本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。
6歳に回帰したイネスは、机に向かい、羽ペンを手に、
自分がなぜ地獄に落ちたのかを書き連ねていきます。
しかし、そのどれも、地獄に落ちるほどの罪ではない。
そして最後に、彼女は一つの仮説にたどり着く。
二つの人生に共通していたもの。
——それは、自ら死を選んだという事実だった。
📖この記事の位置づけ
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あらすじ|原作1巻2章 イネス・ヴァレスティナの視点⑤
6歳のイネスは机に向かい、羽ペンを手に、自らの罪状を書き連ねていく。
傲慢、贅沢、不親切、両親への嘘、狩り、オスカルへの憎しみ——。
しかしどれを並べても、地獄に落ちるほどの重さがない。
そして彼女は気づく。
最初の人生と二番目の人生に、唯一の共通点があることを。
それは——
どちらの人生でも、最後に自ら死を選んでいたという事実だった。
自ら命を断つたびに、人生は波のように押し戻されてきた。
26歳で自らを終わらせ、16歳に戻った。
20歳で人生を終わらせたときは、16歳を起点に10年を遡り、6歳になった。
ならば次は——と考えて、イネスは戦慄する。
その思考を断ち切るように、オスカルが現れる。
床には、ヴァレスティナに送った自身の肖像画が無惨に散らばっている。
その有り様を見て動揺するオスカルに、イネスは即席の嘘をつく。
「絵が倒れてきたのは前兆で、自分たちの婚約は破滅を招く」と。
しどろもどろになりながらも丸め込まれそうになるオスカルに、
イネスはとどめの一言を放つ。

「エンリケ・オソルノ、ダンテ・イハル、カッセル・エスカランテ、レオナルド・ヘルベス——そのくらいが、私には十分なのです」

「……!」
オスカルの顔が凍りつく。
そしてイネスの脳裏には、ふいにカッセル・エスカランテの記憶が蘇った。
考察01|罪状リスト:イネスが自分に下した判決
ここで、イネスがしていたことは、単なる自己反省ではありません。
「なぜ地獄に落ちたのか」という、原因の探索です。
彼女は一つひとつ丁寧に書き連ねながら、同時に、一つひとつ消去していく。
贅沢は貴族全員が該当する。
人を弄んだのは立場の差があるから仕方ない。
狩りはルシアーノのせいにできる。
オスカルへの憎しみは——オスカルが被害者でないなら罪にならない。
「オスカルが被害者だというのなら、どんな悪事も罪にはなりえない。だからどう見ても、彼女には死ぬその瞬間まで、まともな罪を犯した記憶などないのだ。」
(引用:原作1巻)
この自己弁護は滑稽に見えて、実は精密だ。
イネスは自分を甘やかしているのではなく、本当に「地獄に値する罪」を探している。
けれど、見つからない。
だからこそ、最後に残った一行は重い。
——自ら死を選んだこと。
🌹 罪状リストの中で「狩り」の横にルシアーノの名前を書き留めたというのが、
イネスらしくてクスッと笑ってしまいました。
反省しながら、責任の一部をきっちり他者に移しておく。
この几帳面さが、彼女の生存戦略なのでしょう。
名セリフ考察①|オスカルの自尊心を逆手にとるイネスの手腕
必死にイネスに求婚するオスカルにイネスは冷静に対応します。

「『前兆』という言葉をご存じですか?
これがまさに「前兆」です、殿下。
私たちが婚約すれば、破滅するという前兆なのです。」
オスカルは自らの無知をさらけ出すことに過剰なほど弱く、
「これを知らないのか」と問われることを異常なほど怖れる男でした。
考察02|回帰の仮説——終わりを選ぶほど遠ざかる人生
それは、イネス自身がたどり着いた回帰の仮説でした。
イネスは、最初の人生と二番目の人生の唯一の共通点を、しばらくじっと見つめていた。
(引用:原作1巻)
「しばらくじっと見つめていた」
この一文だけで、この仮説の重さが伝わってくるようです。
26歳で自ら命を絶って16歳になり、20歳で再び死を選んで6歳になった。
ならば次は——
6歳を起点にさらに10年遡るのか。
両親の交わりを待ち、腹の中の子供にさえなれないというのか。
自ら命を絶たなくなるまで、これを繰り返せと。
🌹「自ら死を選ぶなど許されない」という構造
この仮説が正しいとすれば、回帰は神の祝福などではない。
「自ら命を断つという選択を取り消す」ための構造だ。
死を選ぶたびに、もっと遠い過去へ押し戻される。
終わりを求めるほど、終わりが遠のく。
イネスが「どれも終わりを願って選んだことだった」と振り返るとき、
その言葉は単なる後悔ではなく、この構造への気づきと重なっている。
「もしそうなら」という仮説のまま、
イネスはオスカルと対峙しなくてはならないのです。
考察03|「前兆」という嘘——26年分の知恵が動く瞬間
自身で立てた仮説に打ち震えた直後、オスカルが現れる。
ここでの切り替えの速さが、イネスの強さを際立たせる。
床に散らばった肖像画を見て内心動揺するオスカルに、イネスは即座に嘘の物語を作る。
絵が倒れてきたのは神の前兆だ。この婚約は破滅を招く——と。
言葉は支離滅裂だが、流暢すぎるせいで深みがあるように聞こえる。
一言一言が意味をなさない支離滅裂な言葉であるにもかかわらず、あまりに流暢に語られるせいで、すべてに深い意味があるかのような錯覚がオスカルの脳を打った。
(引用:原作1巻)
6歳の体で、26年分の経験を使って演技をする。
イネスがオスカルを動揺させるのは、怒りでも憎しみでもない。
26年かけて観察した「オスカルの弱点」を、6歳の体で冷静に突いていきます。
彼が自分の無知をさらけ出すことに弱いこと。
「前兆」という言葉の前で一瞬思考が止まるであろうこと。
それを知っているから、言葉が刺さる。
『前兆』はでたらめでしたが、『破滅』という結末だけは一寸の誤差もない事実でした。
名セリフ考察②|名前が浮かび上がる瞬間
そしてついに、この名前が浮かびます。

