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カイルの手紙
また一通、分厚い手紙が届いた。
郵便配達夫はビルと目を合わせ、溜め息をついた。
秋から冬へと続くまで、彼はカイルの手紙を横取りするビルの秘密の共謀者となっていた。
「いつまでも隠し通せるわけでもないでしょうに。」
「分かっている。」
ビルは手紙の束を食卓の端に置いた。今日の夕食には話すつもりだった。
これを堂々とここに置いておけば、再び卑怯にも口を閉ざすことはないだろうから。
そう決意するとむしろ気が楽になった。
良い日だった
レイラは転勤の決意を胸に、良い気分で学校を後にした。
モニカへの別れ、おじさんへの土産、仲直りのためのワインまで買った。
普段より速く自転車を漕いで市街を走りながら、良い日だと思った。
アルビスに入る前までは。
壊れた天国
「レイラ!レイラ!」
涙でぐちゃぐちゃになった顔のモナ夫人が駆けつけてきた。
公爵邸に繋がる温室の方から煙が上がっていた。
発電機が爆発し、ガラス温室の半分が崩れた。
よりによって、その場にいた大奥様まで怪我を負ったという。
そしてその原因がビル・レマーだと。
「おじさん!」
警官たちと共に車に乗り込もうとするビルを見つけたレイラは、駆け寄った。
無理に笑おうとするビルの顔は真っ青だった。
「大丈夫だ、レイラ。大したことはない。」(引用:原作66話)
車に押し込まれながらも、ビルはしきりに「家に帰っていなさい」と手招きした。
切実に呼ぶレイラの叫びを背後に残して、車はアルビスを去っていった。
よろめきながら座り込んだレイラの前に、
邸宅の玄関の階段の下に立つヘルハルト公爵の姿があった。
目が合ったかもしれなかったが、すぐに熱い涙が溢れ出して、
もう何も見えなかった。
微弱な希望
警察署でレイラができることは何もなかった。
訴訟には多くの時間と費用がかかり、弁償ができなければおそらく、と警官は言葉を濁した。
ヘルハルト公爵家が善処するなら別だが、と。
アルビスへと戻る道、ぼんやりと暗闇の向こうの邸宅を見つめていたレイラの濡れた瞳に、微弱な希望の光が宿った。
このアルビスの主、あの男なら。
不快で恐ろしいだけだったはずの公爵が、
この秋に見せた予想外の優しさが脳裏をよぎった。
レイラは冬眠に入ったバラの庭園を突っ切り、
森の道を抜けて川辺へと走り始めた。
白い息の向こうに、灯りのついた離れ家が見えた。
次話では、灯りのついた離れ家でマティアスとレイラが向き合い、取引の提案が始まる。
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