🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・終章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
※地名・人名について:本作には現時点で原作小説の公式日本語翻訳版がないため、地名・人名などの固有名詞は原文をもとに当サイトで日本語表記しています。今後、公式日本語版で異なる表記が採用される可能性があります。
終章|風はかつて吹いていた場所へと帰っていく 08
沈み切ったカッセルが再び立ち上がる。
今すぐメンドーサへ戻ると言い出した上官を、マウリシオは弱点を的確に突いて引き止める。
そして議論の最中、カッセルはもう一つの不可解に気づく——なぜ自分は、生きたまま帝国の南端まで流れ着いたのか。
さらにマウリシオには、ずっと伝える機会を窺っていたことがあった。
幸い、どちらもご無事だそうです
「……あの、念のためお伝えしておきますが——」
マウリシオが恐る恐る口を開いた。
「夫人と、お腹のお子様は——幸い、どちらもご無事だそうです」
「……」
むしろその事実が明らかになったことで、皇室に対する世論は一気に悪化した。
宮殿の前では、皇太子の廃位を求めるデモまで起きたのだという。 自分の妻も使用人たちに賃金を払い、屋敷の仕事を休ませて、夫人の裁判に反対するデモへ参加させた。
それほどまでにメンドーサ中が大変な騒ぎに——。
「メンドーサへ行くぞ」
カッセルは濡れた顔を乱暴に拭い、そのまま立ち上がった。
その顔は、先ほどよりさらに殺伐としていた。
夫人は果たして、夫を許してくださるでしょうか
マウリシオが慌てて首を振る。
「大佐。マレバ本島には、あと最低でも一、二週間は留まらなければなりません。お分かりでしょう。新たな大領主との行政体制の調整、隠されていた鉄鉱山、戦利品の帰属——まだ何ひとつ片づいておりません」
「分かっている。そこはお前と何人かに任せる」
「いえ、信用していただけるかどうかの問題ではありません」
「なら、船を一隻だけもらう。私は行かなければならない」
「もうメンドーサへ使者を送られたではありませんか!」
「戻らなければならない。今すぐに」
そんなことをすればバルカ中佐に最後の征服の功績をすべて横取りされる、降伏文書が出るたびにあの男が自分の印を捺そうとしてくるのだ——マウリシオは必死だった。
知ったことか。 カッセルは冷淡な目を向けただけだった。
バルカ中佐がこの時期になって突然戦線へ加わった理由など、考えるまでもない。
まもなく凱旋する艦隊の功績に、自分の名前を滑り込ませるためだ。 しかも、戦争をほとんど終わらせた総司令官が姿を消した。
バルカにしてみれば、神が味方したとでも思っていることだろう。
「せっかく死線を越えて、生きて戻られたのです」
マウリシオは食い下がった。
出征前から計画されていたことも、これが最後だと。
ここで放り出せば、たったそれだけのことで『エスカランテ大佐の功績など、これまで大げさに膨らませていただけだ』と言う者が必ず出てくる。
「そうなれば、この間メンドーサで、夫人が大佐のために守り抜いてくださったものまで、すべて無駄になってしまいます」
カッセルの表情が止まった。
「それが分からないとは、おっしゃいませんよね」
マウリシオは、よく分かっていた。
——上官の弱点が何なのか。
それこそが、こいつの狙いだ。
カッセルが神経質そうにマウリシオを睨む。
「しかも夫人は、エスカランテ家の大切な後継ぎを身ごもった身で、今回の苦難を夫もいないまま、たった一人で耐え抜かれたのです」
「……」
「それほどまで一人にしておいた理由が、最後の最後でこんな形で投げ出すためだったと知れば——夫人は果たして、夫を許してくださるでしょうか?」
「……よく言う」
よくもそこまで人の弱みを突けるものだ。
バルカ、か
マウリシオはさらに食い下がった。
「それだけではありません。後方の補給船に乗って、最後になってやって来た老いぼれに、『この戦争の立役者は自分だ』などと言わせておくおつもりですか?」
「長くても半月です。あと半月だけ——」
「ここでさらに半月も潰せば、オルテガへ戻るまで一ヶ月以上かかる。その頃には風向きも悪くなる」
「大佐はまだご存じないでしょうが、そもそもヴィダ・ヌエバで起きた事件は、皇太子妃が自ら仕組み、夫人を皇太子へ差し出そうとしたという見方が、今では圧倒的です」
カッセルの目が止まった。
「バルカ中佐は、皇太子妃の叔父ではありませんか」
