この結婚はどうせうまくいかない 原作6巻第15章-②あらすじ|教会で見かけたのは……答えを求める相手

この結婚はどうせうまくいかない|6巻15章①あらすじ この結婚はどうせうまくいかない

第15章「人間と獣の時間」15章-②|あらすじ

メンドーサ教国の待合室に、静かな時間が流れていた。
大司教の祈りが長引いているという。
イサベラは息子の指揮棒が入った箱を膝に乗せ、ただ待つ。
その隣に、イネスがいた。
ついてこなくてもよかったのに、というイサベラの言葉に、イネスは一人でいるのが退屈だっただけだとさらりと返す。

言葉の裏にある、本当のことは言わない。


カッセルの出征が近づいている

ミゲルとの一件以来、イサベラは口数が減り、家の中で誰にも心の内を見せられなくなっていた。
それを知っているのはイネスだけだった。
イサベラは「大丈夫?」と問う代わりに「大丈夫ね」と言い、
イネスは「大丈夫ではありません」と言う代わりに「大丈夫ですよ」と返す。

互いに分かり合っていながら、互いを傷つけないために、反対の言葉を使う二人。

イネスは、自分が会いたければ、官邸で大人しく待っているとさりげなく言い、姑の手を一度しっかり握ってから、そっと離す。
イサベラは静かに笑った。


やがて話題は、思いがけない方向へと移っていく。

イサベラは、イネスが時折自分を不足しているかのように語る点を指摘する。
その言い方は穏やかだが、内容は率直だった。

かつて若き日のイサベラ自身もそうだったのだという。
愛を悟った途端、相手が大きく見えて、自分が小さくなる——そんな法則があるのかと思うほどに。

愛は、成就するよりも続けることの方がもっと難しい。
エスカランテ公爵夫妻の間に流れる、あの奇妙な距離感の正体、
イネスは、その関係の在り方に触れたように感じた。

彼らにも、遠い昔に「一時期」があったのだと。

「たった一度きりの人生が大切でしょう?」(引用:原作6巻15章)

その言葉を、イネスはしばらく胸の中で転がした。
繰り返してきたはずの人生で、それでも同じ人生など、一度もなかったのだと感じる。


重くなりかけた空気を、イネスは自ら変えた。
フアナに目配せをして、取り出させたのは、小さな刺繍枠だった。

ぐちゃぐちゃになったハンカチ。
「Carc」まで、かろうじて文字の形をしているもの。

ハンカチを六枚ほど捨てた末に、ようやくここまで来た。
くだらない”迷信”だと思っていた——それが本音だった。

けれど出征が近づくにつれ、「それでもやらないよりは」に変わっていた。

久しぶりに、イサベラの表情に生気が戻る。
あの子はきっと泣くだろうという話になり、
泣いたら拭いてあげればいいと軽くやり取りが続く。

イサベラが笑い、フアナが笑い、そうして三人の間に、しばらく柔らかな時間が続いた。

その最中だった。
大司教の謁見室へと続く回廊を歩きながら、イネスが何気なく庭園に目をやった瞬間——

黒い法衣、銀髪を整えた横顔

メルセデス通りで見た、あの司祭が、そこにいた。
心臓が跳ね上がった。
喉が締め付けられた。

イネスは足を止める。
呼ぶべきではないと分かっていながら、声が出そうになる。

彼に、罪を犯してはいけない。
無礼を働いてはいけない——。

謁見室の扉が開く。
イネスはイサベラに後から向かう旨を伝え、その場に留まる。

そしてフアナの腕を掴み、あの司祭の名前を調べるよう伝える。

目が合った、その瞬間——イネスは体を翻し、謁見室へと入っていった。

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📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド

※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。

📕 第15章まとめはこちら
→ 出征前夜までの全展開を整理(ネタバレ)

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