原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第1巻第5章⑥をネタバレ考察します。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。
カルステラにでの時間は平穏に静かに流れます。
かつてイネスが皇太子妃だった時代、華やかな社交界で取り巻きの女性たちが熱に浮かされたように噂していた、カッセル・エスカランテのたくましい肉体美。
今、彼女の目の前にあるのは、その噂よりもずっと生々しく、圧倒的な熱を持った「現実」でした。
「それらの時間はすべて消え去り、物語の主人公たちだけが残った。
自分について噂していた人々も、彼について噂していた人々も、誰もいないここカルステラで。彼らだけが。」(引用:原作1巻5章)
イネスだけが知っている、はるか遠い時間の果て。
喧騒も、過去の記憶も、この静寂の中に溶けて消えていく。
残されたのは、不器用なほどに彼女を求め、けれどその熱を認められずに持て余している一人の男でした。
📖この記事の位置づけ
◀第5章⑤|静かな日常に差し込む違和感(前の記事へ)
第5章⑥|欲望は、ずっとそこにあった(この記事)※原作1巻了
▶2巻第6章|離れる準備をするイネスと、離れられなくなるカッセル(次の記事へ)
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あらすじ|原作1巻 第5章⑥(※1巻終盤)
夕刻、いつもより早く帰宅したカッセル。
その着替えに付き添う二人の間に、説明のつかない剣呑な空気が走り始めます。
不穏な火種は、夕食の席でさらに深まります。
話題に上ったのは、イネスの侍従、ラウル・バラン。
カッセルは、自分でも正体のつかめない苛立ちを制御できず、言葉の端々に毒を滲ませます。
そんな彼に追い打ちをかけるように、イネスは食後、ラウルに会いに行く許可を求めます。

「彼は男だし、あなたは私の夫だからよ」
イネスのこの一言に、
カッセルは大きな手のひらで顔を覆い、耳の端を赤く染めます。
その夜、寝室では高貴な女性の扱いに慣れない使用人が、イネスの豊かな髪に櫛を絡ませてしまいます。
そこへ、ちょうど現れたカッセルは、 彼は自ら櫛を手に取ると、もつれた糸を解くように、慎重にイネスの髪を解きほぐし始めます。
化粧台の鏡の前、沈黙の中で重なり合う二人の視線。
あの初夜以来、固く閉ざされ、止まっていた二人の距離が、ついに音を立てて動き出します。
🍒 カッセルの事情
「対処」という名の、嘘の始まり
カッセルにとって、この結婚は愛情から始まったものではありませんでした。
不眠、悪夢、原因不明の焦燥……。
それらを鎮めるための「処方箋」として、彼はイネスとの婚姻を急いだ――少なくとも、自分にはそう言い聞かせてきました。
感情と解決策を、別々の引き出しに隠してしまったカッセル。
彼はまだ気づいていません。
自分が抱える「問題」を癒せる唯一の処方箋が、最初から「愛する対象」そのものであったことに。
欲望の二重構造――夢と現(うつつ)の分裂
カッセルの欲望は、夜の帳(とばり)の中でだけ正直になります。
眠りに落ちれば、彼は泥臭いほどの情熱でイネスを求め、本能のままに彼女を求め続ける。
けれど、目覚めた現実の世界では、それを「たかが夢だ」と切り離してしまうのです。
夢の自分と、現実の自分。
真っ二つに裂かれた彼にとって、眠りの中で愛を囁く自分は、認めがたい「得体の知れない何か」でしかありませんでした。
「欲望」を「加害」と呼ぶ罪悪感
あの初夜以来、カッセルはイネスに触れられずにいます。
愛のない結婚(だと彼が思い込んでいる関係)において、欲望をあらわにすることは、相手を利用する「加害」と同じではないか――。
彼は、自分の内にある熱を「罪」と定義してしまっています。
けれど、彼の喉には一本の骨が刺さっています。
あの夜、自分を受け入れたイネスが見せた、あまりにも自然な反応。
「誰が、いつ、彼女にそれを教えたのか?」
6歳から世界を拒絶してきたはずの彼女の、その「隙間」が、飲み込めない骨となって彼の心をずっとかき乱し続けていました。
嫉妬――喉の骨が動き出す夜
そこへ現れたのがラウル・バランです。
カッセルの苛立ちは、一介の従僕への不快感などではありません。
イネスがラウルに向ける、自分には決して見せない表情。あの親密さ。

「彼は男だし、あなたは私の夫だからよ」
しかし、関係性をはっきりと示すイネスの言葉を思い出し、窓の外の闇の中で、カッセルの耳の端がじわりと赤く染まります。
それは「夫」という形だけの言葉に、初めて命が吹き込まれた瞬間の、耐え難いほどの照れと、疼きでした。
化粧台の場面——決壊
化粧台の前で、もつれたイネスの髪を自ら解きほぐすカッセル。
静寂の中、鏡越しに見つめ合う距離が、耐えられないほどに縮まります。
「せっかく我慢してやっていたのに、君が……」 と、何かが、臨界点を超えます。
これまで必死に蓋をしていた罪悪感も、理性も、ラウルという異物がこじ開けた隙間から、一気に溢れ出します。
欲望はずっと、そこにありました。
隠し、歪め、名前をつけないようにしていた衝動。
初夜から止まっていた時計の針が、
この瞬間、激しく刻みを再開しました。
まとめ|それは「愛」の前の、嵐のような叫び
この夜、カッセルが取り戻したのは、欲望の行先だけかもしれません。
なぜこれほどまでに彼女を求めるのか、
この疼きは愛なのか、
それとも喉に刺さった骨の痛みなのか――。
「今まで君に何も起こらなかったのが、誰のおかげだと思っているんだ?」
(引用:原作1巻)
告白よりも重い、叫び。
カルステラに来て以来、守り抜いてきた境界線を超える告白です。
離婚という終わりを見据えて、そっと引き返す準備を始める彼女と、
迷いの中、ただ激しく彼女へと進み続ける彼。
二つのすれ違いを抱えたまま、その夜は静かに更けていきます。
📖 この章で描かれている違和感は、1巻全体の構造の中で見るとよりはっきりしてきます。
→ 原作1巻総括|すべての始まりに隠されたすれ違いを整理
📚この記事を読んだ方へ
▶ 次の話(続き)
→2巻第6章①|離れる準備をするイネスと、離れられなくなるカッセル
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→ 人物相関図
📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画・COMICO | 第22〜23話に相当 |
| めちゃコミ | 第23〜24話相当(推定) |
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
・ピッコマ(最新話先行配信)
・めちゃコミック
・LINEマンガ
・comico
📖 原作小説・漫画(韓国語版)について
管理人ロゼは、完結までの物語を見届けた後も、以下の公式配信サイトで大切に作品を追い続けています。
- 原作小説:韓国公式サイト(RIDI)にて配信中
- 原作漫画:kakaopage
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※本記事は作品内容の分析・評論を目的としたものであり、原作の翻訳全文を掲載するものではありません。