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カナリアと公爵
マティアスを目覚めさせたのは、カナリアの歌だった。
澄んだ声で囀り鳥籠を飛び回る鳥が、水入れにぴょんと降り立ち、全身に水を浴びせる。
小さな体でちょこちょこと。
その性質もまるでそっくりだ。
カイル・エトマンが故郷に戻ってきたという報せは、
丸一日も経たないうちにアルビス全域に広まった。
しかし、だから何だというのか。
マティアスは軽い失笑でその名前を打ち消した。
レイラは、彼の愛人である限り医者の息子を受け入れるような女ではない。
レイラ・ルウェリンのあの愚かで潔癖な性質がかなり気に入った。
このような形で彼女を手に入れたことは、もしかしたら間違った選択だったのではないかという疑問を、今はっきりと拭い去ることができると思えた。
その選択は正しかった。
マティアスは明快な結論と共にドレスルームを立ち去った。
モナ夫人の来訪
ビルおじさんが旅立ち、一人で小屋を守るレイラのもとに、
料理人のモナ夫人が食べ物を持って訪ねてきた。
レイラはなかなか食欲が戻らなかったが、
あの男のせいで痩せていくという事実が嫌で、持ってきた食べ物を全て平らげた。
やがてモナ夫人が本題を切り出した。
カイルが故郷に戻ってきたのはあなたのためではないかと。
もし万が一そうだとしたら、もう一度良く考えてみてはどうかと。
「私とカイルはもうそんな関係ではありませんよ、おばさん。」(引用:原作75話)
レイラは微笑みを浮かべたまま、沈黙した。
今となっては、カイルに関して何かを語ることなどできなかった。
そんな考えをすると心臓が引き裂かれるような痛みが襲い、
その痛みはマティアス・フォン・ヘルハルトへの憎しみとして着々と積み重なっていった。
平凡な日常へ
モナ夫人が去った後、レイラは小屋を掃除し、洗濯を終わらせた。
少なくとも数日はあの男から離れられるという安堵感が、レイラを物悲しい気分にさせた。
「いつになれば終わるのだろうか?」(引用:原作75話)
絶望的な考えの中に陥ってしまうのが嫌で、レイラは急いで小屋を出た。
自転車を漕いで図書館へ行き、雑貨店に立ち寄り、
目が眩むほど甘いホットチョコレートを一杯飲んで帰る道では、
勇気のある微笑みを浮かべることもできるようになった。
アルビスへ入る道の角で、かつての穏やかな日々を象徴する、
しかし今の自分では決して会ってはならない人物と対峙するまでは。
「レイラ……」
自転車の車輪の音が止んだ静寂の中に、温かみを帯びた低い声が染み込んだ。
カイルだった。
次話では、アルビスの入り口でのカイルとレイラの再会が描かれる。
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