エスカランテ家では久しぶりに大規模な宴が開かれた。
表向きはラボキヤ王国との戦勝を記念し、ラス・サンティアゴ諸島への上陸を目前に控えた帝国海軍を応援する場だった。
しかし、これはただ酒に酔いたいだけの宴とは質的に異なる場だった。
イネスは演壇から降りてくるフアンを、満足げに見つめた。
数ヶ月の病床で多少痩せ細り青白かったが、もともと備わった骨格と体躯はまさしくエスカランテのそれだった。
傍らに立っていた皇帝よりも、よほど健在に見えた。
エスカランテ公爵の死亡説を、これで十分に一蹴した。
ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。
第15章「人間と獣の時間」15章-㉒|あらすじ
ミゲルと宴の場
カッセルの代わりにパートナーとして同伴していたミゲルは、
久しぶりの場に少し強張っていた。
イネスはミゲルの腕を組んだまま、料理が並ぶ場所へと導いた。
朝から何も食べていないミゲルの口へ、有無を言わさず食べ物を押し込む。
慌てて周囲を伺うミゲルの顔が、一瞬にして赤くなった。
ミゲルは溜息をつきながらも、結局すべて食べた。

「あなたの兄に代わる第一の義務は、
あなたが健康になることよ」
皇帝の青ざめた顔と、ミゲルへの贈り物
やがてメインホールでは、皇帝が後援する軍需会社の新型銃器の実演が始まった。
空高く掲げられた長銃が発射された瞬間、銃弾が連続して頭上を通り過ぎ、細長いホールの後方の標的に命中した。
セニョールたちが感嘆する中、イネスはミゲルの肩に顔をうずめて笑い声を漏らす。
遠くで皇帝が蒼白な顔をなで下ろしていた。
狩場でもない場所で銃が抜かれれば
「暗殺だ」「反逆だ」と狼狽える——そういう御仁だとイネスはよく知っていた。
貴族たちに武器を売りつけたいと願いながら、
いざその武器を私兵が持つ姿を想像して忌々しさに身を震わせる。
息子である皇太子が父皇を恐れ、父皇が息子を警戒する——その妄想と疑念は、鏡のように似通っていた。
積み上がった注文書はすでにかなりの利益を示していた。
イネスはミゲルの名前で受領証書を作らせ、銃を一丁贈った。
いつか十四歳のカッセルが、
自分のために祖父の銃を手放したことを思い出しながら。
ミゲルに何かを贈るのは、
幼い日の彼に何かを報いるような気分がして心地よかった。

「将来出世したら、義姉のことを忘れないで」
一方、宴が始まってからずっと、オスカルの視線がイネスの顔に注がれていた。
ミゲルが時折、意図的にその視線を遮るように立ってくれていたが、
いつもその場しのぎに過ぎなかった。
ようやくオスカルが母后と共にホールを出て行くのを見届け、イネスは一息ついた。
誰にも言葉を挟ませないよう、
合わせてくる視線をことごとく無視しながら、歩を進めた。
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※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。
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