この結婚はどうせうまくいかない 原作6巻第15章-㉔あらすじ|アリシアの告白と、告げられた新しい命【ネタバレ】

この結婚はどうせうまくいかない アリシアの告白と、告げられた新しい命 6巻15章㉔ この結婚はどうせうまくいかない

宴の喧騒の中、イネスはダンテに背を向けた。
手首のリボンの中に押し込んだ乾燥した草の感触が、指先に残っていた。

視界がめまぐるしく回る。

バルカ。アリシア・バルカ。アリシア・バルカ——。

頭が故障したかのように、おぞましい名前を繰り返し唱えた。
そして、かつての最初の人生の記憶が、一気に流れ込んできた。


ネタバレ注意
ここから先は、重大なネタバレを含みます。

第15章「人間と獣の時間」15章-㉔|あらすじ

かつての、最初の記憶

イネスはいつか、カルステラの邸宅でカッセルの幼少期の肖像画を眺めながら、
その狭い廊下を駆けてくる少年を想像した。

カッセルに似た子。
母親の悪い部分など一つも似ていない、どこまでも良い子。
初めて、自分から生まれて幸せになれたかもしれなかった子。
初めて世界を「生きてみた」であろう子。
最初の、——無事な子。

笑い、話す子を。
歩き、駆け回る彼らの子を、
カッセルの子を夢見た。

これまでの多くの喪失の瞬間のたびに、行き場を失い、煙のように散っていった自分の愛を注ぎたかった。

余りあるほどの多くのものを、与えたかった。

報いたかった。
子供に、カッセル・エスカランテに。

彼女が通り過ぎてきた、
すべてのイネス・ヴァレスティナに。

アリシアの言葉

記憶はやがて、
死にゆく自分を嘲笑うアリシアの顔へと移る。

奇妙な満足感に歪んだ顔が、
わずかな呆れた同情を宿した繊細な皇太子妃の顔が、彼女を見下ろしていた。

罪悪感。あるいは勝利感。
どちらか一つを選ぶこともできず曖昧な、化け物の面構え。(引用:原作6巻)

死体のように痩せこけた体を嘲り、カッセルに見捨てられることへの恐怖を囁き続けたあの声。
そして最後に、花のように晴れやかな顔で告げた言葉——

この結婚はどうせうまくいかない アリシアの告白,病床のイネス

「私はただ、あなたが子供を授からなければいいと願っただけなのに」 (引用:原作6巻)

お前だったのか。
お前のせいだったのだ。

このすべてが、この苦しみが、呆れることに全部 ——。

殺してやる。殺してやるわ。(引用:原作6巻)

指先一つ動かせない、病魔による無力感の中で、その言葉だけが燃えていた。

📖 アリシア人物考察

本当の怪物はだれだったのか。
パノテ、子どもの喪失、そして“見えない悪意”について別記事で整理しました。
▶ アリシア考察|本当の怪物はだれだったのか

カルステラの記憶

それでもイネスは生き延び、ビビアナ・カスタニャールの葬儀へと向かった。

アリシアの「良い知らせ」などどうでもよかった。

どこであろうと、
カッセル・エスカランテがいる場所ならどこでもよかった。

ほんのひと時でいい。
最後に、死ぬ前に一度だけ——「会いたい」などとは、到底思うことすらできなかった。

いっそ死んでから来ればよかったと思った。
自分だけが彼を見ることができ、彼は自分を見ることのできない亡霊のような存在であったなら

この惨めな姿を彼に知られることなく、
自分だけが心ゆくまで彼を見ていられたなら——。

『それでも、お願いだから、君をここに一人置いていけとは言わないでくれ。イネス』
(引用:原作6巻)

アリシアが死にゆく自分を嘲笑った場所に膝をつき、
ベッドに絶望した頭を埋めていた彼に、何と言っただろうか。

侍女たちや使用人たちがいるから、一人ではないと——。

その言葉に、初めて自分を殺しそうなほどに睨みつけた、濡れた碧眼を思い出した。

現実への帰還

ルシアーノの声が、遠くから届いた。

「イネス!」

かつての記憶の痛みが次第に引いていった。
いつの間にか客室へと運ばれていた。

イネスは手首からリボンをほどき、パノテを取り出した。

「アリシア・ヴァレンザが、私にしばらくの間服用させていた毒だそうよ」
(引用:原作6巻)

薬剤師を通じて。
あるいは、イネスに届く食べ物に手を出す権限のある者たちを通じて。

バルカの荘園には至る所に生えているため、供給元を必要としなかった。

「女の胎を壊すのよ」(引用:原作6巻)

ヴァレスティナ公爵が娘の手から乾燥した薬草をひったくった。

妊娠の発覚

部屋は混乱していた。

公爵の性急な質問攻めに、慌ただしく動き回るミゲル。
呆然と立ち尽くすルシアーノ。

その隙を突いて、マリオ(医師)がイネスのそばに寄ってきた。
絶望的な表情で脈を測り、飛んでくる質問に答えながら、慎重な時間がしばらく流れた。

やがてマリオが身を起こした。

「私の判断では、セニョーラは子を身ごもっていらっしゃるようです」 (引用:原作6巻)

ー15章「人間と獣の時間」読了ー


「正しく選べなかった過去」
「それでも手放せなかった愛」

第15章「人間と獣の時間」は、その傷の輪郭が見え始める章でもありました。

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→ 6巻第16章-① |授かった命と、ルシアーノだけが知る真実

📖「6巻の読み方はこちら」
→6巻以降の読み方ガイド

※本記事の人名・地名は原作ベースの仮訳です。今後の公式翻訳により表記が変更される可能性があります。

📕 第15章まとめはこちら
→ 出征前夜までの全展開を整理(ネタバレ)

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