この結婚はどうせうまくいかない 原作2巻8章⑨|どうか私を覚えていないで【ネタバレ】

冷たいかんらん石のメダルを握りしめ、涙をこぼすイネスの静かな手元 この結婚はどうせうまくいかない

原作小説『この結婚はどうせうまくいかない』第2巻第8章⑨をネタバレ考察します。
本記事は、管理人ロゼの個人的な視点から描かれた考察です。


緑色の宝石の上へと、
涙がぽろぽろと零れ落ちた。

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本記事はネタバレを含む考察記事です。

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あらすじ|人魚と兵士 ⑨

エル・タベオの質屋で、
イネスはかんらん石のメダルを手に取った。

官邸へ戻り、部屋中をひっくり返して探し出した。
祖母から譲られた首飾りがそのままそこにあった。

本物はこちらだった。
これだけが本物のはずだった。

それなのに……

——首飾りが二つある。

店主は言った。
持ち主がここに品物を預けたのは、もう3年前になりますね、と。

彼が、
エミリアーノが死んだ年だった。

堤防が崩壊した。
かろうじて積み上げてきたすべてが、押し流されていった。

すべてにときめいた

エミリアーノは床ばかり見つめ、
どうしても言葉を続けられずにいた。

その姿が、あまりにも愛らしかった。

——「あなたが夢のようだからです……」
可笑しなことに、その瞬間はイネスにとっても夢のようだった。

そして、ほんの少しだけ居心地が悪かった。

エミリアーノは行為どころか女性の裸体を目にしたのも、その日が初めてだった。

始まってすぐに終わりそうになりながら、必死に堪えていた。

血を見て自分のせいだと謝り、
初めてだからそうなのだと教えると、顔を真っ青にしてまた謝った。

しかしイネスは、彼が上手いのか下手なのかも推し量れぬまま、彼を貪った。

エミリアーノがどうしていいか分からず戸惑うたびに、
つられて本当に初めてその行為をするかのように、
むずがゆく胸がいっぱいになる気分がしたからだった。

すべてにときめいた。
すべてが彼女の知っていたものと違っていた。

オスカルとの関係は、義務だった。
防御だった。
毎晩、娼婦になった気分で生きていた。

男を早く満足させる技術だなんて——そう思いながら、自分の気持ちなどどうでもよくなっていった。

だから、エミリアーノと過ごした時間だけが、違っていた。

イネスもまた、純真だったのかもしれない。

ただ愛されていた。
欲望されているのに、少しも汚いと思わなくていい時間だった。

——崇拝に近い愛。

この結婚はどうせうまくいかない はじめての夜 イネス

あなたが愛おしくてあげるのよ

首飾りを渡そうとすると、エミリアーノは受け取らなかった。

下手だったから。
身に余るから。
申し訳ないから——。

「受け取って。これは私の気持ちの証拠よ、エミリアーノ。」(引用:原作2巻)

彼が世界のすべてを手に入れたかのように、
その首飾りを受け取った時の表情を覚えている。

満開の花のように崩れたあの微笑みも。

「この首飾り、あなたの瞳とそっくりですね。」(引用:原作2巻)

イネスは、自分の絵ではなく、
もっと綺麗な絵を描いてほしいと言った。

自分のことは、あまり好きではなかったから。

しかしエミリアーノは首を振った。

——『私が描いた絵の中で、あなたの肖像画より美しいものはありません』

その言葉は祈りに近かった。
エミリアーノにとってイネスは、ただ愛する人ではなかった。

世界で最も美しいものだった。


エミリアーノは首飾りを聖杯のように大切に持ち歩いた。

4年間の逃亡の中で、あらゆるものを売り払いながら、
それだけはなかなか手放せなかった。

「いつか落ち着いて、絵がまともに売れるようになったら、まずこの首飾りの鎖から買い戻したいです。」(引用:原作2巻)

しかし結局は、最後にはそれも売り払い——泣いた。

私があなたを殺したのよ

エミリアーノは死んでいった。

子供の泣き声が耳の奥に響き渡った。

彼は死にゆく中で言った。

自分のせいだと。自分が卑しい男だから。
だからあなたを台無しにしたのだと。

——私があなたを台無しにしたのよ。私があなたを、殺したのよ。

皇室の許しも乞うた。老伯爵の後妻になることも受け入れた。

あの子が生き残るための代償だと思ったから。

だけど、違ったのよ。

あいつらが私を騙したの。
あの小さな我が子が、あんなにも苦しみながら死んでいくなんて、想像しただけで耐えられなかった。

——だから私は、すべてを終わらせた。

どうか、私を覚えていないで

緑色の宝石の上へと、涙が零れ落ちた。

堤防が崩壊した。
子供の泣き声が耳の奥に響き渡った。

——あなたは本当に私を覚えているの?
——それなら、私が犯した罪も知っているの?

イネスは冷たい宝石の上へ唇を埋めた。

「どうか、私を覚えてなんかいないで。お願いだから……。」
(引用:原作2巻)

愛されていた記憶が、
そのまま罪悪感へ変わっていく。

緑色の宝石の上へ、涙だけが落ち続けた。

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📖 今回のエピソード対象範囲

プラットフォーム対象話数
ピッコマ・LINE漫画・COMICO第34話相当
めちゃコミ第35話相当(推定)

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