オスカルとの対峙から二日。
イネスは今もベルグラーノにいた。
そして奇妙なことに——穏やかだった。
ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。
第16章「川はみな海に注ぐが、海は満ちることがない⑳|あらすじ
不可解なことに、ベルグラーノではすべてのことが順調に進んでいた。
閉じ込められている身の上で、大して良いことがあるわけでもなかったが——ただ、適当に時間を潰す必要のあるイネスは、鉄格子の内側で非常によく眠り、非常によく食べた。
それが最近の彼女にとっては、あまりにも見慣れぬことであったため、ふとこのような考えも巡らせてみた。
(もしかして、監獄が体質に合っているのだろうか?)
肉が食べたい
最も大きな変化は、
久しぶりに食事らしい食事を拒否感なく食べられるようになったことだった。
それどころかイネスは、
ほとんど半年ぶりに己の意志で「お肉が食べたい」と口にして、食べることまでした。
パノテについて知って以来、エスカランテ邸のど真ん中においてすら、目の前の食べ物を信じることができなかった長い時間。
リンゴをほんの少しずつかじって持ち堪えてきた日々。
どれほど長かったことか……
それがいつの間にか、終わっていた。
イサベラの経験に照らし合わせれば、それは胎児であった頃のカッセル・エスカランテの偏屈な好みであったらしい。
私の夫はどれほど自己主張が強いのか。
(カッセル・エスカランテの分際で、見かけによらずそれほどまでに手のかかる赤ん坊だったとは……) (引用:原作7巻)
一方で、それほどまでにカッセルに似た子供たちが生まれてくるだろうという期待に、
胸が膨らんだ。
そのせいで早くも得意満面な気分になるほどに。
エスカランテの貴賓、御三方
変化をもたらしたのは、セラーノ子爵の一言だった。
双子を妊娠しているという話を聞いた子爵が、激しく驚きながら言ったのだ。
「いやはや、生きていれば、エスカランテの貴賓を一度に御三方もお迎えすることになるとは……!」(引用:原作7巻)
その言葉を聞いた瞬間、不思議なことに胸の中の不安が和らいだ。
時として、言葉の力というものは偉大だった。
もちろんおべっか使いの、大袈裟な言葉にすぎないことだと分かっていた。
それでも、その一言は不思議なほど深く胸に残った。
まるで、まだ見ぬ未来がすでに形を持っているかのように。
ちなみに子爵は感激のあまり、
自分の官舎から絨毯やカーテンを運び込み、監獄の一角を居心地の良い空間へと変えていった。
しまいには行政官の官舎に何が残っているのか分からなくなるほどだった。
私たちは……
イネスはカッセルに向けて、送る予定もない手紙を書き綴った。
『私たち、もう三人なんですって、カッセル』(引用:原作7巻)
イネスは、自分がまだ出会えていない『私たち』を思うとき、
自分を四分の一にも満たない存在のように感じていた。
だから、「もう三人だ」という言葉は思いがけず彼女を救った。
そうして書き続けながら、硬いお菓子を手に取ってボリボリと噛み砕いた。
どれほど多くのものが食べたいのか、妊娠を今ようやくしたばかりのようだった。
実は、イネスは最後に胸の上に長く刻まれた自傷の傷を縫合する時、
疲労と苦痛に耐えかねて気絶した。
どんな薬であれ、お腹の子供のことを考えれば、これ以上口にすることはできないと、鎮痛剤から患部に直接麻酔作用をもたらす強い外用薬に至るまで、ことごとく拒否し、そのまま生身のまますべて縫い合わせたせいだった。
不思議なことに、そうして死んだように眠り、
再び目を覚ました瞬間、我慢できないほどに腹が減っていた。
それからは、食べたいものが次から次へと頭に浮かび上がってきた。
(これもまた、カッセル・エスカランテに似たからに違いない)
イネスは、自分に気に入られる機会を虎視眈々と狙っているセラーノ子爵に、
喜んでその機会を与えてやることにした。
セラーノ子爵は嬉々として食料を運び込んだ。
早く四人になりたいわ
『あの子たちを当然の存在のように捉えると、ベルグラーノのど真ん中にいても心が安らぐわ』(引用:原作7巻)
子供たちが自分のところへ来る日。
カッセルが戦場から帰ってくる日。
彼女にとって「私たち」は、まだ遠い未来にあるものだった。
だから時々、途方に暮れてしまうこともあった。
夢から覚めた時、
まだカッセルが帰ってきていないことの方が夢のように思えたから。
けれど今は違う。
そして最後に、イネスは書き残した。
『早く四人になりたいわ、カッセル。
私たちは本当に、完璧な四人になるはずなのに……』(引用:原作7巻)
世に放たれた供述書
セラーノ子爵が、どこか落ち着かない様子で一枚の新聞を差し出した。
—— そこには、衝撃的な大見出しが躍っていた。
『エスカランテ小公爵夫人、皇太子殿下の寝室で血まみれで発見される』
『皇太子殺害未遂容疑でベルグラーノに投獄中』
『胸、腕、脚を負傷』
『実態は強制的に服を脱がせようとした痕跡が歴然』
このようにイネス自身の供述が容赦なく紙面を埋め尽くしていた。
イネスはそれを静かに読み流した。
自分が望んだ通りの結果だった。
ただ、一つだけ気になった。
——ルシアーノが、ここまでやるだろうか。
メンドーサの大炎上
「セニョーラ・エスカランテ!」
セラーノ子爵の切迫した声がした。
鉄格子の窓の外を見ると、
たいまつがぎっしりと連なる長い行列が見えた。
セラーノ子爵は落ち着かない様子だったが、
当のイネスは、「そう言われてみれば、何かが聞こえるような気もします」と答える程度だった。
「メンドーサから、憤怒した群衆たちがこちらへ向かって来ています。本日、メンドーサが完全にひっくり返ったそうです」
「濡れ衣を着せられた、エスカランテ大佐の妻を救出するための暴動とのことです」
(引用:原作7巻)
外の世界はすでに燃え上がっていた。
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📖 原作6巻を振り返る
▶ 原作6巻総括|神は救わない。それでも人は救われていく
📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド
※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
・ピッコマ(最新話先行配信)
・めちゃコミック
・LINEマンガ
・comico
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管理人ロゼは、完結までの物語を見届けた後も、以下の公式配信サイトで大切に作品を追い続けています。
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