🌹 本記事は、『この結婚はどうせうまくいかない』原作第7巻・終章をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分や必要な箇所では、原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
※地名・人名について:本作には現時点で原作小説の公式日本語翻訳版がないため、地名・人名などの固有名詞は原文をもとに当サイトで日本語表記しています。今後、公式日本語版で異なる表記が採用される可能性があります。
終章|風はかつて吹いていた場所へと帰っていく 09
カッセルはイネスの手紙を何度も読み返す。
ヴィダ・ヌエバのことも、ベルグラーノのことも、そこには一言も書かれていない。
まるで本当に何もなかったかのような軽やかな文章——最初は強がりだと思った。
だが四度目に読み返した時、彼はようやく気づく。
父上が?
『それなのに、みんなして私を気の毒がっているの——』
イネスは手紙に、家族から十分すぎるほどの愛情を注がれていること、周囲からは自分が少しおかしくなったと思われているらしいことを綴っていた。
そして、悲しみに沈むイサベラを気遣い、帰ったら母親にうんと優しくするようカッセルに念を押す。
手紙はさらに、フアンの話へ移った。
『少し前に、私のことをご自分の娘だと言ってくださったのを知っている?』
最近では、エスカランテ家で一番よく自分と遊んでくれるのだという。
「……遊んでくれている?」
父上が?
カッセルは沈んだ声で呟いた。
何度読み返しても、そこだけは理解できない。想像すらできなかった。
ちょうどその頃、マーソ大尉がよりによって別の船に乗っていると知ったマウリシオは、慌てて船室を飛び出していた。
今にも船を一隻奪ってメンドーサへ突進しかねない上官をどうにかその場へ座らせ、治療まで受けるよう説得したというのに——まったく気の休まる暇がない。
その隙にカッセルは寝台へ横たわり、二枚にわたるイネスの手紙を読んだ。
読み終えては、また最初から。
何度も、何度も読み返した。
四度目にようやく気づいたこと
ヴィダ・ヌエバのこと。
ベルグラーノのこと。
彼女が経験したその惨状については、一言も書かれていない。
まるで本当に何もなかったかのように。
楽しくて、嬉しくて、毎日を幸せに過ごしているとでもいうような軽やかな文章だった。
読んでいるだけで、イネス自身の明るい声まで聞こえてきそうなほどに。
(忌々しいヴァレスティナめ。相変わらず口だけは達者で……)
最初は、ただの強がりだと思った。
だからこそ、たまらなく切なく、悲しかった。
けれど四度目まで読み返した頃、ようやくカッセルは気づいた。
この手紙から伝わってくるイネスの幸福は、強がりなどではない。
本当に、幸せなのだ。
だからこそ、呆れてしまう。
あれほどのことを経験してなお、どうして彼女は今も、こんなにも幸せそうに自分を見つめることができるのだろう。
(君はどうして僕を恨まないんだ。どうして僕を憎みもしないんだ……)
いっそ彼女が恨めしくなるほどだった。
自分を恨んでくれないことが、かえって恨めしい。
イネス。君は、どうして……。
あなたこそが、私の現実
イネスは、メンドーサで起きたことを「ちょっとしたこと」とだけ書き、ミゲルのことも兄弟でお互い様にして大目に見てやってほしいと続けた。
それ以外は、本当に何もかも大丈夫だと。
周囲からは、夫の死を受け入れられず現実を否定していると思われている。
けれどイネス自身は、そうではないことを知っていた。
「私は現実を否定することで、もうこの人生のほとんどを無駄にしてしまった」
「でも、あなたが私に現実を教えてくれたじゃない。今では、あなたこそが私の現実なのだと。私の完全な人生なのだと」
「だから私は、残りの人生であなたを絶対に否定することはできないの」
本人でさえ昨日まで知らなかった己の生死を、彼女だけはずっと前から確信していた。
紙の上に並ぶ文字は、どこまでも真っ直ぐだった。
まるでイネスの澄んだ声が、その揺るぎない口調のまま聞こえてくるように。
そしてイネスは、カッセルに告げる。
そこでやるべきことを、すべて終わらせてから帰ってきて。
自分たちは彼が恋しい。けれど、それだけでいい。
イサベラには生きているという知らせだけ早く届けてほしい、と。
それから手紙は、ふいにいつものイネスらしい調子へ変わった。
自分ももうカッセルの家族なのだから、全員に申し訳なく思う必要はない。
しかも自分は、双子を合わせれば一人で三票。
「あなたまで加われば、一気にエスカランテ家の過半数を取れるの。私のおかげでね。すごいでしょう?」
これから家族で多数決をすれば、少なくとも子供たちが成人するまでは自分たちの勝ちなのだという。
そんなことまで得意げに書いてある。
沈んでいたカッセルの口元に、ようやくかすかな笑みが浮かんだ。
胸に満ちてくる幸福を、じっと噛み締める。
(僕は、本当に君には敵わないらしい。イネス……。)
結局、彼女はこんなにも自分を笑わせてしまう。
何の資格もないと思っている自分に、それでも幸福を与えてしまうのだ。
マレバに拉致されている気分だ
飢えたように呑み込んだ幸福は、同時に刃を呑み込んだように胸の奥を抉った。
——狂ってしまいそうだった。
頭では、ここで自分が何をすべきなのか分かっている。
それでも心だけは、無理やり繋ぎ止められた獣のように暴れ続けていた。
本来、自分がいるべき場所。
そこを放り出して狂ったように飛び出そうとしたところを、まるでイネスがマウリシオを使って、もう一度ここへ座らせたようなものだ。
ならば、彼女の言うとおりにしなければならない。分かっている。
分かってはいるのだが——。
「……これでは、まるでマレバに拉致されている気分だ……」
イネスが聞けば、鼻で笑うに違いない。 それでも、カッセルにとっては切実だった。
(君をこの目で確かめたい)
(一日でも早く、君を頭から足先まで、この目で確かめなければ……)
それで気が済むわけでもない。
ただ、そうしなければ息すらできそうになかった。
君を抱き締めて、君が無事だと確かめたい——。
麻酔もなく縫い合わされたという彼女の傷を思えば、心配は際限なく膨らんだ。
双子を身ごもった身体で、どうしてあれほどの出血と痛みに耐えられたのか。
傷はまだ痛まないのか。感染してはいないのか。
彼女には届くはずもない問いばかりが、頭の中を彷徨った。
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この結婚はどうせうまくいかない 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
日本語版漫画
韓国語版(原作)
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