原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第2巻第7章④をネタバレ考察します。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。
「先に捨てるわけないじゃない。」
淡々とした声だった。
カッセルはしばらく、その言葉の意味を測りかねていた
📖この記事の位置づけ
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あらすじ|人にだけ優しい犬もいる④
酔いつぶれたサルバトーレ夫人が応接室で騒ぎを起こした。
夫への呪詛をくり返しながら、イネスの髪をまさぐる夫人を一人で支えていたところへ、カッセルが現れる。
二人は言葉を交わすことなく役割を分担し、あっという間に収拾をつける。
カッセルは、サルバトーレ夫人を肩に担ぎ上げ、夫とともに馬車で送り出した。
パーティーが静かに幕を閉じかけた頃、カッセルはイネスを廊下へ連れ出した。
アナヤ少尉の幼い妻の口から「ついに落ち着いた」という言葉が漏れた後の、短い沈黙の中で。
考察01|「手慣れているのね、あなた」
酔った女を肩に担ぎ、片腕で状況を制圧し、礼儀正しい紳士の顔のまま応接室を出て行くカッセル。
それを見ていたイネスが、純粋な感嘆の声を上げた。

「本当に、女性と関わることなら何でも上手いと思ったから。」
カッセルには、この言葉がすんなり受け取れなかった。
妻の前で酔った女を抱きかかえている状況で言われる賛辞として、あまりにも素直すぎた。
嫌みとも取れる、怒りとも取れる言葉——。
しかしイネスの表情には、そのどちらもない。
彼女が本気でそう思っているように見える。
それがかえって、カッセルを苛立たせた。
考察02|「挽回できることは何もない」
廊下に出てからも、カッセルはイネスの腰を掴んだまま離さない。
暑いから離して、とイネスが言うも、カッセルは離さなかった。
アナヤ夫人の「ついに落ち着いた」という言葉は、言うまでもなく結婚前のカッセルの行動を揶揄するものだ。
場に小さなぎこちなさが残る。

「離してしまったら、挽回する機会もないから。」
「時間を巻き戻さない限り、あなたが挽回できることは何もないわ。」(引用:原作2巻)
それは突き放した言葉ではなかった。
ただ事実だった。
過去は変わらない。
彼がかつてどう生きていたかも、変わらない。
イネスはそれを知った上で、カッセルと結婚した。
しかしカッセルには、
「お前みたいなやつと結婚したせいで一生耐えなければならない」——そう聞こえた。
彼の握力から、少し力が抜けた。
そしてすぐに、また引き寄せた。
考察03|差し出す側と、受け取らない側
サルバトーレ夫人が泥酔した時、イネスは内心で思っていたこと。
破局寸前の夫婦。
美しい顔。
この軍港という特殊な環境。
条件は十分に揃っている、と。
だからカッセルが夫人を片付けた後、イネスは言った。
綺麗だし、と。
嫌みでもなく、ただ本心だった。
しかしカッセルは「君のほうが綺麗だ」と答える。
「君の方がずっと綺麗だ。一番綺麗だった。今日だけでなく、いつも、毎日——」
(引用:原作2巻)
苛立った口調だった。
褒め言葉なのに、そう聞こえなかった。
イネスが差し出したものを、カッセルは一切受け取らない。
なぜ受け取らないのか、彼自身はまだわかっていない。
考察04|この風景をあなたに見せたかった
夕焼けがテラスを染めた頃、アセベド夫人が言った。
「エスカランテ大尉は、この風景をあなたに見せたかったのよ。」(引用:原作2巻)
カッセルは結婚する直前に、司令部近くにあった大きな官邸を手放した。
そしてこのロゴルーニョの丘の上の、小さな家を手に入れた、

まさか。そんなはずはない。
カッセル・エスカランテがまさか、
これほどまでに純粋で愚かなことをするはずがない——。
しかし、庭の上に広がる海を眺めながら、その言葉だけがしばらく消えなかった。
知ることと、信じることは違う。
イネスはこの瞬間、どちらの側にも踏み込めないまま、夕焼けの中に立っていた。
「先に捨てるわけないじゃない」
カッセルが
「もしこれより不細工になったら、捨てるのか」と緊張しながら尋ねる。
「私があなたを先に捨てるわけないじゃない。」(引用:原作2巻)
この結婚を捨てるのは、彼がすべきことだ——イネスの中にある、揺るがない前提だった。
しかしカッセルは、その前提を知らない。
彼が聞いたのは、捨てない、という言葉だった。
その言葉を聞いた瞬間、固まった。
そして目を瞬かせた。
そして、遠くからバルカ中佐が歩いてくるのをイネスが認めた瞬間、
彼女はカッセルの顎に唇を押し当てた。
それは計算だった。中佐の目をかわすための、素早い判断。
カッセルは石のように固まった。
この夜、カッセルの寝室では別の話が始まっていた。
イネスを「監視」していた者の告白と、嫉妬という言葉の発見。
カッセルが自分自身の感情に初めて名前をつけようとする夜が、次回⑤で描かれます。
📚この記事を読んだ方へ
▶ 次の話(続き)
→原作2巻7章⑤|傷という言葉——カッセルの中に残ったもの
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📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画・COMICO | 第30〜31話相当 |
| めちゃコミ | 第31〜32話相当(推定) |