何がバスティアンを追い詰めたのか⑪|81話 継母の犬 ─ 卵を分けた朝と、鍵をかけた書斎

何がバスティアンを追い詰めたのか⑪|81話 継母の犬 ─ 卵を分けた朝と、鍵をかけた書斎 原作本編

🌹 本記事は『バスティアン』原作81話をもとに、高解像度あらすじ形式で構成しています。
会話部分は原作の表現を引用しています。

テオドラは夫の腕の中で夜明けを眺めながら、オデットの幸運を祈っていた。
心からではなく、フランツへの贈り物が台無しにならないようにと。

同じ朝、
バスティアンはマルグレーテと二人きりになった。

そしてオデットは、書斎へ向かった。

テオドラの朝

「言っただろう?あの子は私たちには敵わないと」

上機嫌なジェフ・クラウヴィッツの笑い声が、寝室いっぱいに響き渡った。

ダイヤモンド鉱山の買収計画を話していたジェフが話題を変えた。
尻に火がついた状況から解放され、そろそろ新たな野心が芽生えているようだった。

バスティアンの足元に地獄に落ちる穴を掘ってやると。

「ええ。良い機会なら、当然利用すべきですわ」

テオドラはまず夫に同調し、
それからブラント伯爵家の名をそっと付け加えた。
—— 最近、妙にバスティアンとの接触が多いらしいと。

ジェフ・クラウヴィッツを扱う上で最も効率的なやり方だった。

バルコニーへ出ると、潮風が体を包んだ。
後からついてきた夫が背後から抱きしめてくれた。

テオドラは甘美な幸福の中で、明けていく朝を見守った。
しかし同時に、頭のどこかにオデットのことが引っかかっていた。

美しく、聡明で、度胸もある。
見れば見るほど気に入る子だった。
フランツが恋焦がれるのも無理はない。

ただ一つ、気がかりなのはバスティアンだった。
自分を裏切った妻を、果たして彼は寛大に許すだろうか。

テオドラはふと思い出していた。
自分に噛みついた愛犬の頭を、たった十二歳でためらうことなく切り落とした少年だったことを。

もしかしたら、
オデットの最期はソフィア・イリスよりもっと悲惨なものになるかもしれない。

それでも、
フランツへの贈り物を台無しにするようなことがないことを祈ろう。

テオドラは再びオデットの幸運を祈りながら、
夫の体温に包まれていた。

継母の犬

朝食中にオデットが電話に出るため席を外すと、
バスティアンとマルグレーテは二人きりになった。

マルグレーテは不安そうに周りをきょろきょろと見回し、
クンクンと鳴くばかりだった。

ただそれだけのことなのに、
世界が崩れ落ちたかのように振る舞う様子に、バスティアンは失笑した。

怯えて震えるマルグレーテの姿に、
ふとティラ・ベラーが思い浮かんだ。

あの娘も、あの犬のようにバスティアンを怖がっていた。
彼に危害を加えられるどころか、
むしろ大きな好意と配慮を受けている点も同じだった。

叔母であるマリア・グロースは、
この家で継母の犬を飼っていることを理解できないと言った。

オデットが森で発見した母犬は、テオドラの屋敷から来た可能性が最も高かったからだ。

しかし、犬は、ただの犬に過ぎない。
しかもあの犬はこの屋敷の領地で生まれ育ったのだから、厳密に言えば継母の犬とは言えないのではないか。
彼が引き取った以上、彼のものなのだから。

「メグ」

名前を呼ぶと、驚いた犬がびくりと体を震わせた。

バスティアンはテーブルの中央のバスケットから卵を一つ取り上げ、殻を剥いた。
その間に、マルグレーテがドアの前からじりじりと距離を詰めてきた。
恐れと好奇心が共存する澄んだ瞳だった。

初めて会った時のオデットを思い起こさせる眼差しだった。

バスティアンは熟慮の末、
卵の半分を小さな皿に盛り、椅子の横に置いた。

ためらっていたマルグレーテは、間もなくちょこちょことそこへ近づいてきた。
皿に顔を突っ込んでむしゃむしゃと卵を平らげる姿に、
淑女らしい品位はどこにも見当たらなかった。

マルグレーテは再び寝室の向こうへ逃げ去り、再び歯をむき出しにした。
口元には黄身をべったりとつけたままだった。

その姿が少し困ったことになったその瞬間、
ドアが開いた。電話を終えて戻ってきたオデットだった。

「これは、何?」

嬉しさでどうしていいかわからない様子の子犬を抱き上げたオデットは、目を丸くした。

「バスティアン。もしかして、メグに食べ物を分け与えてくださいましたか?」

「そうですね。恥ずかしがり屋のお嬢さんに一度聞いてみましょうか」

バスティアンは適当にはぐらかしながら、ティーカップを手に取った。

「マルグレーテ!」

叱るように名前を呼ぶ声が、心地よい温もりの中に染み渡った。
バスティアンはこっそりと視線を上げ、共犯者を見つめた。

どうやら淑女にはなれそうもないオデットの犬はピンク色の舌をペロペロとさせ、
卵の欠片を舐めるのに夢中だった。

鍵をかけた書斎

「あの日、書斎でブローチをなくしてしまったようなのです」

邸宅の玄関が近づいた頃、オデットはようやく勇気を出した。
目の前が真っ白になるほど緊張したが、巧みに感情を隠した。後
を付いてくる使用人たちに聞こえるよう、声を大きくすることも忘れなかった。

「探してみてもよろしいでしょうか?」

バスティアンは眉間をわずかにひそめた。

「なぜそれを私に聞くのですか?」

「あなたの執務室ですから。勝手に出入りするのはいけないと思いまして」

何度も練習した言葉を、オデットは落ち着いて口にした。

「あなたの望むようにしてください。
この家で、君が入ってはいけない場所はありませんよ、オデット」

驚くほどあっさりとした答えだった。
多くの目がある場所で頼んだ判断は、功を奏したようだった。

「行ってらっしゃいませ」

ようやく制服の袖を離したオデットが別れの挨拶を告げると、
バスティアンは返事の代わりにオデットの頬に短い口づけを落とした。

あまりに親密な愛情表現に戸惑ったが、
オデットはすぐに理性を取り戻した。
周囲の耳目を徹底的に意識した行動だと見るのが妥当だった。

バスティアンが乗った車が進入路の向こうへ遠ざかっていくと、
オデットは踵を返した。

「私は書斎に少し寄らなければなりません。ブローチを探さなければいけないので」

「私が行ってまいりましょうか?」

「いいえ、ドーラ。私がします」

ありがたくない手伝いをしようとするメイド長を引き止めたオデットは、
急いで書斎へ向かった。

重厚なドアを開け閉めする音の後、
カチリと鍵をかける音が続いた。


【免責事項】

※翻訳方針については当サイトの翻訳・引用ポリシーをご確認ください。
※本記事は作品のテーマを考察するものであり実在の行為を推奨・肯定する意図はありません。
※作品の引用・翻訳は著作権法の範囲内で行い、引用元を明記しています。
※本記事は作品内容の分析・評論を目的としたものであり、原作の翻訳全文を掲載するものではありません。