「カッセル・エスカランテ……
そのくらいが、私には十分なのです」
「彼女の記憶の中で、カッセル・エスカランテ以上に完璧な男などいないのだから。少なくとも、その容姿においては。」(引用:原作1巻)
オスカルを動揺させるための言葉として並べられた五大公爵家の子息たちの名前の中に、
「カッセル・エスカランテ」の名前があった。
言葉として記憶しているが、大人になった姿以外、あまりはっきりと覚えていない。
イネスは6歳のこの時点で、カッセルの幼い頃の姿を思い浮かべられない。
記憶にあるのは、大人になった姿——海軍将校の制服と、カルステラ沿岸での最後の日だけだ。
そしてその記憶に触れかけた瞬間、彼女は必死にその記憶を消し去った。
エミリアーノの記憶を呼び起こさないために。
カッセルの名前を、イネスはオスカルへの「牽制」として利用した。
しかし同時に、その名前はカルステラの記憶と、エミリアーノの記憶へ続く扉でもあった。
彼女は急いでその扉を閉じなければならなかった。
「今の方が良かった。彼が生きていること。
あんな悲劇など、最初から起こりもしなかったのだ」(引用:原作1巻)
そう自分に言い聞かせながら。
🌹 オスカルを苛立たせる「欠片」として
「カッセル・エスカランテ」の名前を使いながら、
その名前は、同時にイネスを傷つける刃にもなっていました。
原作小説ならではの見どころ|内側の声と外側の演技が同時に走る
面白いのは、イネスの内側と外側が完全に乖離して動いていること。
机で罪状を書きながら、戦慄の仮説にたどり着いた直後、オスカルが現れる。
内側ではまだ「次に死んだらどうなるのか」という戦慄が続いているはずなのに、
しかし外側では即座に、流暢な嘘の物語を組み立てている。
この二層構造がとてもおもしろい。
また、オスカルの描写も精巧です。
自分の肖像が床を転がっているのを見ながら、拾うことも、無視することもできず、肘掛けに腰掛けながら話し続ける。
この動きの細かさが、10歳のオスカルの虚栄と幼さを、余すことなく伝えています。
まとめ|「カッセル・エスカランテ」その名前が、最後に残った
今回の考察では、
- 罪状リストの自己分析——どれも「取り返しのつかないほどの罪」ではなかったという却下の過程
- 二つの人生に共通していた最後の選択——終わりを求めるほど終わりが遠のく構造
- オスカルへの前兆の嘘——26年分の観察が6歳の体で動く瞬間
- カッセル・エスカランテという名前が初めて落ちた瞬間、そしてイネスが急いで閉じた扉
について整理しました。
オスカルを動揺させるために並べた名前の中に、
その名前はあった。
牽制のための言葉として口にしたはずが、
イネスの記憶の奥を、一瞬だけ開けた。
彼女は急いで閉じる。
エミリアーノが生きているこの時間を守るために。
——しかし、カッセル・エスカランテという名前は、
すでにそこに、残った。
📖 この章で描かれている違和感は、1巻全体の構造の中で見るとよりはっきりしてきます。
→ 原作1巻総括|すべての始まりに隠されたすれ違いを整理
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📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画 | 複数話に回想として分散 |
| めちゃコミ | 該当回想部分 |
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
・ピッコマ(最新話先行配信)
・めちゃコミック
・LINEマンガ
・comico
📖 原作小説・漫画(韓国語版)について
管理人ロゼは、完結までの物語を見届けた後も、以下の公式配信サイトで大切に作品を追い続けています。
- 原作小説:韓国公式サイト(RIDI)にて配信中
- 原作漫画:kakaopage
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