皇太子妃が事実上失脚したも同然とはいえ、ここでバルカ中佐が戦功を手にして帰還し、そのまま昇進でもすれば——『夫を失った皇太子妃』にも同情が集まりかねない。
まして今は、皇太子が死んだことで、世間の関心が彼女から逸れ始めている時なのだと。
カッセルは右手の指輪で、テーブルをトントンと叩いた。
しばらく考え込んだ末、低く呟く。
「……バルカ、か」
その名を口にした瞬間、別の疑問が浮かび上がった。
——スパニラ近海から、ガンベラまで。
考えてみれば、あまりにもおかしい。
渦潮に巻き込まれてどこかへ漂着したのなら、
本来は周辺に点在する数十の島のどれかへ流れ着くはずだ。
仮に運悪く、さらに大きな潮流に呑み込まれ、遥か南のガンベラまで流されたのだとしても——ブルゴスの残党が見つけた頃には、とっくに死体になっていなければ辻褄が合わない。
だが実際には、数時間もしないうちに陸へ流れ着いた。
だからこそ、まだ息があったのだ。
肩に大きな穴が開いた状態で、何時間も海水に浸かっていたなら、生きていられるはずがない。
テーブルを叩いていた指が止まった。
帝国の南端にまで、自分が生きたまま「自然に」流れ着いた。
その不可解な出来事の理由が、ようやく見えた気がした。
——バルカ。
エスカランテ夫人から、手紙が届いております
「……それから、ずっとお伝えする機会を窺っていたことがあるのですが」
カッセルは煩わしそうに、部下を見ることすらしなかった。
視線はテーブルの上——丸められた新聞の切り抜きと、
その隣に大きく広げられた海図に釘付けになっている。
それを睨む目は鋭かった。
だがマウリシオも、今さら怯むような立場ではない。
『盗賊どもの馬鹿げた企みに振り回されている暇があるなら、本島でも守っていろ』——そう命じたバルカ中佐に逆らい、独断で旗艦を含む戦列艦五隻を引き連れて、ここまでやって来たのだ。
カッセルが生きていた以上、もはや艦隊を「盗んだ」ことにはならない。
昨日から散々肝を冷やしてきたのだ。今さら何を恐れることがある。
「エスカランテ夫人から、手紙が届いております」
「……」
「大佐宛てです」
カッセルが、ゆっくりと顔を上げた。
「……何だと?」
「最初は、戦死の知らせを受け取られる前に書かれたものだと思いました。ですから、私も胸が痛みまして……」
マウリシオは続けた。
「ですが、違いました」
「……」
「メンドーサに大佐の戦死の知らせが届いたあと、夫人は自らその報せを週報に掲載させたそうです」
そして——その翌日。
「カルステラにいるノリエガ大佐のもとへ、この手紙を送られたのだと。戦場にいる夫へ、誰にも知られぬよう届けてほしい、と」
カッセルは何も言わなかった。
つまり——。
イネスは、カッセルが死んだと知らされたあとで、カッセルへ手紙を書いたのだ。
「それを聞いた時は、ああ、これもまたあまりにも悲しい話だと——あまりにも悲しくて、現実を受け入れられずにおられるのではないかと。そう思うと、私もひどく胸が痛んだのですが」
「お前の胸の痛みなどどうでもいい。手紙はどこだ?」
「まあ、少しお聞きください……。
そう思っていたのですが、ふと、それまで無視していたムリーリョからの接触を思い出したのです。まるで啓示でも受けたように……」
そう言いながら、マウリシオが懐からイネスの手紙を取り出そうとする。
カッセルはそれを素早く奪い取った。
だが、封を開く時だけは驚くほど慎重だった。
だって、あなたが生きていることを知っているもの
『カッセル。
この手紙を開いている今、あなたがどこにいるのか気にかかるわ。 今頃メンドーサで私がどうしているのか、そればかり考えて——何か変なものでも拾い食いした犬みたいに、どうしていいか分からず船室をうろうろしているあなたの姿まで目に浮かぶけれど……。
私はとても元気にしているわ。
だって、あなたが生きていることを知っているもの。
あなたの食いしん坊な子供たちのおかげで、夫を亡くしたばかりの女にはとても見えないくらい、顔色までふっくらしているのよ』
「つまり——。」
マウリシオが言った。
「夫人が、大佐を救われたということです」
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この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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