本記事では、原作第4巻最終章「エミリアーノ」において、カッセルが流した凄惨な「涙」に至るまでの心理構造を整理します。
前回の記事では、カッセルが自分を「役割を担う存在」と定義し、自己否定の深淵に沈む姿を追いました。
続く今回は、エミリアーノの口から語られる「記憶の正体」と、カッセルを襲う決定的な絶望
愛の形を突きつけられたがゆえの涙について、深掘りしていきたいと思います。
この記事の位置づけ
◀第12章エミリアーノ編②|愛が歪む瞬間(前の記事)
第12章エミリアーノ編③|涙が証明、愛の構造(この記事)
▶第12章エミリアーノ編④-1|忘却こそが慈悲だった
▶ 一覧で読む
→ この結婚はどうせうまくいかない 考察一覧
あらすじ|小説第4巻 12-3 「刑罰」としての記憶、そして「ルカ」
ーー「死の最大の報酬は忘却です」
エミリアーノは、すべてを覚えていることを「刑罰」と呼びました。
一方のカッセルもまた、断片的に蘇る苛烈な記憶に苛まれていました。
それは、かつてのセビーヤの港。
薄汚れた服を着て、我が子を抱きながら自分を「殺人者」として睨みつけるイネスの姿。
そして、イネスがその子の名前を呼んだ瞬間、カッセルの中で霧が晴れるように「答え」が浮き彫りになります。
「ごめんなさい、カッセル……この子の名前はルカよ」
その名が呼ばれたとき、イネスの無表情な顔に宿った一瞬の光。
カッセルが求めていた「愛される証明」とは異なる、彼女の「真実の愛」の形だったのです。
管理人ロゼの考察|「君は、私が狂っていない証拠だ」
カッセルは、エミリアーノという存在が、「再び生まれた」ことを自覚している姿を見て、
ある種の残酷な安堵を覚えます。
「“君”は、私が狂っていない証拠だろう」(-原作第4巻より-)
もしエミリアーノがただの画家であれば、カッセルは自分の記憶を「狂人の妄想」として処理できたはずです。
しかし、目の前の男もまた、同じ「重み」を背負っている。
さらに、イネスがエミリアーノの妻「フアナ」として、彼との子供を抱き、慈しんでいたという光景が、否定しようのない「現実」として彼の目の前に立ちふさがります。
イネスとエミリアーノは追ってから逃れるため、結婚式ですら本名で挙げることができませんでした。
ーーイネスは「フアナ」、エミリアーノは「アレハンドロ」と。
カッセルは、自分がどれほど彼女を愛そうとも、
彼女の魂の深い場所には、常にこの男と子供が刻まれていることを、痛烈に悟らされるのです。
名セリフ考察|「ああ、それが愛だった」
カッセルは、ぽろぽろと涙を流しながら沈黙します。

「ああ……それが愛だった。」
この涙は、嫉妬による怒りではありません。
「イネスという女性が、全身全霊で誰かを愛した瞬間」を、記憶を通して目の当たりにしてしまったことへの絶望です。
🌹 前世で、敵意に満ちた目で自分を「オスカルの犬」と呼び、家族を守るために自分を殺すとまって言い放つイネス。
その凄絶な美しさと、子供の名を呼ぶときに見せた柔らかな光。
自分が今、夫として受けている愛情や平穏な日々が、その「ルカの母親」としての光に比べれば、あまりにも空虚で、打算的なものに思えてしまった。
その取り返しのつかなさ、超えられない断絶を認めたとき、カッセルの頬を濡らしたのは、あまりにも孤独な愛の残骸でした。
原作ならではの見どころ|カッセルが見た「罪を受けるべきは軍人」である自分
原作小説では、カッセルの記憶が「現在」の彼の視界を鮮明に上書きしていく様子が克明に描かれています。
「エスカランテ、私を殺しに来たの? オスカルの犬のように」(-原作第4巻より-)
今のカッセルは彼女を守る騎士ですが、記憶の中の彼は「彼女の家族を殺しに来た殺人者」です。
彼女が自分を見る目に宿っていた、あの憎悪に満ちたオリーブ色の瞳。
ーー「もし私の夫も、私の子供も傷つけたら許さない。私も貴方を殺せる」
そう告げたイネスの覚悟こそが真実の愛であったと知り、カッセルは自分の愛する妻が、別の世界では自分の手によって「死体か、オスカルに引きずり込まれる」運命にあったという凄惨な因縁に、吐き気をもよおすほどの衝撃を受けるのです。
まとめ|その涙は、誰のものか
今回の考察では、
- エミリアーノが語る「忘却という報酬」を得られない刑罰
- 「ルカ」という名前に宿る、イネスの真実の愛
- 前世の自分(罪を受けるべきは軍人である自分)と現在の自分との狭間で流したカッセルの涙
について整理しました。
ーー愛しているからこそ、イネスの夫を助けた(エミリアーノを逃がした)
過去の自分が下した決断も、すべてはイネスの愛を尊重した結果であった。
この事実に打ちのめされたカッセルは、もはやこの因縁をただの嫉妬で片づけることはできませんでした。
この礼拝堂での対峙を経て、カッセルの愛は「ただ愛されたい」という願いから、さらに極端な感情を帯びた「守護」へと変質していくことになります。
📖 この記事を読んだ方へ
▶ 次の話(続き)
→ 第12章エミリアーノ編④-1|忘却こそが慈悲だった
▶ まとめて読みたい方はこちら
→ この結婚はどうせうまくいかない 考察一覧
▶ 作品全体を理解したい方はこちら
→ 完全ガイド
▶ 登場人物を整理したい方はこちら
→ 人物相関図
📖 今回のエピソード対象範囲
| プラットフォーム | 対象話数 |
| ピッコマ・LINE漫画 | 第97〜98話 |
| めちゃコミ | 第107〜108話 |
📖 作品情報・配信プラットフォーム
- 邦題: この結婚はどうせうまくいかない
- 原題: 이 결혼은 어차피 망하게 되어 있다
- 原作: CHACHA KIM
- 脚色: CHOKAM
- 作画: Cheong-gwa
【日本語版漫画】
・ピッコマ(最新話先行配信)
・めちゃコミック
・LINEマンガ
・comico
📖 原作小説・漫画(韓国語版)について
管理人ロゼは、完結までの物語を見届けた後も、以下の公式配信サイトで大切に作品を追い続けています。
- 原作小説:韓国公式サイト(RIDI)にて配信中
- 原作漫画:kakaopage
※海外サービスのため、日本からの利用条件は事前確認をおすすめします。
【免責事項】
※翻訳方針については当サイトの「翻訳・引用ポリシー」をご確認ください。
※本記事は作品のテーマを考察するものであり実在の行為を推奨・肯定する意図はありません。
※作品の引用・翻訳は著作権法の範囲内で行い、引用元を明記しています。
※本記事は作品内容の分析・評論を目的としたものであり、原作の翻訳全文を掲載するものではありません。