕跡は残っていなかった。
極めて淡々とした、いくぶん事務的ですらある態度だった。

「少しの間、席を外していただけませんか」

ソファの下に落ちていた服を拾って渡すと、
オデットは両頬どころか耳たぶまで赤く染めて、呆れた頼みごとをした。

今さら恥じらうオデットを理解するのは難しかったが、
バスティアンはその頼みも快く受け入れた。

服をソファの肘掛けに置き、タバコとライターを持って執務室を出た。

ドアを閉める前、バスティアンは肩越しにちらりとオデットを見た。
熱心に彼の後ろ姿を伺っていたオデットは、
ぎょっとして顔を背け、慌てて服を抱きしめた。

あの女からは決して見られないと思っていた一面だった。

くすりと笑ったバスティアンは、そのまま執務室のドアを閉めてやった。

長い廊下を抜け、窓際の席に座ったバスティアンは、ゆっくりとタバコをくわえた。
勢いが少し衰えた雨が、通りを柔らかく濡らしていた。

看板や街灯、行き交う車のヘッドライトの光が、
雨降る都会の夜に華やかな色彩を与えていた。

普段と少しも変わらない夜だった。
自分が犯した愚かな行いを実感させる光景でもあった。

オデットの準備が終われば、一緒に家へ帰ればいい。

五分。いや、十分くらいか。

ゆっくりと脚を組み直して座りながら、バスティアンは考えた。

準備に時間がかかる淑女の事情を考慮すれば、
少しばかりの寛容さを見せるのも悪くないだろうから。


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