🌹 本記事は『バスティアン』原作をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。会話部分は原作の表現を引用しています。
※ネタバレ注意:ここから先は、重大なネタバレを含みます。
裏庭で食卓を囲む二人。
オデットがついに口にする、「本心を確かめて」という願い。
穏やかな夕食の先に、海軍省からの急報が待つ。
窓の向こうの絵画
食卓は裏庭に整えられた。
木陰のテーブルに新しいレースのテーブルクロス、きれいに並んだナプキンとカトラリー。
中央には花壇から摘んだ花。
バスティアンは水差しとグラスを運び、台所の窓が一目で見える席に座った。
「料理ができるまでには、まだ時間がかかります」
「分かってる。ここで待つよ」
勢いの弱まった夕日が世界を温かく染める時間。
糊の効いた真っ白なエプロン姿のオデットは、菜園の野菜を丁寧に手入れし、オーブンをのぞき、鍋をかき混ぜた。
休みなく動いているのに散漫に見えないのは、ダンスのように滑らかな動作のせいだろう。
時折、目が合った。
そのたびにオデットは動きを止め、息を整えた。
時間が止まったようなその姿は、絵画のようだった。
——妻が映る窓から、バスティアンは一瞬たりとも目を離せなかった。
頭上の木の影に似た悲しみについては、深く考えなかった。
オデットは美しく、
今はそれだけで十分な瞬間だったから。
沈黙の夕食
リンゴを添えた鶏肉のロースト、菜園の野菜のシチュー、湯気の立つパン。
急いで準備したとは思えないご馳走の前で、バスティアンはやや驚いた顔をした。
だが向かいに座ったオデットの皿には、焼いた野菜が少しだけ。
「僕が不快だから?」
「ティーパーティーを楽しんで、お腹が空いていないだけです」
まったくの間違いではない。
ただ、もっと大きな理由を隠しただけ——。
沈黙の夕食の中、オデットは気持ちよく食べるバスティアンの姿に、ようやく安心した。
好みのうるさい男ではないと知っていても、気になっていた。
そんな自分自身が、何より不愉快だった。
恐怖に近い衝撃が去ると、客観的な現実が見えてきた。
バスティアンは、過去二度の裏切りの時とは違う。閉じ込めて束縛しようとも、断罪しようともしていない。
——だが、なぜ?
内心の分からない男がもたらした混乱のせいだと思っていた。
だが実は、すでに察していた。
礼儀正しい客人としてやって来たバスティアンが、自分を求めていることを。
分からないのは、その理由だった。
罪悪感なのか。憐憫なのか。責任感なのか。
それとも——。
そしてオデット自身もまた、現実から目をそむけようとしていた。
自分がまだ、この男を完全には拒めないという本心から。
「これ以上、私を傷つけないで」
「料理の腕が良いとは思わなかった」
皿をきれいに平らげたバスティアンが、静寂を破った。
「長い間、家族の食事を準備してきましたから。お口に合ったなら良かったです」
空になった皿を洗い桶に入れ、あらかじめ準備しておいたデザートを出した。
プラムパイ——今朝の惨めな失敗を忘れさせる、完璧な黄金色——とともにコーヒーを注ぐオデットに、バスティアンが尋ねた。
「コーヒーよりは紅茶を好まなかったか?」
「はい。ですが最近はコーヒーを飲んでいます」
「なぜ?」
「紅茶を飲むと、辛い記憶が蘇るから。あなたもそうでしょう、バスティアン。だから私はあなたのもとを去ったのよ」
淡々と告げられた、隠すことのない気持ち。
卑怯に逃げるだけでは、きちんとした終わりは迎えられない——目の前の男が証明してくれた真実を受け入れると、もつれた糸玉のようだった頭の中が整理された。
「……すまない、オデット。僕が悪かったと分かっている。僕が君を駄目にして、僕が子供を死なせて……」
「いいえ、バスティアン。やめてください」
赤くなった目元とは裏腹に、澄んで静かな眼差しだった。
「全部わかっているわ。私を見るあなたの眼差しだけで、すでにわかっていたの。
だから、バスティアン、もし謝罪を望んでいたなら、私は逃げたりしなかった。でも、それは私にとって、それほど重要なことではなかったの」
「あなたの謝罪は、もう受け入れたわ。それでも耐えられなかったの。心からの謝罪さえ、私には苦痛だったから。今もそうよ。だからバスティアン、お願いだからやめて。これ以上、私を傷つけないで。お願いだから」
