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恩人という棘
グレーバー先生の家での夕食会。
皇太子夫妻の来訪を羨む若い教師たちの間で、
話題は自然とヘルハルト公爵への称賛へ移った。
「ルエリン先生にとっては恩人ですからね。」(引用:原作84話)
胸がドキリと跳ね上がるような瞬間だった。
しかしそれは他愛のない言葉に過ぎず、場の話題はすぐに庭師の過ちを寛大にかばった公爵の人柄への称賛へと流れていった。
——恩人
胸を締め付ける茨のようなその単語の前でも、レイラは笑い続けた。
その痛みの大きさと同じだけ、公爵が一層憎らしくなった。
帰り道、立ち寄った食料品店の新聞には、笑顔で握手を交わす皇太子とヘルハルト公爵の写真が大きく載っていた。
その傍らに立つクロディーヌと共に。
私の小さな鳥
皇太子夫妻の滞在中、書斎では三人の男たちが大陸の情勢を語り合っていた。
全面戦に発展するかもしれないという皇太子の懸念に、
マティアスは穏やかな口調で答える。
容易ではないだろうと。
リエットと皇太子が幼い少年のようにくすくす笑う中、
マティアスの視線は窓の外へと流れた。
遅い朝、どこかへ出かけるレイラを見た。
小ぎれいに着飾った姿が綺麗だった。
贈り物を与えても喜ぶことを知らない愛人だとは。
なぜ手放したくないのか、マティアスは考えようとしなかった。
「私のものだ。私の小さな鳥。」(引用:原作84話)
柔らかな金色の髪の感触と、彼の下で羽ばたく身振りが思い浮かんだ。
最初のあの夜以降、
マティアスのすべての感覚は、鋭敏に研ぎ澄まされたままレイラ・ルエリンに向けられていた。
何でもない刺激にも熱が上り、頭の中がぼやけた。
そんな時にはまるであの小さな女が世界の全てのようだった。
そのあり得ない考えは、とても甘美で、あえて否定したくなかった。
翼を切られた鳥
鳥の目を覆い、翼を切ることは難しくなかった。
たとえ羽が再び生えても、彼の鳥はもう遠くへ飛べない。
鳥は、すぐにまた澄んだ素直な目で彼を見つめて歌った。
切られた翼の羽が再び生えても、鳥はもはや彼から逃げなかった。
彼の鳥は鳥籠を、そして彼を愛した。
晩餐の準備のため書斎を離れる前、マティアスは無意識に窓の外を見やった。
レイラは帰ってきただろうか。
馬鹿げたことだった。
この世界にあの女が他に行く場所などないことをはっきりと知っているのに。
しかし着替える間中、その疑問は消えなかった。
「逃げる……?お前が、私から……」(引用:原作84話)
到底あり得ないことは、少し滑稽にさえ感じられた。
太陽のない昼と、星を失った夜の方が、
それよりもはるかにありそうなことだった。
次話では、皇太子夫妻の滞在が続く中、マティアスとレイラの関係がさらに新たな局面を迎える。
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