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慈悲と恩恵
長く続いた夜が終わり、マティアスはレイラの傍らに横たわったまま、
首都の屋敷で暮らしながら大学に通うことを提案した。
レイラは激しく首を横に振った。
「体を売って大学に行くなどという気持ちは、ありません。絶対に。」
「私が施してやる慈悲と恩恵だろう。」
冷ややかに吐き捨てたその言葉に、レイラは「はっ」と短い感嘆の声を漏らした。
再び始まった夜の中で、レイラは逃げる代わりにマティアスの顔を注意深く見つめた。
この行為の理由が自分の楽しみ以外の何ものでもないことを知らないほど馬鹿ではなかった。
しかし慈悲と恩恵だと。
「嘘……全部わかっているわ。嘘ですよね。」(引用:原作82話)
マティアスは小さく笑い、再び彼女を引き寄せた。
しかし頭の隅でその言葉が残った。
嘘。
真実が何であるかは彼でさえ知らない嘘。
侍女の謝罪
翌朝早く、クロディーヌの侍女マリーが小屋を訪ねてきた。
頭を深く下げ、手の怪我が嘘だったと告白した。
レイラはそれほど驚かなかった。
既に予想していた。
しかし、たとえ早くから知っていたとしても、変わることはなかっただろう。
クロディーヌの婚約者と悪いことをしている立場で、一体何が言えるだろうか。
夜の闇に隠れて彼女のものを盗む泥棒と何ら変わらないのに。
丁寧に謝罪する侍女の眼差しの中に、時折本心が垣間見えた。
軽蔑と怒り。
以前よりもはるかに露骨で鋭い反感だった。
侍女が去った後、レイラはふと悪い予感に息を潜めた。
もしかしてクロディーヌが知っているのだろうか。
捨てられない贈り物
ちょうどその時、視線が小机の上の赤いベルベットの箱に止まった。
昨夜、別邸を離れる前にマティアスが残していったものだった。
開けると、鳥の形をしたクリスタルのオーナメントが現れた。
去年の晩春、博物館でレイラが目を奪われた鳥と同じものだった。
あの日の午後を、レイラはすぐに思い出した。
「覚えていたのですか?」
「好きだっただろう。」
あまりにもあっさりとした答えに、レイラは一層混乱した。
期待と希望がどのような傷となって返ってくるかを、もう良く知っているのに。
急いで箱を閉め、要らないと告げると、マティアスは無関心に手を引っ込めた。
「なら捨てろ。」(引用:原作82話)
それだけ残して、彼は去った。
だから捨てるべきだった。
しかし最後まで手放せなかった。
ビルおじさんの「お前はかなり立派な大人になるだろう」という声が思い浮かぶと、手が震えた
抑えきれない羞恥心に首を絞められるような気持ちで、
レイラはその箱をベッドの下深くに隠した。
次話では、皇太子夫妻を迎える式典の中で、レイラが遠くからマティアスとクロディーヌの姿を見つめる場面が描かれる。
📖 マティアスがついた「嘘」の本質や、彼がレイラへの感情を愛と認識できない理由は、こちらで詳しく考察しています。
→ 愛を知らないマティアス考察
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