この結婚はどうせうまくいかない 原作5巻13章⑫|ビビアナの訃報——知っていた未来の重さ【ネタバレ】

カルステラの官邸、差し迫る時間の影の中で手を握る二人 この結婚はどうせうまくいかない

原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第5巻第13章⑫をネタバレ考察します。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。


満ち足りた思いのまま官邸に戻った二人に、
衝撃的な報が伝えられる。

「セニョリータ・カスタニャールが、今朝早くにお亡くなりになったとのことです。」

イネスは知っていたはずだった。
ただ、忘れていた。

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あらすじ|帰り道 ⑫

官邸に戻るや否や、アルフォンソが急報を携えていた。
ミゲルの婚約者、ビビアナ・カスタニャールが、今朝亡くなったと。

カッセルは呆然とした。
十八歳。
まだ結婚まで一年あったのに。

カスタニャール伯爵が半年近く肺病を隠し続け、
ミゲルは一度も見舞えないまま彼女を失った。

イネスは知っていた。
ビビアナがいつか死ぬことを。
ミゲルが壊れることも。

しかし青ざめたカッセルの顔を見たとき、初めてその死が実感を伴った。

「だめよ。一緒に行きましょう。」(引用:原作5巻)

イネスはカッセルの手を握り、彼の肩に口づけをした。

考察01|「ようやく誰かが昨日まで生きていて、今日死んだかのように」

イネスはビビアナの死を知っていた。

再び見る世界のあらゆるものを無感覚に受け入れていた当時のイネスには、
ビビアナは、ただ「病気ですぐに死んでしまう女の子」にすぎなかった。
本の中に通り過ぎる登場人物のように。

それが今、青ざめたカッセルの顔を見て初めて変わった。

カッセルを通してミゲルを、ミゲルを通してビビアナを見るように——
ようやく誰かが昨日まで生きていて、今日死んだかのように思われた。

考察02|知ったかぶりの見苦しさ

すべて知っていると思えば、どんなことにも二度と傷つかないでいられるかのように。
自分自身が人間ですらないかのように。
誰も自分の人生を揺るがすことはできないかのように——。

イネスはその感覚の見苦しさを、この瞬間に悟った。

知っているだけで、何もできない。何も変えられない。

ミゲルに終始親切な返事を送りながら、
無情に彼らの結末を予測していた自分。

そしてビビアナの死を始まりとして、
エスカランテ家のすべてが変わっていくことも、イネスは知っていた。

ミゲルが壊れ、エスカランテ公爵が、そして戦場のカッセルが——。
イネスは不安そうにカッセルを見つめた。

考察03|「一緒に行きましょう」

カッセルは言った。
自分が先に出発するから、君は後からゆっくり来てくれと。

イネスは首を横に振った。

イネス
イネス

「だめよ。一緒に行きましょう。」

カッセルの手を握り、肩に口づけをした。

抗うことのできない時間の影が、徐々に二人の頭上に差し迫っていた。
そしてイネスはもう、一瞬たりとも彼の手を離したくなかった。

死にたくないと思った夜から、手を離したくないという今へ。
イネスの中で何かが静かに変わり続けている。

まとめ|手を離したくなかった

満ち足りた思いで帰ってきた官邸で、時間がイネスを待っていた。
知っていたことが、初めて重さを持って届いた。

イネスはカッセルの手を握り、一緒に行くと言った。
抗うことのできない時間の影が差し迫る中で、彼女はカッセルの手を離さなかった。

-13章|帰り道 完-

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