セイレーンの歌
夕方の空気に染み渡る声は、
バスティアンを惑わせたあの歌のように美しかった。
——謝罪と許しという最後の灯台の明かりさえ消えた、
広大な大海原に置き去りにされたような気分だった。
「だとしたら、今からでも両耳を塞がなければならないだろうか」
虚しい笑みとともに、彼は知っている物語を思った。
惑わしの歌を聞きながら魔女の海を無事に通り過ぎた英雄は、マストに身を縛り、船員たちには耳を塞がせた。そして標的が海を通り抜けると、魔女は代わりに死を迎える。
それが定められた運命だから。
バスティアンは、そんな結末を望んでいなかった。
——君の歌から逃れて無事に生き延びるくらいなら、魅了されたまま座礁してもいい。
「なら教えてくれ。君のために、僕が何をどうすべきなのか」
喜んで、その美しい歌に耳を傾けることにした。
航路さえ与えられれば、たどり着く自信があった。
船が難破すればその残骸に乗ってでも、それさえなくなれば素手ででも——
「ただ、こうして……しばらく滞在して、去ってください。そして、もう来ないでください」
「オデット、僕は……」
「私はあなたを憎んでいません。本当は、会いたかったのかもしれないわ。違うと思っていたのに。いざまた会ってみると、嬉しいのかもしれない。痩せた姿が心配で、夕食の食卓を整えてあげたくなるほどに。こんな気持ちが私をとても苦しめるの。冬の海に入っていったあの日に、また戻ってしまったかのような気分なの」
潤んだ青緑色の瞳には、あの時と同じ絶望と苦痛が滲んでいた。
「私はちゃんと生きていきたいの、バスティアン。だから、最善を尽くして努力しているわ。でも、また傷ついたら、もう耐えられないと思う。私はそんな風に生きたくないの。あなたもそんな風に生きないでほしい」
深く息を吸い、背筋を伸ばして、オデットは続けた。
「皇帝の命令や世間の目、利害得失。そういったものとは関係ない、私の心はこうなの。だからバスティアン、あなたももう一度考えてみて。罪悪感や憐憫、責任感——そんなものとは関係ない、あなたの本心は何なのかを」
完食されたパイ
木の枝のランタンが灯され、宵闇の裏庭を温かく照らした。
明かりに染まった二人の顔には、嵐の過ぎた海に似た平穏が宿っていた。
「田舎の夜道は暗いから。ホテルまで戻るなら急いだ方がいいわ」
バスティアンは素直に頷いた。
だからこそ、その後の行動は大きな混乱をもたらした。
フォークを握った彼が、パイを食べ始めたのだ。
食欲が残っているはずがないのに、黙々と皿を空にし、冷めたコーヒーも残さず飲み干した。
「ごちそうさまでした、マリー・ヴェラーさん。明日はシャンパンを一本持ってきましょう」
「バスティアン……」
「明日には、またお茶が飲めるようになるかもしれない」
これ以上、厳しい言葉は付け加えられなかった。
低く沈んだ声と静かな眼差しの意味を、理解しすぎているせいだった。
——この男を傷つけたこと。
そして、同じくらい自分自身も傷ついたこと。
今まで、いつもそうだったように。
「また明日、お会いしましょう、姉さん」
丁寧な挨拶を残して去った男の後ろ姿が消えても、オデットは長い間ポーチに佇んでいた。
軍事機密
「もしもし、ロヴィスさん。もしかして、何か怪しいことに巻き込まれていらっしゃるんじゃありませんか?」
ホテルに戻ったバスティアンを、主人のとんでもない質問が迎えた。
見慣れない男たちが「少佐」を探しに来て、メモを残していったという。
そこに記されていたのは、意味のないアルファベットと数字の羅列。
だが、バスティアンには一目で海軍の暗号だと分かった。
指定された場所は、村の裏手の山麓だった。
暗闇に停まった黒い自動車のそばで、二人の男が待っていた。
私服姿でも軍人と分かる身のこなし。そのうち一人は、作戦司令部で見覚えのある大尉だった。
「クラウヴィッツ少佐殿宛の海軍省からの急報です。必ず直接お伝えせよとの厳命がありました」
手渡された封筒には、暗闇の中でもはっきりと浮かび上がる警告文があった。
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