🌹 本記事は『バスティアン』原作93話をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分は原作の表現を引用しています。
観艦式が始まった。
帝国の艦隊が海を埋め尽くし、先鋒艦の船首にバスティアンが立っていた。
オデットは赤く濡れた目で、その光景を見守った。
観艦式
先鋒艦の出航とともに、観艦式の幕が開いた。
100隻にも達する艦艇が海を埋め尽くし、水平線まで艦隊の隊列が続いた。
オデットはこの二日間がどう過ぎていったのか、よく覚えていなかった。
書類を返された瞬間から、時間と空間をまともに認識するのが難しかった。
まるで幻覚の中を漂っているかのような日々の連続だった。
「今日もとても美しいな、オデット」
ハッと驚いて顔を向けると、皇帝と皇后が目の前に来ていた。
「早く夫に会いたいようだな。
これはクラウヴィッツ夫人のためにも、出発を急がなければならないな」
一瞬、眼差しが揺らいだが、オデットはすぐに平静を取り戻した。
そっと微笑みながら視線を落とすと、周囲の笑い声はさらに高くなった。
恥ずかしがり屋の新妻に見せるに十分な姿だった。
この世で一番幸せな女のように。
ただその命令だけを考えていた。
ローザンヌ行きの特急列車を降り立った瞬間から今に至るまで、
オデットを動かし続けてきた原動力だった。
礼砲の発射が終わると、軍楽隊が演奏する帝国の国歌が響き始めた。
先鋒艦の兵士たちは、整然として節度ある動作で皇帝に敬礼をした。
オデットは赤く濡れた目で、その光景を見守った。
バスティアンは船首の甲板に立っていた。
同じ制服を着た数多くの将校たちが並んでいたが、オデットは一目で彼を見つけ出した。
皇帝の観閲艦は速度を緩めず、先鋒艦を通り過ぎていった。
艦艇の甲板の上に立っている兵士たちも、やがて一つの点となって遠ざかっていったが、
バスティアンの記憶はその後も長い間、オデットの脳裏に留まった。
クラウヴィッツ少佐は、海を照らす真昼の太陽のように輝いていた。
一片の陰りもなく。
燦然と輝いていて目がくらんだ。
花が咲いた水曜日の午後2時。
ラインフェルト・ホテルのラウンジで会った縁談の相手のように。
混乱した気持ちに囚われることのあった日々の記憶を、
オデットはもう消すことにした。
バスティアンは、
ただの一度も最初の決定を翻したことはなかったのだから。
馬鹿げた錯覚に陥らなくてよかった。
オデットは数日間続いてきた苦悩に、ようやく終止符を打った。
残された日々は恐ろしかったが、
後悔はなかった。これが最善の選択だったのだから。
英雄の妻への拍手
「さあ、英雄の妻にも拍手を送るのはどうだろうか?」
観艦式が終わりに近づいた頃、皇帝の視線が不意にオデットへと向かった。
突然の状況だったが、オデットは動揺しなかった。
まず恭しくお辞儀をした後、
栄光の日に迎えた主人公にふさわしい微笑みを浮かべた。
謙虚でありながらも屈従的ではなく、
英雄の妻にふさわしい自負心を込めて。
サンドリンの不安
日が暮れると、祭りの明かりがローザンヌを照らした。
甲板の手すりにもたれかかったサンドリンは、煙草の煙を吐き出しながら貴婦人たちの噂話に答えた。オデット、オデット、オデット。どこに行ってもその名前が聞こえてきた。
ある日から微妙に変わったバスティアンの態度が、不安感をさらに募らせていた。まさか、あの女を本物の妻にしようとでもいうのか。
じっとオデットを見つめるサンドリンの眼差しが、
眠そうな猫のように細くなった。
ひどく疲れて見える顔色が、
特有の冷ややかで優雅な雰囲気を一層際立たせていた。
哀れなほどの美人とは。
本当に、最悪の敵だった。
しばらく悩んでいたサンドリンは、バスティアンの方へ向かい始めた。
父と一緒に会社を訪問した日、彼は言った。
遠征に出る前に、ぜひ話したいことがあると。
その時は、再婚に関する話し合いだろうと思っていた。
しかし、もし別の話をしようとしているのだとしたら。
これ以上目をそらすことができない現実と向き合う決心をした瞬間、
バスティアンが振り返った。
「おめでとう、バスティアン。
これからはクラウヴィッツ少佐と呼ばせていただくべきですね」
サンドリンは気兼ねなく手を差し出した。
拒絶される覚悟の挑発だったが、バスティアンは快く握手に応じた。
「遠征は来週だと聞きました。
皆、あなたが心変わりしたと言っていましたわ。
愛する奥様を任地に連れていくそうですが、本当ですか?」
「間違った噂が流れているようですね。何も変わっていませんよ、伯爵夫人」
目を見開いたサンドリンの瞳が、無邪気な喜びに輝き始めた。
「では、遠征に出る前に私とぜひ話したいと言っていた話は、一体何なのですか?」
「イリスとラヴィエールの協力関係について話し合う時間が必要だと考えただけです」
「私たちの約束を確認する場だと考えてもよろしいでしょうか?」
「さあ、どうでしょう」
掴めそうで掴めない、魅惑的な俗物。
サンドリンが愛してやまないバスティアン・クラウヴィッツ、そのものだった。
最後の疑念さえ消し去ったサンドリンの顔に、こみ上げる喜びの微笑みが浮かんだ。
「武運を祈っているわ、バスティアン。
大切な友人の帰還を心待ちにしています」
その場を後にしたサンドリンは、
立ち止まったままでいるオデットの肩を軽く叩いた。
「さようなら、オデット。楽しい時間を過ごしてね」
一段と軽やかな足取りで甲板を横切っていくサンドリンの後ろで、
夕焼けの残り火さえ消えた海は、今や濃い紺碧の闇に染まっていった。
光が美しい、祭りの夜だった。
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